HIV/AIDS関連情報

2007年3月5日(月) タイ・ラオス国境付近で薬物関連犯罪が急増

 現在、ミャンマーからタイへの違法薬物の流入は減少していると言われていますが、その一方でラオスから東北地方(イサーン)への密輸が増えています。さらに、ドラッグにまつわる犯罪が急増していることを軍部最高司令官のブーンサン・ニエムプラディト(Boonsang Niempradis)氏が3月2日に発表しました。(報道は同日のバンコクポスト)

 イサーン地方のウボンラチャタニ県にチョンメク(Chong Mek)というラオスとの国境の町があります。ブーンサン氏は、そのチョンメックで開催されたタイ・ラオス合同の薬物委員会に出席した後、犯罪の急増について公式な発表をおこないました。

 ブーンサン氏によりますと、ミャンマーから北タイへの密輸がかなり厳しくなったことから、密売人たちはタイへの輸出ルートをラオス経由に転換しているそうです。氏は言います。

 「次第に多くの密売人たちがラオスやカンボジア経由でドラッグをタイに持ち込んでいる。3人から10人程度の規模のグループが合計1,000から1,500錠のメタンフェタミンを持ち込むことが多い」

 ミャンマーからのルートに比べると、ラオスやカンボジアとの国境は距離が大変長いために、取り締まるのは簡単ではありません。(地図でみるとミャンマーとタイの国境も長い距離がありますが、大半は人が簡単に入れない山ですから、実質ミャンマーからの密輸ルートは北タイの一部だけとなっています。それに対し、ラオスやカンボジアとの国境はほとんど平地ですから簡単に密輸ができてしまいます)

 現在の薬物対策に従事している警察官の人数では不充分で、両国の地方警察の協力が求められています。

 最も薬物犯罪が問題となっているチョンメクではHIVを含む性感染症の蔓延も指摘されています。

(谷口 恭)

参考:「タイ・ラオス国境で性感染症予防活動」 2007年2月3日

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2007年3月1日(木) インド女性の半数は"エイズ"を知らない

 2月23日のロイター通信によりますと、インド政府の調査でインドの全女性の40%以上がエイズという病を知らないということが分かりました。

 この調査はユニセフと英・米国の二国が協力し、インドのNFHS(国民家族保健調査)がおこなったもので、インド全域で国民の健康と栄養状態が調べられました。その結果、インド全域でエイズという病を知っていた者はわずか57%という結果がでました。

 地方だけでみてみると、エイズという病を知っている女性は46%にとどまります。なかでも、約8,500万人の人口を抱える北東部のビハール州では、エイズを知っている女性はわずか35%のみで、さらにこの州の村によっては30%にまで下がります。

 これだけ低くしか認知されていない理由のひとつに、これまでインド政府がとってきたエイズ対策があげられます。政府は、ドラッグユーザーや売春婦といったハイリスクグループのみに予防活動をおこなっており、広く国民に対する活動はこれまでおこなってきませんでした。

 次に、インドの地方のインフラの遅れがあります。インドの多くの地方では、家にテレビがなく、電気自体が通っていない地域も少なくありません。国民に広く予防活動を訴えるにはインフラの整備が必要であると言えるでしょう。

 さらに、インド女性の識字率の低さも原因のひとつです。インドでは、男性の76%が文字を読めるのに対して、女性では54%のみです。実際、エイズを知っていると答えた男性はインド全域でおよそ8割という結果がでており、男女間の識字率の違いが今回の結果につながっているとみられています。

 インドでは過去数年間で女性の感染者が増えており、現在全感染者の約4割が女性で、このなかには主婦も少なくありません。主婦の感染源は自身の夫であり、夫たちは、都会に出稼ぎに行き、都会での売春行為でHIVに感染しているのです。

 ロイター通信のこの報道では、スティグマがあるためにHIVに感染しているということを夫が妻に言えない状況があるとしています。

(谷口 恭)

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2007年3月1日(木) インドネシアでエイズ急増、パプアニューギニアも

 HIV感染が急増しているインドネシアとパプアニューギニアの状況について、2月17日WHO(世界保健機構)が報告をおこない、19日のロイター通信が報道しています。

 報告によりますと、インドネシアでHIV感染が急増しているのは主にドラッグユーザーと売春婦の間です。

 インドネシアは世界でもっとも多くのイスラム教徒を抱える国ですが、国民の大半は自由な性生活をしており、実際、売春は同国の多くの地域で主要産業となっています。インドネシア警察によりますと、現在ドラッグユーザーも急増しており、新たなHIV感染者を生み出しています。

 WHOによりますと、パプアニューギニアでは国民の2%がすでにHIV陽性です。同国は約300の先住民からなる国家で、言語も文化もバラバラです。なかには石器時代からなんら変わっていない生活を営んでいる部族もあります。

 WHOの報告ではインドネシアのHIV陽性者の見通しを明らかにしませんでしたが、インドネシアのスパリ保健大臣は、昨年11月、今後適切な予防政策が取られなければ、2010年までに50万人がHIV陽性となるとの見解を発表しています。

(谷口 恭)

参考:パプアニューギニアのHIV蔓延 2006年10月1日
    インドネシアのHIV感染、2010年に倍増 2006年12月21日

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2007年2月28日(水) インドの女性がエイズを疑われ親戚に殺害される

 インド東部に位置するオリッサ州でとんでもない事件が起こりました。エイズを発症していると誤解された30歳の女性が、なんと同じ家に住む親戚に殴り殺されたというのです。

 2月26日のロイター・ヘルスによりますと、数年前に未亡人となったこの女性は数日間高熱に苦しんでおり、それをみた親戚数人が根拠もなく「エイズに違いない」と思い、この女性を殺しました。

 この未亡人の元夫は数年前に肝疾患で死亡しており、親戚たちはこの元夫もエイズを発症していたと思い込んでいたようです。地元の新聞報道によりますと、元夫も未亡人のこの女性もHIVに感染していたという証拠は何ひとつないそうです。

 この未亡人を殺害した親戚連中のふたりはすでに警察に逮捕されています。

 現在570万人と世界一のHIV感染者を有するインドでは、依然スティグマや差別が広く蔓延しており、感染者は感染を隠し、社会から身を潜めてなくてはならないという現状があるのです。

(谷口 恭)

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2007年2月28日(水) タイ、「クラブ・ドラッグ」が氾濫

 タイで薬物が再び蔓延しているというニュースが最近頻繁に報じられていますが、スラユット首相が議長をつとめる麻薬撲滅委員会が23日に開催され、ONCB(麻薬管理委員会)の幹部キティ(Kitti)氏が同日にコメントを発表しています。(報道は2月24日のバンコクポスト)

 キティ氏は、ヤングアダルトと呼ばれる世代の特定のグループの間で、違法薬物が広く蔓延していることを指摘しました。現在、タイで氾濫しているのは、通称"アイス"と呼ばれる結晶のメタンフェタミン、コカイン、ケタミン、エクスタシー(MDMA)などで、これらはこういったグループが集うクラブで取引されることが多いため、「クラブ・ドラッグ」と呼ばれています。

 これら薬物のなかでも、特に近隣諸国で密造されている"アイス"が最も大量に流通しています。以前のタイでは、ヤーバー(直訳すると"馬鹿の薬"。アンフェタミンの錠剤)が広く流通していましたが、若い世代の間でこのヤーバーを使用する者は減少傾向にあります。これは、前政権(タクシン政権)が徹底的にこの覚醒剤を撲滅する対策を取ったことによるものとみられています。

 キティ氏は委員会で他の国の情勢についても述べました。

 アフガニスタンの麻薬の製造が爆発的に増加しており、これはタリバン一派の資金源になると考えられています。昨年、アフガニスタンは670トンのヘロインを精製しましたが、この量は世界中のヘロイン中毒者が必要とする年間消費量を凌ぐものです。

 一方、近年減少傾向にあったタイ国内のアヘン産生量も、昨年は前年より10%増えたと考えられています。以前は大量に栽培されていたチェンライ県ではもはやアヘン畑はほとんどなく、現在流通しているタイ産のアヘンはほとんどが北部のターク県で栽培されたものです。 

 タイでは元薬物中毒者の8-10%が再びドラッグの使用を始めていることも分かりました。また、過去1年間で薬物の容疑で逮捕された者の70%は10代だったそうです。ミャンマーなど北部からの密輸は減っているものの、カンボジアとの国境付近での密輸が増加しているという問題も指摘されました。
 
 さらに、タイ南部の薬物問題も過去最悪の事態となっています。当局は現在、イスラム過激派のテロを警戒するあまり薬物問題に力を注げておらず、南部ではすべての違法薬物が大変簡単に入手できる状態にあるそうです。

(谷口 恭)

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