HIV/AIDS関連情報
2007年1月8日(月) 英国、C型肝炎ウイルスを保有した歯科医が"魔女狩り"に
12月7日のBBC NEWSによりますと、イギリスのグウィネズ州のひとりの歯科医に治療を受けたおよそ5,000人の患者に対し、保健所からある通達がされたことが問題となっています。
この歯科医は、2005年の秋にC型肝炎ウイルスに罹患していたことが分かりました。そして、それ以降にこの歯科医に治療を受けた患者全員に、保健所がC型肝炎ウイルスの検査を受けるように呼びかけたのです。
そして、この通達が物議をかもしているのは、検査項目にC型肝炎ウイルス(HCV)だけでなく、B型肝炎ウイルス(HBV)とHIVも加えているからです。
これに対し、歯科医協会(Dental Practitioners Association)の会長のブライアン・ラックス(Brian Lux)氏は、反対意見を表明しています。
「この歯科医に治療を受けた患者に対し、HBVやHIVの検査を受けさせることには何の理由もないし、そもそもHCVの検査自体も不要である。検査に必要な費用はまったく無駄なものであり、このような検査をおこなうことがこの歯科医を冒涜し苦しめることにつながっている」
そして、ラックス氏は、このような行政のやり方を"魔女狩り"と呼んで非難しました。
これに対し、公衆衛生機関(National Public Health Service)は、「どのような政策をとるかは慎重に議論されなければならない」としながらも、「患者にリスクがあるかどうかを知る唯一の方法は患者に検査を受けてもらうことである」と述べています。
******************
日本では、HBVとHCVのキャリア(ウイルスを保有している人)は、それぞれ約100万人と200万人程度だと言われています。このなかには、医師や歯科医、看護師などの医療従事者も含まれているものと思われます。
以前HIVに関して、オーストラリアで同じような事件がありましたが(詳細は、2006年8月30日「オーストラリアでHIV陽性の歯科医」)、現在の趨勢は、こういったウイルスに感染している医療者は臨床がおこなえない、というものになっているように思われます。
しかし、この問題にはいくつもの非常にむつかしい側面があり、慎重に議論されなければなりません。日本でも近いうちに問題提起される可能性があります。
(谷口 恭)
この歯科医は、2005年の秋にC型肝炎ウイルスに罹患していたことが分かりました。そして、それ以降にこの歯科医に治療を受けた患者全員に、保健所がC型肝炎ウイルスの検査を受けるように呼びかけたのです。
そして、この通達が物議をかもしているのは、検査項目にC型肝炎ウイルス(HCV)だけでなく、B型肝炎ウイルス(HBV)とHIVも加えているからです。
これに対し、歯科医協会(Dental Practitioners Association)の会長のブライアン・ラックス(Brian Lux)氏は、反対意見を表明しています。
「この歯科医に治療を受けた患者に対し、HBVやHIVの検査を受けさせることには何の理由もないし、そもそもHCVの検査自体も不要である。検査に必要な費用はまったく無駄なものであり、このような検査をおこなうことがこの歯科医を冒涜し苦しめることにつながっている」
そして、ラックス氏は、このような行政のやり方を"魔女狩り"と呼んで非難しました。
これに対し、公衆衛生機関(National Public Health Service)は、「どのような政策をとるかは慎重に議論されなければならない」としながらも、「患者にリスクがあるかどうかを知る唯一の方法は患者に検査を受けてもらうことである」と述べています。
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日本では、HBVとHCVのキャリア(ウイルスを保有している人)は、それぞれ約100万人と200万人程度だと言われています。このなかには、医師や歯科医、看護師などの医療従事者も含まれているものと思われます。
以前HIVに関して、オーストラリアで同じような事件がありましたが(詳細は、2006年8月30日「オーストラリアでHIV陽性の歯科医」)、現在の趨勢は、こういったウイルスに感染している医療者は臨床がおこなえない、というものになっているように思われます。
しかし、この問題にはいくつもの非常にむつかしい側面があり、慎重に議論されなければなりません。日本でも近いうちに問題提起される可能性があります。
(谷口 恭)
2007年1月7日(日) タイ人は怠け者で自慢好きで嘘つきでやきもちやき?
HIV/AIDSには直接関係のないことですが、タイ人を支援しているGINAとしては非常に興味深いニュースが12月9日のBangkok Postに報道されましたのでここにご紹介いたします。
90年代初頭に首相をつとめたこともあるタイのアナン・パンヤラチュン(Anand Panyarachun)氏が、タイ発展研究機関(Thailand Development Research Institute)の定例会議で、外国人がタイ人をどのようにみているかについて発言しました。
アナン氏は出展を明らかにしませんでしたが、タイ人は外国人から、怠け者(lazy)で、自慢好き(boasting)で、嘘つき(cheating)で、やきもちやき(jealous)であると見られていると公表しました。
********
私自身は下流層から上流層まで様々なタイ人との付き合いがありますが、この見方には同意できません。アナン氏の情報源は明らかにされておらず、「外国人」に日本人が含まれているのかどうかは分かりませんが、日本人にも怠け者、自慢好き、嘘つき、やきもちやきはいくらでもいると思うのですが、みなさんはどう思われますか。
(谷口 恭)
90年代初頭に首相をつとめたこともあるタイのアナン・パンヤラチュン(Anand Panyarachun)氏が、タイ発展研究機関(Thailand Development Research Institute)の定例会議で、外国人がタイ人をどのようにみているかについて発言しました。
アナン氏は出展を明らかにしませんでしたが、タイ人は外国人から、怠け者(lazy)で、自慢好き(boasting)で、嘘つき(cheating)で、やきもちやき(jealous)であると見られていると公表しました。
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私自身は下流層から上流層まで様々なタイ人との付き合いがありますが、この見方には同意できません。アナン氏の情報源は明らかにされておらず、「外国人」に日本人が含まれているのかどうかは分かりませんが、日本人にも怠け者、自慢好き、嘘つき、やきもちやきはいくらでもいると思うのですが、みなさんはどう思われますか。
(谷口 恭)
2007年1月4日(木) バンコクの繁華街で爆弾事件相次ぐ
GINAのニュース、2007年の第1号は、GINAのミッションとは直接関係のない話ですが、タイに渡航する人、タイが好きな人にとっては、非常にショッキングなニュースです。
Bangkok Postの2006年12月31日から2007年1月1日の記事をまとめてみますと、まず、12月31日の午後6時過ぎ、バンコクの繁華街計5箇所で爆弾事件がおこり、少なくとも3人が死亡、数十人が負傷したことが分かっています。5箇所とは、戦勝記念塔、クロントイ地区(日本人居住地の近く)、スクムビット62の交番、サパンクワイの交番、シーナカリンのショッピングセンターです。
この連続爆弾事件を受けて、サイアムパラゴン前とセントラルワールド前で予定されていた年末恒例のカウントダウンは中止となりました。
しかしながら、1月1日未明にセントラルワールド付近で爆弾事件が起こり、数人の外国人が病院に運ばれています。
また、ほぼ同じ時刻にプラトゥーナム界隈の大型シーフードレストランの前で爆弾事件が起こり、食事をしていた3人の外国人と2人のタイ人が負傷しています。このうち1人の外国人は爆破により片足が切断されたそうです。
31日の夕方以降、警察当局には様々な場所の爆弾情報が寄せられており、外国人が集まるカオサンロードやルンピニー公園のナイトバザー開催地からは実際に爆弾が撤去されたようです。
******************
GINAのミッションには関係ないながらも、これまでこのコーナーでは、「タイ南部連続爆破事件」や「9.18クーデター事件」をお伝えしてきました。
タイ南部の情勢は、最近ますます緊迫しており、公立学校は現在も閉鎖されたままです。しかし、この緊張の原因は南部3県の独立を求める声とムスリムの宗教的要素であり、政治的に分かりやすい構図があります。
また、「9.18クーデター事件」は、タイ関係のマスコミが、「平和的クーデター」「形式的クーデター」などと呼んでいることからもわかるように、緊迫した雰囲気は一切なく、タイをよく知る人たちの間では、「いつものクーデターだから心配ない」と言われていました。実際、クーデターによって金融マーケットが閉鎖されたのはわずか1日、バーツは下がるどころか現在も高騰を続けていますし、観光客は減っていません。
ところが、今回の年末年始のバンコク連続爆弾事件は、これらの事件とはまったく様相が異なります。
今回爆弾事件が起こっている場所のほとんどは、日本人を含む外国人が特に密集している地域です。そのような場所をターゲットに無差別的な爆弾事件がおこなわれたのは、おそらくタイの歴史上初めてではないかと思われます。
今回の連続爆破事件が与える影響は決して小さくありません。おそらく観光客は大幅に減少するのではないかと思われます。セントラルワールド、プラトゥーナム、戦勝記念塔、カオサンロード、ルンピニー公園、・・・・、これらはいずれもガイドブックに載っているバンコクの観光地として知られているところです。このような場所に安心して行けないとなると、多くの旅行者はタイ渡航を躊躇するでしょう。
天災からも人災からも安全で、治安は東京や大阪よりも遥かにいいと言われてきたバンコクですが、この事件を境に「安全神話」は崩壊するのではないかと思われます。
しかし、タイにはGINAの支援を引き続き必要としている方々がたくさんおられますし、GINAとしてもこれからますます支援をする人々を増やしていくつもりです。
どれだけタイが危険な国になろうとも、GINAのミッションは変わることはありません。
(谷口 恭)
Bangkok Postの2006年12月31日から2007年1月1日の記事をまとめてみますと、まず、12月31日の午後6時過ぎ、バンコクの繁華街計5箇所で爆弾事件がおこり、少なくとも3人が死亡、数十人が負傷したことが分かっています。5箇所とは、戦勝記念塔、クロントイ地区(日本人居住地の近く)、スクムビット62の交番、サパンクワイの交番、シーナカリンのショッピングセンターです。
この連続爆弾事件を受けて、サイアムパラゴン前とセントラルワールド前で予定されていた年末恒例のカウントダウンは中止となりました。
しかしながら、1月1日未明にセントラルワールド付近で爆弾事件が起こり、数人の外国人が病院に運ばれています。
また、ほぼ同じ時刻にプラトゥーナム界隈の大型シーフードレストランの前で爆弾事件が起こり、食事をしていた3人の外国人と2人のタイ人が負傷しています。このうち1人の外国人は爆破により片足が切断されたそうです。
31日の夕方以降、警察当局には様々な場所の爆弾情報が寄せられており、外国人が集まるカオサンロードやルンピニー公園のナイトバザー開催地からは実際に爆弾が撤去されたようです。
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GINAのミッションには関係ないながらも、これまでこのコーナーでは、「タイ南部連続爆破事件」や「9.18クーデター事件」をお伝えしてきました。
タイ南部の情勢は、最近ますます緊迫しており、公立学校は現在も閉鎖されたままです。しかし、この緊張の原因は南部3県の独立を求める声とムスリムの宗教的要素であり、政治的に分かりやすい構図があります。
また、「9.18クーデター事件」は、タイ関係のマスコミが、「平和的クーデター」「形式的クーデター」などと呼んでいることからもわかるように、緊迫した雰囲気は一切なく、タイをよく知る人たちの間では、「いつものクーデターだから心配ない」と言われていました。実際、クーデターによって金融マーケットが閉鎖されたのはわずか1日、バーツは下がるどころか現在も高騰を続けていますし、観光客は減っていません。
ところが、今回の年末年始のバンコク連続爆弾事件は、これらの事件とはまったく様相が異なります。
今回爆弾事件が起こっている場所のほとんどは、日本人を含む外国人が特に密集している地域です。そのような場所をターゲットに無差別的な爆弾事件がおこなわれたのは、おそらくタイの歴史上初めてではないかと思われます。
今回の連続爆破事件が与える影響は決して小さくありません。おそらく観光客は大幅に減少するのではないかと思われます。セントラルワールド、プラトゥーナム、戦勝記念塔、カオサンロード、ルンピニー公園、・・・・、これらはいずれもガイドブックに載っているバンコクの観光地として知られているところです。このような場所に安心して行けないとなると、多くの旅行者はタイ渡航を躊躇するでしょう。
天災からも人災からも安全で、治安は東京や大阪よりも遥かにいいと言われてきたバンコクですが、この事件を境に「安全神話」は崩壊するのではないかと思われます。
しかし、タイにはGINAの支援を引き続き必要としている方々がたくさんおられますし、GINAとしてもこれからますます支援をする人々を増やしていくつもりです。
どれだけタイが危険な国になろうとも、GINAのミッションは変わることはありません。
(谷口 恭)
2007年1月2日(火) GINAが選ぶ2006年HIV/AIDS関連ニューストップ10
GINAのウェブサイトが誕生したのは2006年の5月中旬です。当初から、世界のHIV/AIDS関連ニュースを集めだし、最終的には12月31日までに214本のニュースを掲載するにいたりました。このなかで、GINA的に意味のあるニュースにランキングを付け、トップ10形式で振り返ってみたいと思います。
★第1位 フィンランドのHIV増加はタイのせい? (2006年9月8日)
フィンランド人のHIV新規感染が増えているのはタイの売春婦のせいだ!と、自国の売春オヤジの恥を棚に上げて、タイ政府を公式に非難したフィンランド政府の厚顔無知ぶりを露呈したニュースでしたが、タイの売春婦からHIVに感染する外国人が増加していることを象徴するニュースです。
他にもタイで感染する外国人が増加しているニュースが相次ぎました。
関連ニュース
・オーストラリアのHIV増加もタイのせい? (2006年9月14日)
・またタイのせい? ジャージー島のHIV増加 (2006年9月27日)
・マレーシアでHIV検査が義務付けられた理由(2006年8月15日)
・イングランド北西部でHIV新規感染が増加 (2006年9月6日)
★第2位 ストリートチルドレンにオープンハウスを! (2006年9月23日)
ミャンマーやラオスといったタイの隣国から不当に国境を越えてやってくる子供たちが2万人もいて、児童買春の犠牲者も少なくないというニュースです。タイでは以前に比べると児童買春は減っていると言われていただけに、このニュースはGINAにとって大変ショッキングなものでした。日本では観光地として知られているパタヤには、数百人の児童買春の常連客がいると報道されています。「ストリートチルドレンにオープンハウスを!」は今後のGINAのミッションのひとつにしていく予定です。
★第3位 タイの主婦へのHIV対策 (2006年9月11日)
以前から、タイでは主婦が自分の旦那からHIVに感染するという問題が指摘されていましたが、それをあらためて問題提起したニュースです。最近は、日本でも同じような問題が生じつつあり、「コンドームを使いましょう」の一点張りでは効果が期待できない典型的なケースです。
★第4位 オーラルセックスにもコンドーム (2006年9月16日)
タイのある病院が、「HIVに感染した男性のうち10人に1人が口腔性交が原因」という発表をおこなったというニュースです。この数字は少し高すぎるのではないかと感じたため、GINAは、このニュースの発信元であるnewsclip.beに確認をとりました。同社によりますと、「病院名の公表はできないがきちんと裏づけをとっている」とのことです。風俗店のオーラルセックスでコンドームを使うことがほとんどないわが国はこのニュースを真摯に受け止めるべきでしょう。
★第5位 恋人にHIVをうつした女性が禁固刑に(2006年6月23日)
HIV陽性であることの苦悩をもっとも受け止めることができるのはその恋人のはずです。にもかかわらず、恋人がHIV陽性であることが分かると、掌をかえしたように豹変し、警察にかけこんで自分の恋人を逮捕させたというイギリスの事件です。アカの他人に自分がHIV陽性であることを隠してコンドームを用いない性行為をおこなったのであれば罪に問われるべきでしょうが、このケースは思い切って秘密を打ち明けた恋人を警察に売り渡しています。今後こういった事件は世界で相次ぐかもしれません。法律だけでなく倫理や宗教的な観点からも議論されるテーマだと思われます。
関連ニュース
・US,UK,カンボジアでHIV陽性者が逮捕(2006年8月9日)
・HIV陽性者が国際指名手配(2006年9月27日)
・オーストラリアのゲイ、5人にHIVを故意に感染(2006年10月16日)
★第6位 マドンナの養子縁組が世界中で波紋(2006年10月18日)
GINAでアンケートをおこなったマドンナの養子縁組のニュースです。その地域社会にそのまま残せば、生存できるかどうかさえ疑わしい肺炎に罹患した1歳の子供を養子にひきとったマドンナが世界中から非難されたという事件です。2002年にはカンボジアの孤児を、2005年にはエチオピアのエイズ孤児を養子にひきとったアンジェリーナ・ジョリーに対しては非難の声がまったくなく、なぜマドンナだけが非難の的にさらされているのか、私にはいまだにその理由が分かりません。
関連ページ
・マドンナの苦悩(2006年10月30日)
・アフリカエイズ対策にマドンナが参加(2006年10月10日)
★第7位 オーストラリア男性が女性観光客にHIVを感染(2006年10月29日)
オーストラリアに観光に来ていたアイルランド人とドイツ人の女性とコンドームを用いない性行為をおこなったHIV陽性のオーストラリア男性が逮捕されたという事件です。GINAのウェブサイトでは、主にタイで買春をおこなう男性に対する警告を発していますが、女性たちも海外でのひとときのアバンチュールには充分に注意すべきであることを再認識させられるニュースです。
海外でアバンチュールを楽しむ日本人女性も少なくありません。日本人女性の場合、オーストラリアやアメリカなどの西洋諸国だけでなく、タイやインドネシアといったアジア諸国で男性を買う者もいます。ダンサーが男性のタイのゴーゴーバーには日本人女性の観光客が少なくありません。(これについては近日中にレポートを発表します)
★第8位 中絶を自分でおこなわされたインド人妊婦(2006年9月6日)
HIV陽性者が世界最大のインドでは信じられないニュースが相次いでいます。このニュースはHIV陽性である妊婦がまともな医療を受けることができなかったというものですが、インドの驚くべき差別やスティグマは枚挙に暇がありません。
関連ニュース
・ インド、刑法377条を直ちに撤廃せよ!(2006年10月1日)
・ インド国会議員の驚くべき無知(2006年8月27日)
★第9位 「援交カフェ」の前で日本人がタイ人に刺される(2006年7月10日)
マスコミには報道されていないGINAオリジナルニュースです。売春には性感染症以外にもこういったリスクがあることを再認識させられた事件ですが、それにしても海外の援交カフェで売春婦と口論となり現地の人間に刺される・・・、などと聞くと、同じ日本人として何と言っていいのか分かりません。
★第10位 仕事も恋人もなくした日本人の自殺(2006年6月21日)
タイの売春婦と日本人の男性が恋人の関係になったり結婚したりするケースは珍しくありません。しかしながら、すべてのケースがハッピーエンドとなるわけではありません。この事件は、恋人と思っていたタイ女性が自分から離れていったことが原因で自殺をした日本人の悲しい顛末です。
◎総評
ニュースの情報源は、日本の新聞と世界の主要なマスコミのウェブサイトです。比較的高頻度に参照したのが、ロイター通信、UPI、BBC、CNN、NEW.COM.AU、China Daily、国連関連機関のIRIN、などです。また、ときおり他に追随を見せないスクープを入手するイギリスのタブロイド紙The Independentも参照しました。その他には、Bangkok Postなどのタイの英字新聞、さらに「タイ・ラット」などのタイ語の新聞、数は少ないですが、GINAタイ人スタッフから直接仕入れたマスコミに報道されていない情報というのもあります。
総数は214ですから、掲載を開始してからは、ほぼ1日に1本のペースでニュースをご紹介したことになります。
日本のマスコミにはHIV/AIDS関連の記事はそれほど高頻度には掲載されませんが、世界のマスコミには毎日大量のHIV/AIDS関連ニュースが報道されています。これらのうち、GINAに(特にGINAのミッション・ステイトメントに)関連したものだけを集めています。したがって、ワクチン開発や新薬発売などといった基礎医学に関連したもの、国や行政の予算などの国策に関したもの、エイズ関連の学会情報などについては一般的には重要なものであったとしてもあえて掲載していません。
代わりに、HIV/AIDSに関連した差別・スティグマに関することや、薬物・売春といった問題については幅広く取り上げました。また、タイについての情報はHIV/AIDSに直接は関係しないものまでご紹介してきました。
************
あらためてトップ10を振り返ると、GINAらしい記事のオンパレードになっていることが分かります。10のニュースのうち、タイに関連するものが6つもあります。いまや世界最大のHIV陽性者をかかえるインドのニュースはかろうじてひとつだけ入っていますが、かなりたくさんの事件をお伝えしたはずの中国のニュースはトップ10には入りませんでした。アフリカや中東、あるいはルーマニアといった国々でのHIV陽性者の悲惨な状況もお伝えしてきたつもりですが、ランキング外となってしまいました。
今回選ばれたトップ10のニュース以外にもGINAが皆様に訴えたい事件はたくさんあります。過去のニュースはいつでもご覧いただくことが可能ですので、HIV/AIDSにまつわる諸問題について考えるきっかけにしていただければと思います。
2007年1月2日 GINA代表 谷口恭
★第1位 フィンランドのHIV増加はタイのせい? (2006年9月8日)
フィンランド人のHIV新規感染が増えているのはタイの売春婦のせいだ!と、自国の売春オヤジの恥を棚に上げて、タイ政府を公式に非難したフィンランド政府の厚顔無知ぶりを露呈したニュースでしたが、タイの売春婦からHIVに感染する外国人が増加していることを象徴するニュースです。
他にもタイで感染する外国人が増加しているニュースが相次ぎました。
関連ニュース
・オーストラリアのHIV増加もタイのせい? (2006年9月14日)
・またタイのせい? ジャージー島のHIV増加 (2006年9月27日)
・マレーシアでHIV検査が義務付けられた理由(2006年8月15日)
・イングランド北西部でHIV新規感染が増加 (2006年9月6日)
★第2位 ストリートチルドレンにオープンハウスを! (2006年9月23日)
ミャンマーやラオスといったタイの隣国から不当に国境を越えてやってくる子供たちが2万人もいて、児童買春の犠牲者も少なくないというニュースです。タイでは以前に比べると児童買春は減っていると言われていただけに、このニュースはGINAにとって大変ショッキングなものでした。日本では観光地として知られているパタヤには、数百人の児童買春の常連客がいると報道されています。「ストリートチルドレンにオープンハウスを!」は今後のGINAのミッションのひとつにしていく予定です。
★第3位 タイの主婦へのHIV対策 (2006年9月11日)
以前から、タイでは主婦が自分の旦那からHIVに感染するという問題が指摘されていましたが、それをあらためて問題提起したニュースです。最近は、日本でも同じような問題が生じつつあり、「コンドームを使いましょう」の一点張りでは効果が期待できない典型的なケースです。
★第4位 オーラルセックスにもコンドーム (2006年9月16日)
タイのある病院が、「HIVに感染した男性のうち10人に1人が口腔性交が原因」という発表をおこなったというニュースです。この数字は少し高すぎるのではないかと感じたため、GINAは、このニュースの発信元であるnewsclip.beに確認をとりました。同社によりますと、「病院名の公表はできないがきちんと裏づけをとっている」とのことです。風俗店のオーラルセックスでコンドームを使うことがほとんどないわが国はこのニュースを真摯に受け止めるべきでしょう。
★第5位 恋人にHIVをうつした女性が禁固刑に(2006年6月23日)
HIV陽性であることの苦悩をもっとも受け止めることができるのはその恋人のはずです。にもかかわらず、恋人がHIV陽性であることが分かると、掌をかえしたように豹変し、警察にかけこんで自分の恋人を逮捕させたというイギリスの事件です。アカの他人に自分がHIV陽性であることを隠してコンドームを用いない性行為をおこなったのであれば罪に問われるべきでしょうが、このケースは思い切って秘密を打ち明けた恋人を警察に売り渡しています。今後こういった事件は世界で相次ぐかもしれません。法律だけでなく倫理や宗教的な観点からも議論されるテーマだと思われます。
関連ニュース
・US,UK,カンボジアでHIV陽性者が逮捕(2006年8月9日)
・HIV陽性者が国際指名手配(2006年9月27日)
・オーストラリアのゲイ、5人にHIVを故意に感染(2006年10月16日)
★第6位 マドンナの養子縁組が世界中で波紋(2006年10月18日)
GINAでアンケートをおこなったマドンナの養子縁組のニュースです。その地域社会にそのまま残せば、生存できるかどうかさえ疑わしい肺炎に罹患した1歳の子供を養子にひきとったマドンナが世界中から非難されたという事件です。2002年にはカンボジアの孤児を、2005年にはエチオピアのエイズ孤児を養子にひきとったアンジェリーナ・ジョリーに対しては非難の声がまったくなく、なぜマドンナだけが非難の的にさらされているのか、私にはいまだにその理由が分かりません。
関連ページ
・マドンナの苦悩(2006年10月30日)
・アフリカエイズ対策にマドンナが参加(2006年10月10日)
★第7位 オーストラリア男性が女性観光客にHIVを感染(2006年10月29日)
オーストラリアに観光に来ていたアイルランド人とドイツ人の女性とコンドームを用いない性行為をおこなったHIV陽性のオーストラリア男性が逮捕されたという事件です。GINAのウェブサイトでは、主にタイで買春をおこなう男性に対する警告を発していますが、女性たちも海外でのひとときのアバンチュールには充分に注意すべきであることを再認識させられるニュースです。
海外でアバンチュールを楽しむ日本人女性も少なくありません。日本人女性の場合、オーストラリアやアメリカなどの西洋諸国だけでなく、タイやインドネシアといったアジア諸国で男性を買う者もいます。ダンサーが男性のタイのゴーゴーバーには日本人女性の観光客が少なくありません。(これについては近日中にレポートを発表します)
★第8位 中絶を自分でおこなわされたインド人妊婦(2006年9月6日)
HIV陽性者が世界最大のインドでは信じられないニュースが相次いでいます。このニュースはHIV陽性である妊婦がまともな医療を受けることができなかったというものですが、インドの驚くべき差別やスティグマは枚挙に暇がありません。
関連ニュース
・ インド、刑法377条を直ちに撤廃せよ!(2006年10月1日)
・ インド国会議員の驚くべき無知(2006年8月27日)
★第9位 「援交カフェ」の前で日本人がタイ人に刺される(2006年7月10日)
マスコミには報道されていないGINAオリジナルニュースです。売春には性感染症以外にもこういったリスクがあることを再認識させられた事件ですが、それにしても海外の援交カフェで売春婦と口論となり現地の人間に刺される・・・、などと聞くと、同じ日本人として何と言っていいのか分かりません。
★第10位 仕事も恋人もなくした日本人の自殺(2006年6月21日)
タイの売春婦と日本人の男性が恋人の関係になったり結婚したりするケースは珍しくありません。しかしながら、すべてのケースがハッピーエンドとなるわけではありません。この事件は、恋人と思っていたタイ女性が自分から離れていったことが原因で自殺をした日本人の悲しい顛末です。
◎総評
ニュースの情報源は、日本の新聞と世界の主要なマスコミのウェブサイトです。比較的高頻度に参照したのが、ロイター通信、UPI、BBC、CNN、NEW.COM.AU、China Daily、国連関連機関のIRIN、などです。また、ときおり他に追随を見せないスクープを入手するイギリスのタブロイド紙The Independentも参照しました。その他には、Bangkok Postなどのタイの英字新聞、さらに「タイ・ラット」などのタイ語の新聞、数は少ないですが、GINAタイ人スタッフから直接仕入れたマスコミに報道されていない情報というのもあります。
総数は214ですから、掲載を開始してからは、ほぼ1日に1本のペースでニュースをご紹介したことになります。
日本のマスコミにはHIV/AIDS関連の記事はそれほど高頻度には掲載されませんが、世界のマスコミには毎日大量のHIV/AIDS関連ニュースが報道されています。これらのうち、GINAに(特にGINAのミッション・ステイトメントに)関連したものだけを集めています。したがって、ワクチン開発や新薬発売などといった基礎医学に関連したもの、国や行政の予算などの国策に関したもの、エイズ関連の学会情報などについては一般的には重要なものであったとしてもあえて掲載していません。
代わりに、HIV/AIDSに関連した差別・スティグマに関することや、薬物・売春といった問題については幅広く取り上げました。また、タイについての情報はHIV/AIDSに直接は関係しないものまでご紹介してきました。
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あらためてトップ10を振り返ると、GINAらしい記事のオンパレードになっていることが分かります。10のニュースのうち、タイに関連するものが6つもあります。いまや世界最大のHIV陽性者をかかえるインドのニュースはかろうじてひとつだけ入っていますが、かなりたくさんの事件をお伝えしたはずの中国のニュースはトップ10には入りませんでした。アフリカや中東、あるいはルーマニアといった国々でのHIV陽性者の悲惨な状況もお伝えしてきたつもりですが、ランキング外となってしまいました。
今回選ばれたトップ10のニュース以外にもGINAが皆様に訴えたい事件はたくさんあります。過去のニュースはいつでもご覧いただくことが可能ですので、HIV/AIDSにまつわる諸問題について考えるきっかけにしていただければと思います。
2007年1月2日 GINA代表 谷口恭
2006年12月29日(金) 中国のHIV陽性者、損害賠償を勝ち取る
中国の河南省で、病院で受けた輸血によりHIVに感染した女性が保健省に対し補償を要求したところ逆に重罪で逮捕された、という事件を以前お伝えしましたが(2006年7月28日「中国政府、補償を求めたエイズ患者を逮捕」)、同じようなことを黒竜江省のHIV陽性者がおこない、こちらは原告側が見事に損害賠償を勝ち取りました。12月5日のBBC NEWSが報道していますのでご紹介いたします。
違法の売血行為で得た血液を輸血された結果HIVに感染したとして、中国黒竜江省の19人が病院を訴えていた裁判で、原告側が勝利し、合計2千万元(約250万ドル、約2億9千万円)の保証金が支払われることとなりました。
黒竜江省のこの病院では、輸血により15人がHIVに感染し、そのうち3人は配偶者に性感染させ、またひとりは子供に母子感染をさせ、合計19人がこの病院の不手際でHIVに感染したこととなります。
この事件で病院のスタッフ3人が有罪判決を受け2年から10年の禁固刑を言い渡されています。
最近の中国ではこのケース以外にも、院内の輸血でHIVに感染した人が病院を訴える訴訟が相次いでいるそうです。
冒頭で述べた河南省が例外的なのでしょうか。それとも、最近数ヶ月で中国全体の情勢が大きく変化してきているのでしょうか。
(谷口 恭)
違法の売血行為で得た血液を輸血された結果HIVに感染したとして、中国黒竜江省の19人が病院を訴えていた裁判で、原告側が勝利し、合計2千万元(約250万ドル、約2億9千万円)の保証金が支払われることとなりました。
黒竜江省のこの病院では、輸血により15人がHIVに感染し、そのうち3人は配偶者に性感染させ、またひとりは子供に母子感染をさせ、合計19人がこの病院の不手際でHIVに感染したこととなります。
この事件で病院のスタッフ3人が有罪判決を受け2年から10年の禁固刑を言い渡されています。
最近の中国ではこのケース以外にも、院内の輸血でHIVに感染した人が病院を訴える訴訟が相次いでいるそうです。
冒頭で述べた河南省が例外的なのでしょうか。それとも、最近数ヶ月で中国全体の情勢が大きく変化してきているのでしょうか。
(谷口 恭)