HIV/AIDS関連情報

2007年2月28日(水) タイ、「クラブ・ドラッグ」が氾濫

 タイで薬物が再び蔓延しているというニュースが最近頻繁に報じられていますが、スラユット首相が議長をつとめる麻薬撲滅委員会が23日に開催され、ONCB(麻薬管理委員会)の幹部キティ(Kitti)氏が同日にコメントを発表しています。(報道は2月24日のバンコクポスト)

 キティ氏は、ヤングアダルトと呼ばれる世代の特定のグループの間で、違法薬物が広く蔓延していることを指摘しました。現在、タイで氾濫しているのは、通称"アイス"と呼ばれる結晶のメタンフェタミン、コカイン、ケタミン、エクスタシー(MDMA)などで、これらはこういったグループが集うクラブで取引されることが多いため、「クラブ・ドラッグ」と呼ばれています。

 これら薬物のなかでも、特に近隣諸国で密造されている"アイス"が最も大量に流通しています。以前のタイでは、ヤーバー(直訳すると"馬鹿の薬"。アンフェタミンの錠剤)が広く流通していましたが、若い世代の間でこのヤーバーを使用する者は減少傾向にあります。これは、前政権(タクシン政権)が徹底的にこの覚醒剤を撲滅する対策を取ったことによるものとみられています。

 キティ氏は委員会で他の国の情勢についても述べました。

 アフガニスタンの麻薬の製造が爆発的に増加しており、これはタリバン一派の資金源になると考えられています。昨年、アフガニスタンは670トンのヘロインを精製しましたが、この量は世界中のヘロイン中毒者が必要とする年間消費量を凌ぐものです。

 一方、近年減少傾向にあったタイ国内のアヘン産生量も、昨年は前年より10%増えたと考えられています。以前は大量に栽培されていたチェンライ県ではもはやアヘン畑はほとんどなく、現在流通しているタイ産のアヘンはほとんどが北部のターク県で栽培されたものです。 

 タイでは元薬物中毒者の8-10%が再びドラッグの使用を始めていることも分かりました。また、過去1年間で薬物の容疑で逮捕された者の70%は10代だったそうです。ミャンマーなど北部からの密輸は減っているものの、カンボジアとの国境付近での密輸が増加しているという問題も指摘されました。
 
 さらに、タイ南部の薬物問題も過去最悪の事態となっています。当局は現在、イスラム過激派のテロを警戒するあまり薬物問題に力を注げておらず、南部ではすべての違法薬物が大変簡単に入手できる状態にあるそうです。

(谷口 恭)