HIV/AIDS関連情報

2007年1月25日(木) インドの大臣がHIV陽性の子供を養子に

 HIV/AIDSに関するインドのニュースというのは、HIV陽性という理由で、病院でまともな治療を受けられなかったとか、学校を退学させられたとか、そういった許しがたい差別についてのものが多いのが特徴です。昨年9月には、インド西部に住むHIV陽性の35歳の男性が村人に石を投げられ重症を負い亡くなっています。

 しかしながら、今回お届けするのは大変好ましいニュースです。

 1月10日のロイター・ヘルスによりますと、アンドラプラデシ州のマレッパ大臣が、両親がエイズで亡くなったふたりの子供(6歳と4歳)を養子に引き取ったそうです。
 
 インドはいまや570万人にものぼる世界最大のHIV陽性者を抱える国ですが、アンドラプラデシ州はそのインドのなかで最もHIV陽性者の多い州です。国連のデータではこの州のHIV陽性者はおよそ150万人となっています。

 マレッパ大臣はこれまでも両親をエイズで亡くした5人の子供を養子にしています。

 インドでは、HIV陽性という理由で小学校を退学させられ学校に行けなくなるケースが後を絶ちません。マレッパ大臣のこの行為がインド世論に影響を与えることに期待したいものです。

(谷口 恭)

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2007年1月23日(火) 仙台の保健所がHIV検査結果の通知ミス

 1月23日の河北新報によりますと、仙台の宮城野保健所で昨年12月7日にHIVの抗体検査を受けた男性が陽性だったにもかかわらず、誤って陰性と通知したことを仙台市が公式に発表しました。

 男性は12月15日に同保健所で検査結果の通知を受けましたが、検査は匿名で行われたため、市は男性の名前や連絡先を把握していません。仙台市は「1日も早く連絡してほしい」と呼び掛けています。

 この男性は問診票に30代と記載しており、受検年度などを記載した受け付け番号には「宮―18―69」と書かれているそうです。同保健所で12月15日に通知を受けたのは、この男性1人だけだそうです。

 仙台市は、結果を転記する際、誤って「陰性」のはんこを押したのが原因と発表しています。
 
 連絡先は、宮城野保健所(022-291-2111)です。

 心当たりのある人は大至急連絡をお願いします!!

(谷口 恭)

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2007年1月23日(火) マラウイ政府はマドンナに好意的

 GINAでアンケート調査をおこない(この結果は近日中に発表いたします)、このコーナーでも関連ニュース(「マドンナの養子縁組が世界中で波紋」2006年10月18日「マドンナの苦悩」2006年10月30日など)を何度かご紹介しているマドンナの養子縁組に対して、マラウイ政府はマドンナを支持するような見解を発表しています。

 1月6日のロイター通信によりますと、マラウイの女性と子供の福祉省(Ministry of Women and Child Welfare)の幹部であるAdrina Mchiela女史は、「マドンナは1歳のデビッドに対して満足のいくケアをおこなっている」、とコメントしました。

 Mchiela女史は続けます。

「我々はこれまでマドンナがどのようにデビッドの世話をするのかを監視してきたが、マドンナは母親として立派に振る舞い、デビッドは元気に育っている。デビッドの父親は何も心配する必要はない」

 デビッドの父親であるヨハネは、「デビッドが元気に育っているかどうか知るためにマドンナに会いたい」と言っているそうです。スコットランドのある福祉団体は、ヨハネのこの希望に対して、マドンナ一家が住むロンドンまでの渡航費として400ポンド(約8万円)の小切手をヨハネに寄付しました。

 これに対し、マラウイ政府は、「養子縁組の暫定期間である18ヵ月が経過するまでは父親はデビッドに会うべきでない。18ヵ月後にマドンナはデビッドを連れてマラウイに戻ってくるからそれまで待つべきだ。父親は何も心配する必要がない」、とヨハネに対して忠告をしています。

 上記のスコットランドの福祉団体がマドンナの養子縁組そのものに反対しているかどうかは分かりませんが、マラウイ国内の団体を筆頭に、世界中の人権団体がマドンナの行動に異議を唱えています。一方、マラウイ政府はマドンナを好意的にとらえ、また一般の人々からの意見もマドンナを支持するものが多いようです。(デビッドの父親がどのような発言をしているかという点については、マスコミの報道によって異なります)

 マドンナのこのニュースでマラウイの孤児の実態が注目されるようになりました。アフリカのこの小国では、90万人以上の子供たちが孤児院で生活し、さらに約50万人の親をなくした子供たちが貧困に苦しんでいます。その最たる原因はHIV感染です。

(谷口 恭)

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2007年1月22日(月) リビアのHIV院内感染、真実の行方は(第4報)

 過去3回にわたりお伝えしてまいりましたリビアのHIV院内感染の事件で(2006年8月10日「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・」9月22日「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(続編)」10月30日「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第3報)」)、先月、現地の裁判所は、ひとりのパレスチナ人の医師と5人のブルガリア人の看護師に対し、あらためて死刑判決を言い渡しました。

 判決では、これら6人の医療者が入院中の子供たちに故意にHIVを感染させたとしていますが、以前からこの主張には疑問の声が相次いでいました。
  
「第3報」でお伝えしましたように、科学誌「ネイチャー」は、検察側が提出した資料を入手し、それを英訳し、6カ国のエイズ専門医たちに検証させました。その結果、すべてのエイズ専門医は「あきれるほど不備だらけの資料だ」とコメントし、ある学者は、「6人が故意に子供たちにHIVを感染させたことを示す証拠など何ひとつない。そればかりか、なかにはその6人が働き始める前からすでに感染していた子供もいることが分かっている」、と述べています。先月「ネイチャー」は、6人の容疑者が無実である旨を遺伝子レベルの解析結果を用いて報告しています。

 また、イギリスの医学誌「ランセット」は、11月に「Free the Benghazi Six(ベンガジの6人を解放せよ)」というタイトルで、不当な判決を言い渡す裁判所を医学的な観点から非難しました。(6人が勤務していたのがベンガジ病院です)

 これだけ科学的な検証がなされて、6人が無実であると主張されていますが、HIVに感染した426人の子供の親たちは、6人が有罪であることを強く主張し、子供ひとりにつき1,500万ドル(約18億円)の保障を求めています。

 今年(2007年)の1月からブルガリアはEUの一員となりました。こうなればEUがリビアの判決に対して公的に強い抗議をするのではないかと私自身はみているのですが、現時点では大きな動きはないようです。ちなみに、日本の行政はこの判決に対して(私の知る限り)何もコメントを発していません。

(谷口 恭)

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2007年1月19日(金) 香港でHIV新規感染が急増

 1月4日のロイター通信によりますと、2つの大きな母集団(Large Clusters)の間でHIVの新規感染が急増しています。この母集団の詳細は明らかにされていませんが、2つの母集団の間にはなんら関係がなく、同時に急速に感染が広がったようです。

 これら2つの母集団には46人の男性が含まれていますが、当局によりますと、検査がまだ十分におこなわれておらず、実際の感染者はもっと多いことが予想されるそうです。特に、女性に対しては現時点で検査がほとんどおこなわれていないようです。

 46人の男性は2003年から2006年の9月までに感染が判明しており、HIVの遺伝子レベルの分析結果から、その集団内で感染が蔓延したものと専門家はみています。

 現在、香港政府は、コンドームを用いない性交渉の経験のある人はHIV検査を受けるように呼びかけています。

 香港ではこれまでも感染者が報告されていますが、ほとんどは配偶者や性パートナーからの感染で、今回ほど大規模の感染は例がありません。

 香港の保健関係の役人Wong氏は、「こんなことは初めてだ。これまでHIV感染率が低かった香港で急速にHIVが蔓延している。危険な性行為をおこなっている者たちの間で新規感染が広がっている。もしも彼(女)らがコンドームを適切に使用していればこんな事態にはなっていなかった」、とコメントしています。

 香港のHIV感染率は決して高くなく、およそ700万人の人口に対しHIV陽性者は約3,100人ですが、今後急速に増加していくかもしれません。

(谷口 恭)

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