HIV/AIDS関連情報

2006年9月6日(水) イングランド北西部でHIV新規感染が増加

 以前からこのwebsiteで指摘しているように、日本のマスコミが報じている「先進国でHIV感染が増えているのは日本だけ」というのはまったくの誤りで、先進国のHIV増加は日本だけの問題ではありません。

 9月5日付けのBBC(Website版)によりますと、イングランドの北西部では2005年にHIV/AIDSの新規発見者が14%も増加していたことが分かりました。北西部全体でみれば、陽性者が最も多いのは大マンチェスター州ですが、マージーサイド州では5年間で190%も増加しているそうです。

 感染ルート別でみると、異性間の性交渉によるものが急激に増加しています。女性の新規感染は23%の増加です。

 UKの急激に増加している異性間性交渉によるHIV感染にはひとつの特徴があります。それは、およそ3分の2が海外で感染しているということです。

 これは、拙書『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』で、または、当website上のレポート「なぜ西洋人や日本人はタイでHIVに感染するのか」のなかで引き合いに出した、「British Medical Journal」という医学専門誌の2004年3月号に掲載された「Sex, Sun, Sea, and STIs」というタイトルの論文の内容と合致します。

 この論文によりますと、2000年から2002年の間で、UKの国籍を持つ異性愛者でHIVに感染した男性の69%は海外で感染しています。そして、国別でみると最も多いのはタイで、全体の22%に相当するそうです。

 この論文では、ドイツ人男性がタイの売春婦と性交渉を持つ際にコンドームを使用するのはわずか3-4割という調査報告を掲載していますが、私が日々の臨床で接する日本人男性も、海外で(特にタイで)コンドームを用いない性交渉をしている人がかなり多いという印象があります。

(谷口 恭)