HIV/AIDS関連情報

2007年8月23日(木) タイの主婦層のHIV感染を国連が危惧

 現在、第8回ICCAP(アジア・パシフィック国際エイズ学会)がスリランカのコロンボでおこなわれています。そのオープニングで、UNAIDS(国連エイズ合同企画)の副委員長であるデボラ・ランディ(Deborah Landey)氏が、現在のタイのエイズ事情について警告を発しました。(報道は8月21日のバンコクポスト)

 「現在のタイでは主婦層の間でHIV新規感染が急速に広まっている。直ちにこの問題に対する介入がおこなわなければならない」

 ここ数年、タイでは年間およそ18,000人が新たにHIVに感染しており、その4割は主婦です。従来ハイリスクグループと呼ばれてきた男性同性愛者が28%、売春婦が10%ですから、いかに主婦層での感染が多いかが分かります。

 ほとんどの主婦は、女グセの悪い旦那(promiscuous husbands)から感染させられています。

 この事態に対し、タイのモンコル保健相は、「ファミリー・コンドーム・キャンペーン」なるものを計画しています。これは夫婦間にもコンドームを使うよう促すものです。

 UNAIDSのランディ氏は、主婦層の感染がタイだけではないことも述べています。HIVに新たに感染したパプアニューギニア人の約半数、カンボジア人の少なくとも46%は主婦だそうです。

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 タイの主婦層に感染が増えているというのはGINAの活動を通しても実感できるのですが、「ファミリー・コンドーム・キャンペーン」が解決策となるかどうかは疑問です。

 はたして、主婦が夫に、「あなたのことが信用できなからコンドームを使ってね」などと言えるでしょうか。

 もうひとつ気になる点は、新たにHIVに感染した主婦は、本当に夫から感染したのかということです。GINAが昨年おこなったフリーの売春婦(independent sex workers)に対する調査では、売春婦の3人に1人は主婦でした。

 家庭内の対策だけでなく、主婦の売春という問題にも目を向けるべきではないかと思われます。つまり、貧困から売春をせざるを得ないという社会背景にも注意を払わなければならないということです。

(谷口 恭)

参考:タイの主婦へのHIV対策(2006年9月11日)