HIV/AIDS関連情報

2007年1月22日(月) リビアのHIV院内感染、真実の行方は(第4報)

 過去3回にわたりお伝えしてまいりましたリビアのHIV院内感染の事件で(2006年8月10日「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・」9月22日「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(続編)」10月30日「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第3報)」)、先月、現地の裁判所は、ひとりのパレスチナ人の医師と5人のブルガリア人の看護師に対し、あらためて死刑判決を言い渡しました。

 判決では、これら6人の医療者が入院中の子供たちに故意にHIVを感染させたとしていますが、以前からこの主張には疑問の声が相次いでいました。
  
「第3報」でお伝えしましたように、科学誌「ネイチャー」は、検察側が提出した資料を入手し、それを英訳し、6カ国のエイズ専門医たちに検証させました。その結果、すべてのエイズ専門医は「あきれるほど不備だらけの資料だ」とコメントし、ある学者は、「6人が故意に子供たちにHIVを感染させたことを示す証拠など何ひとつない。そればかりか、なかにはその6人が働き始める前からすでに感染していた子供もいることが分かっている」、と述べています。先月「ネイチャー」は、6人の容疑者が無実である旨を遺伝子レベルの解析結果を用いて報告しています。

 また、イギリスの医学誌「ランセット」は、11月に「Free the Benghazi Six(ベンガジの6人を解放せよ)」というタイトルで、不当な判決を言い渡す裁判所を医学的な観点から非難しました。(6人が勤務していたのがベンガジ病院です)

 これだけ科学的な検証がなされて、6人が無実であると主張されていますが、HIVに感染した426人の子供の親たちは、6人が有罪であることを強く主張し、子供ひとりにつき1,500万ドル(約18億円)の保障を求めています。

 今年(2007年)の1月からブルガリアはEUの一員となりました。こうなればEUがリビアの判決に対して公的に強い抗議をするのではないかと私自身はみているのですが、現時点では大きな動きはないようです。ちなみに、日本の行政はこの判決に対して(私の知る限り)何もコメントを発していません。

(谷口 恭)