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2006年10月30日(月) マドンナの苦悩

 アフリカのマラウイでマドンナが孤児を養子にとったことが物議をかもし(詳細は「マドンナの養子縁組が世界中で波紋」2006年10月18日)、GINAでも現在アンケート調査を実施していますが、最近あるテレビ番組のトークショーにマドンナが出演しインタビューに答えています。それを10月26日のロイター通信が報道していますのでご紹介いたします。

 マドンナは次のようにコメントしています。

 「私が1歳のデビッドに初めて出会ったとき、デビッドは8歳のエイズ孤児の女の子に抱かれていたの。そして彼女からデビッドを預かったのよ。私はデビッドをなんとかしたいと思ったわ。けど、そのときは養子にするなんてことはまだ考えていなかったの」

 マドンナは夫のガイ・リッチと共に養子を取ることを2年前にすでに決断していたそうです。しかしどこの国の子を養子にするかは決めていなかったそうです。

 マドンナが養子にとった1歳のデビッドは、500人の子供たちと共に生活をしていました。父親は生きていますが、母親と3人の兄弟はすでに他界しています。

 「私は、デビッドは誰からも面倒をみてもらえないと思ったの。そのときデビッドは重症の肺炎を患っていて苦しそうに呼吸をしていたの。だからそのままその施設に置いていくことができなかったのよ。施設には薬がなかったの。だから私たちはデビッドを病院に連れて行く許可をもらったのよ。病院では肺炎と診断されて抗生物質の点滴がおこなわれたわ。デビッドの肺炎は今でも完全には治っていないけど、初めて会ったときよりは随分よくなったのよ」

 マドンナはマラウイ政府から暫定的な養子縁組の許可をもらい、正式に養子が認められるのは18ヶ月後となる予定です。

 デビッドはすでにロンドンに渡航しており、現在はマドンナ一家と共に暮らしています。マドンナにはふたりの子供(息子と娘)がいます。

 しかし、マドンナのこの決断は世界中で波紋を呼び、マラウイのある人権団体は、政府の認めた暫定許可に対し、法的に争う姿勢を見せています。マドンナを批判する者のなかには、「マドンナは有名であることと金の力を利用して暫定許可を得たんだ」、と言う者もいます。

 当初は、デビッドの父親はマドンナの養子縁組を歓迎するとのコメントを表明しているとマスコミは報道していましたが、最近になって、この父親は「自分は希望していない」と掌を返したような発言を始めているようです。

 「デビッドの父親が養子を望んでいないと言っているなんてこと、私は信じられないわ。彼はきっとマスコミにそそのかされているのよ」

 マドンナは続けます。

 「私はマスコミの態度に失望しているわ。けど、私だけじゃないわ。マスコミは、私と同じように養子を取ろうとしている世界中の人たちにも絶望感を与えているのよ。そのままにしておけば5歳まで生きられるかどうか分からない子供を引き取って子供のために尽くそうと考えている人は私のほかにもたくさんいるのよ。養子縁組を悪いことと報じているマスコミは、マラウイだけでなくて他のアフリカ諸国の子供たちをも不幸に導くことになるのよ」

 GINAでは引き続きマドンナの行動に対するアンケート調査をおこないます(詳しくはトップページを参照ください)。

(谷口 恭)