HIV/AIDS関連情報

2007年9月25日(火) 大麻ユーザーも精神疾患になりやすい!

 覚醒剤や麻薬をやりすぎると、精神的に異常をきたすのは明らかですが、大麻(マリファナ、ハシシ、ガンジャなど)は、これまで安全ではないかと言われてきました。

 大麻には依存性もなく、タバコやアルコールの方がよほど有害なのではないかとも言われてきました。

 オランダでは大麻が完全に合法であることはよく知られていますし、日本も含めて大麻が遺法な国でも、覚醒剤や麻薬に比べると大麻使用の罪は格段に軽いと言えます。インドでも一部の州では合法ですし(外国人が使用すると一応は遺法ですが実際は野放しの地域も少なくありません)、カンボジアでは伝統料理に大麻が使われています。尚、カンボジアの一部の地域では、タバコを買えない貧民が大麻を吸う地域もかつてはあったそうです。

 しかし、「大麻の使用が身体に有害で、精神疾患になりやすい」という報告がついに発表されました。

 科学誌「Lancet」の2007年7月28日号によりますと、大麻使用と精神疾患リスク上昇の間に有意な関係が見出されました。

 研究者は、大麻の使用と精神疾患の関係を評価していた35件の文献を選出し、それらをメタ分析しました。(メタ分析とは、わかりやすく言えば、各々の研究を総合的に再評価する方法です)

 この分析によりますと、程度にかかわらず大麻使用歴があると、あらゆる精神疾患のリスクが上昇していることがわかりました。精神疾患とは、具体的には、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、精神性障害、感情性精神病、悲感情性精神病、特定不能の精神病、妄想、幻覚、思考障害、感情障害、気分障害、双極性障害、特定不能の感情障害、うつ病、自殺念慮または自殺企図、不安、神経症、躁病などです。

 また、大麻の使用回数が多い人ほどリスクが高いという結果がでています。

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 使用回数が多いほどリスクが高いというのは感覚的に理解できることですが、「程度にかかわらず使用歴があるとリスクが上昇する」、というところが興味深いと言えるでしょう。

 大麻は、日本国内にいても比較的簡単に入手することができますし、一部の地域では自然に生えているところもあります。また、自宅での栽培もやろうと思えばできないこともありません。(ときどき警察に摘発されています)

 この研究が、興味本位で大麻に手を出す若者への警告となることを期待します。

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2007年8月23日(木) タイの主婦層のHIV感染を国連が危惧

 現在、第8回ICCAP(アジア・パシフィック国際エイズ学会)がスリランカのコロンボでおこなわれています。そのオープニングで、UNAIDS(国連エイズ合同企画)の副委員長であるデボラ・ランディ(Deborah Landey)氏が、現在のタイのエイズ事情について警告を発しました。(報道は8月21日のバンコクポスト)

 「現在のタイでは主婦層の間でHIV新規感染が急速に広まっている。直ちにこの問題に対する介入がおこなわなければならない」

 ここ数年、タイでは年間およそ18,000人が新たにHIVに感染しており、その4割は主婦です。従来ハイリスクグループと呼ばれてきた男性同性愛者が28%、売春婦が10%ですから、いかに主婦層での感染が多いかが分かります。

 ほとんどの主婦は、女グセの悪い旦那(promiscuous husbands)から感染させられています。

 この事態に対し、タイのモンコル保健相は、「ファミリー・コンドーム・キャンペーン」なるものを計画しています。これは夫婦間にもコンドームを使うよう促すものです。

 UNAIDSのランディ氏は、主婦層の感染がタイだけではないことも述べています。HIVに新たに感染したパプアニューギニア人の約半数、カンボジア人の少なくとも46%は主婦だそうです。

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 タイの主婦層に感染が増えているというのはGINAの活動を通しても実感できるのですが、「ファミリー・コンドーム・キャンペーン」が解決策となるかどうかは疑問です。

 はたして、主婦が夫に、「あなたのことが信用できなからコンドームを使ってね」などと言えるでしょうか。

 もうひとつ気になる点は、新たにHIVに感染した主婦は、本当に夫から感染したのかということです。GINAが昨年おこなったフリーの売春婦(independent sex workers)に対する調査では、売春婦の3人に1人は主婦でした。

 家庭内の対策だけでなく、主婦の売春という問題にも目を向けるべきではないかと思われます。つまり、貧困から売春をせざるを得ないという社会背景にも注意を払わなければならないということです。

(谷口 恭)

参考:タイの主婦へのHIV対策(2006年9月11日)

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2007年8月22日(水) 堺市の倉庫で大量の薬物押収

 すでに各マスコミが報道しているように、8月13日、大阪府堺市の倉庫で大量の覚醒剤や大麻などが押収されました。大阪府警薬物対策課は、この事件を中国やカナダにまたがる国際的な密輸組織の犯行の疑いがあるとみているようです。

 逮捕された中国人4人は中国本土からの指示で、大阪港で陸揚げされた積荷を受け取り、倉庫に移すだけの「運び役」だったようです。府警は日本の暴力団も関与しているとみています。

 この事件で驚くのは押収された薬物の量です。覚醒剤が約155キロ(末端価格約93億円)、乾燥大麻約280キロ(同約11億円)、MDMAの錠剤68万錠(同約27億円)で、いずれも昨年1年間の国内押収量を上回っています。

 昨年の国内の薬物押収量は、覚醒剤140キロ、大麻196キロ、MDMA115,000錠です。1999年には覚醒剤だけで1,450キロが押収されていましたから、北朝鮮ルートが減少したせいで薬物の輸入は減っているとみられていました。

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 需要があるから供給があるという考え方もありますが、違法薬物の場合、供給があるから需要があるという側面も無視できません。ひとときだけとはいえ、恍惚感、高揚感などを簡単に手に入れることのできる薬物は、かなりの強い意志をもつ人でさえもその甘い誘惑に負けてしまうことがあります。

 私個人としては、薬物対策にもっと多額の資金を導入し、国内対策だけでなく、他国と協力し世界規模で薬物シンジケートの撲滅に力を入れてもらいたいと考えています。

(谷口 恭)

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2007年7月30日(月) リビアのHIV院内感染、真実の行方は(第6報)

 HIVを故意に感染させたとして、リビアで死刑宣告を受け拘留されていた6人の医療従事者についての事件を過去5回に渡ってお伝えしてきましたが、ようやく終焉を迎え、世界中のメディアが一斉に報道しています。(なぜか日本のメディアはあまりとりあげませんが・・・)

 7月24日のロイター通信によりますと、拘留されていた1人のパレスチナ人の医師と5人のブルガリア人の看護師が8年ぶりに解放されました。そして、これにより、長い間うまくいっていなかったリビアと西洋諸国との国際関係が好転するのではないかと見られています。

 ここにきて交渉がうまく進んだのは、今年の1月、ブルガリアがEUに加わり、EUとリビアが何度も交渉を重ねたからです。

 EUの提示した条件は、院内感染した400人以上の子供たちをヨーロッパ内の病院で生涯にわたりケアをし、さらに問題の院内感染がおこったベンガジ(Benghazi)にリハビリ機能の備わったふたつの病院を建設するというものです。

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 今回の取り決めでは、EU側は感染した子供たちの生涯にわたるケアと病院の建設で巨額な費用を捻出することになりましたが、リビアが要求を最後まで撤回しなかった家族への慰謝料約4億6千万ドル(約555億円)は支払わないこととなりました。

 拘留され死刑判決を受けた6人の医療者が問題の病院に勤務する前から子供たちにHIVが感染していたのは科学的に明らかだったわけですから、慰謝料の支払いというのはスジが通らなかったのです。

 一方、リビア側も感染した子供たちのケアはEUにまかせられることとなり、近代的な病院も建ててもらえることとなり、さらに西洋諸国との関係が改善される運びとなりましたから双方にとって利益のある取り決めになったといえるでしょう。

 それにしても、無茶苦茶な理由で死刑宣告までされた6人が自由の身になり本当によかったと思います。今後は、院内感染がおこらないようリビア政府に徹底してもらいたいものです。

(谷口 恭)
 
参考:
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第5報)」2007年1月31日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第4報)」2007年1月22日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第3報)」2006年10月30日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(続編)」2006年9月22日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・」 2006年8月10日

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2007年7月30日(月) HIVをうつされた女性が「死ぬまで彼を愛します」

 自らのHIV感染を知りながら、それを恋人に伝えず、危険な性行為を繰り返して感染させてしまった38歳の男性が逮捕され、現在オーストラリアのヴィクトリア州で裁判がおこなわれています。

 この男性は、2000年の11月にひとりの女性と知り合い、2004年のバレンタイン・デイに自らの手紙で別れを告げるまで交際を続けていました。その間、自身がHIV陽性であることを告げずに、危険な性行為(unprotected sex)をおこない、その女性に感染させたのです。(女性の名前、年齢などは公表されていません)

 HIVを感染させられたその被害者の女性が法廷で証言をおこない、これを7月10日のnews.com.auが取り上げています。女性は被告の男性からHIVに感染させられたことを認めたうえで、次のようにコメントしています。

 「私は死ぬまで彼を愛します・・・。彼が私にしたことは忘れない・・・。けど、私は彼を許します・・・」

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 「死ぬまで彼を愛します」の原文は、I will take my love for him to the grave.です。この女性の真の気持ちが、純粋な愛情なのか、憎悪の裏返しなのか、また、現在の精神状態が安定しているのかそうでないのか、などについては報道からは分かりません。

 オーストラリアやヨーロッパのメディアではこの手の記事を頻繁に見かけます。近い将来、日本でも同じようなニュースが増えてくるでしょう。

(谷口 恭)

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