HIV/AIDS関連情報

2006年12月18日(月) 増加が止まらないイギリスのHIV感染

 イギリスの予防健康局(Health Protection Agency)は、2005年のHIV陽性者を63,500人と発表しています。しかし、同局は、これ以外に自身の感染に気付いていない人がこの数字の3分の1はいるのではないかとみているようです。最近のイギリスのHIV情勢について11月22日のBBC NEWSが報じていますのでお伝えします。

 2004年のHIV陽性者は58,300人とされています。2005年に新たに感染が判った人は7,450人で前年の7,275人と比べて増加傾向にあります。

 新たに感染が判った人のおよそ3分の2は海外での感染で、3分の1はゲイ及びバイセクシュアルとみられています。しかし、ゲイやバイセクシュアルの増加は前年から50人だけで全体からみたときの上昇率はそれほど高くありません。

 予防健康局のある幹部は「最近5年間で新たなHIV感染が急増している」とコメントしています。また、同局は、HIV以外の性感染症が急増していることも懸念しているようです。

 2005年にはイギリスのクリニックで790,443人が何らかの性感染症に罹患していますが、これは2004年の767,785人から比べて増加しています。

 淋病は2004年の22,321人から2005年の19,392人と減少していますが、ゲイの間では依然高い罹患率を維持しています。梅毒は2004年の2,282人から2005年の2,814人と23%の増加となっています。梅毒も感染者の多くはゲイです。クラミジアに感染した4分の3は16歳から24歳の若い世代です。

 家族計画委員会(FPA、Family Planning Association)の幹部は次のようにコメントしています。

 「現在イギリスではHIV陽性者が増加しており、その理由のひとつは人々が積極的に検査を受けることで感染がみつかることと、効果的な治療のおかげでより長生きできるようになったことである。しかし、さらに検査を呼びかけるべきで、医療従事者は性感染症の検査をハイリスクグループのみに絞るべきではない」

 イギリスでは性感染症の蔓延を防ぐための健康キャンペーンが今月開始され、4百万ポンド(約9億円)の予算が投じられたようです。

(谷口 恭)

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2006年12月16日(土) インド人はペニスが小さくコンドームが使えない?!

 HIV感染予防にコンドームを使いましょう・・・

 聞き飽きた言葉かもしれませんが、目下のところHIVの最善の予防法のひとつがコンドームであることは自明です。

 しかしながら、コンドームにもいろいろな問題があります。最も深刻な問題はコンドームの材質のラテックスに対するアレルギー(*1)でしょう。そして、意外にこれまではあまり語られていなかったやっかいな問題があります。それは、コンドームの"サイズ"です。

 12月8日のロイター通信によりますと、インド人のペニスは世界的標準よりも小さいためにコンドームがフィットしないことが問題となっているようです。

 インド人のペニスが小さいというこの事実は、「インド医療研究委員会(Indian Council of Medical Research)」の研究により明らかとなりました。この研究はムンバイとニューデリーの18歳から50歳の1,400人の男性を対象におこなわれています。

 結果は、インド人男性のおよそ60%は世界的標準の勃起時のペニスのサイズより2.4cm短いことがわかりました。さらに残りの30%は少なくとも5cmも短いそうです。(記載はありませんが、10%のみが標準サイズということでしょう・・・)

 ペニスのサイズが小さいというのは実は大変危険なことです。現在世界で流通しているコンドームは、標準サイズのペニスに基づいてつくられています。サイズがフィットしないコンドームを用いれば、性交中に破れたり滑って外れてしまったりする可能性があります。

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 そういえば、以前エイズ関連の学会で、あるコンドームメーカーがラージサイズのコンドームのサンプルを配布していましたが、スモールサイズというのはなかったと思います。

 今回インドでおこなわれたようなペニスのサイズの国際比較研究がもっとおこなわれるべきなのかもしれません。

 HIV感染予防にコンドームを使いましょう・・・。予防啓発にこのセリフの一点張りでは効果が乏しいと考えるべきかもしれません。

注1 ラテックスアレルギーについては、谷口恭のHPに関連エッセィがあります。興味のある方はご参照してください。

(谷口 恭)

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2006年12月13日(水) オーストラリア、19歳の息子が母親の恋人を殺害(続編)

 HIV感染が原因で、19歳の青年が母親のボーイフレンドをナイフで殺害するという事件がシドニーで起こり、真相不明な点が多いということを以前お伝えしましたが(「オーストラリア、19歳の息子が母親の恋人を殺害」2006年12月1日)、警察の調べなどで新たなことが分かりましたのでお伝えいたします。

 まずはこの事件を簡単に振り返っておきましょう。

・19歳のジェイソンの母親キャシーには、24歳の恋人スティーブンがいた。
・11月22日の夜、匿名の者から、「スティーブンはHIV陽性である」との電話が入った。
・キャシーは、スティーブンからHIVをうつされたに違いないと思い動転した。
・それを見たジェイソンは、スティーブンに恨みの感情を抱き殺害した。

 11月28日のNEWS.COM.AUによりますと、結局スティーブンはHIV陰性だったそうです。ということは、「スティーブンはHIV陽性である」というガセネタを匿名の人物が電話でキャシーに告げ、ジェイソンは誤解に基づいてスティーブンに恨みを持ち殺害したということになります。

 ジェイソンは殺害を否認していますが、現在のところ検察はジェイソンを加害者と見ており、次回の法廷は1月31日に開かれるそうです。

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 ジェイソンが真犯人かどうかは別にして、HIV感染疑惑が殺人事件につながった可能性が極めて強い事件です。「HIV感染」の社会的意味の重さを感じます。

(谷口 恭)

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2006年12月12日(火) バンコク、11歳の強姦魔

 タイ南部のテロは相変わらず頻発しており、ついに南部3県では公立の学校が無期限の学校閉鎖となりました。11月28日にはようやくバンコクを含む40の県で戒厳令が解除されましたが、北部や東北部(イサーン地方)の一部ではクーデター及び暫定政権に対する抗議が続いており、タイに平穏な日が戻るのはまだまだ先になりそうです。(といってもバンコクやパタヤなど観光地にいればそんな緊迫感は微塵も感じませんが・・・)

 さて、そんなバンコクでとんでもない事件が起こりました。最近、バンコクをはじめタイ全域で強姦事件が相次いでいますが、12月3日に逮捕された連続強姦事件の犯人のひとりがなんと11歳の少年だというのです。

 12月4日のバンコク週報によりますと、12月3日午前1時ごろ、バンコク都内北バスターミナルの近くで、18歳の女性が恋人の目の前で強姦されるという事件が起こりました。

 被害者はチョンブリー県の工場で働いている女性で、恋人とターク県の実家に帰るため、北バスターミナルでバスを待っていたところ、ひとりの男が近づいてきて、「自分は警官だ。今、違法就労の外国人を調べている。身分証明証をみせろ」と言われたそうです。

 そして、2人の身分証明書を受け取ったニセ警官の24歳の男性と共犯の11歳の少年は、カップルを北バスターミナル裏手の人気のない草むらに連れて行き、「騒いだら殺す」と男性を脅し、女性を強姦したそうです。しかし強姦している最中にカップルの男性がその場を逃げ出し大声で助けを求め、ふたりの強姦魔は逮捕されました。

 ふたりの強姦魔は、これまでにも同様の手口で女性2人を強姦していましたが、被害者たちは警察に訴えていなかったそうです。

 今回のように犯人が11歳というケースは稀ですが、タイの現地新聞では頻繁に強姦事件が報道されています。なかには日本人を含む外国人をターゲットにした事件もあります。HIVや性感染症の議論をする前に、このようなことがおこらないよう罪を重くするなどして対策を立ててもらいたいものです。

(谷口 恭)

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2006年12月11日(月) カトリック教会でコンドームが議論に

 「性感染症の予防にコンドームを使いましょう」、日本では聞き飽きた言葉で、実行できるかどうかは別にして、コンドームの有用性を疑問視する人はいないでしょう。しかしながら、世界には宗教的な理由からコンドームが使えない人たちがいます。

 敬虔なカトリック教徒がそれに該当し、カトリック教会は現在も公的にコンドームの使用に反対しています。しかし、最近カトリック教会の幹部のなかにもコンドームの使用を限定的に許可するべきだと考える人が登場してきているようです。現在バチカン宮殿で開かれている感染症関連の会議でコンドームの使用が議論に上がっており、それを11月23日のBBC NEWSが報道しています。

 ミラノの元大司教を含むカトリック教会の幹部数人が、カトリックの教義の変更を検討すべきであるとコメントしているようです。ただし、その適用は、「夫婦のどちらかがHIVに感染している場合に限られる」という条件が付与されます。

 カトリックの教義では、性行為は結婚している夫婦間のみに認められており、それ以外は禁欲をしなければなりません。この教義自体の変更が議論されているわけではなく、部分的なコンドームの使用に賛成の立場にいる大司教も、「協会が自由な性行為を奨励しているわけではない」というコメントも合わせて発表しています。

(谷口 恭)

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