HIV/AIDS関連情報

2007年1月8日(月) 英国、C型肝炎ウイルスを保有した歯科医が"魔女狩り"に

 12月7日のBBC NEWSによりますと、イギリスのグウィネズ州のひとりの歯科医に治療を受けたおよそ5,000人の患者に対し、保健所からある通達がされたことが問題となっています。

 この歯科医は、2005年の秋にC型肝炎ウイルスに罹患していたことが分かりました。そして、それ以降にこの歯科医に治療を受けた患者全員に、保健所がC型肝炎ウイルスの検査を受けるように呼びかけたのです。

 そして、この通達が物議をかもしているのは、検査項目にC型肝炎ウイルス(HCV)だけでなく、B型肝炎ウイルス(HBV)とHIVも加えているからです。

 これに対し、歯科医協会(Dental Practitioners Association)の会長のブライアン・ラックス(Brian Lux)氏は、反対意見を表明しています。

 「この歯科医に治療を受けた患者に対し、HBVやHIVの検査を受けさせることには何の理由もないし、そもそもHCVの検査自体も不要である。検査に必要な費用はまったく無駄なものであり、このような検査をおこなうことがこの歯科医を冒涜し苦しめることにつながっている」

 そして、ラックス氏は、このような行政のやり方を"魔女狩り"と呼んで非難しました。

 これに対し、公衆衛生機関(National Public Health Service)は、「どのような政策をとるかは慎重に議論されなければならない」としながらも、「患者にリスクがあるかどうかを知る唯一の方法は患者に検査を受けてもらうことである」と述べています。

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 日本では、HBVとHCVのキャリア(ウイルスを保有している人)は、それぞれ約100万人と200万人程度だと言われています。このなかには、医師や歯科医、看護師などの医療従事者も含まれているものと思われます。

 以前HIVに関して、オーストラリアで同じような事件がありましたが(詳細は、2006年8月30日「オーストラリアでHIV陽性の歯科医」)、現在の趨勢は、こういったウイルスに感染している医療者は臨床がおこなえない、というものになっているように思われます。

 しかし、この問題にはいくつもの非常にむつかしい側面があり、慎重に議論されなければなりません。日本でも近いうちに問題提起される可能性があります。

(谷口 恭)