HIV/AIDS関連情報

2007年7月30日(月) リビアのHIV院内感染、真実の行方は(第6報)

 HIVを故意に感染させたとして、リビアで死刑宣告を受け拘留されていた6人の医療従事者についての事件を過去5回に渡ってお伝えしてきましたが、ようやく終焉を迎え、世界中のメディアが一斉に報道しています。(なぜか日本のメディアはあまりとりあげませんが・・・)

 7月24日のロイター通信によりますと、拘留されていた1人のパレスチナ人の医師と5人のブルガリア人の看護師が8年ぶりに解放されました。そして、これにより、長い間うまくいっていなかったリビアと西洋諸国との国際関係が好転するのではないかと見られています。

 ここにきて交渉がうまく進んだのは、今年の1月、ブルガリアがEUに加わり、EUとリビアが何度も交渉を重ねたからです。

 EUの提示した条件は、院内感染した400人以上の子供たちをヨーロッパ内の病院で生涯にわたりケアをし、さらに問題の院内感染がおこったベンガジ(Benghazi)にリハビリ機能の備わったふたつの病院を建設するというものです。

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 今回の取り決めでは、EU側は感染した子供たちの生涯にわたるケアと病院の建設で巨額な費用を捻出することになりましたが、リビアが要求を最後まで撤回しなかった家族への慰謝料約4億6千万ドル(約555億円)は支払わないこととなりました。

 拘留され死刑判決を受けた6人の医療者が問題の病院に勤務する前から子供たちにHIVが感染していたのは科学的に明らかだったわけですから、慰謝料の支払いというのはスジが通らなかったのです。

 一方、リビア側も感染した子供たちのケアはEUにまかせられることとなり、近代的な病院も建ててもらえることとなり、さらに西洋諸国との関係が改善される運びとなりましたから双方にとって利益のある取り決めになったといえるでしょう。

 それにしても、無茶苦茶な理由で死刑宣告までされた6人が自由の身になり本当によかったと思います。今後は、院内感染がおこらないようリビア政府に徹底してもらいたいものです。

(谷口 恭)
 
参考:
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第5報)」2007年1月31日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第4報)」2007年1月22日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(第3報)」2006年10月30日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・(続編)」2006年9月22日
「リビアのHIV院内感染、真実の行方は・・・」 2006年8月10日