HIV/AIDS関連情報

2006年10月1日(日) パプアニューギニアのHIV蔓延

 9月28日のBBC NEWS(website版)によりますと、パプアニューギニアのいくつかの地方ではHIV陽性者が倍増しているそうです。いまや国民の2%近くがHIV陽性となっており、サハラ砂漠以南に似たような状況になるのではないかとみる専門家もいるようです。

 年間およそ30%もの増加を示している現状があるのにもかかわらず、有効な対策をとっていない政府に対する批判の声は少なくありません。

 マイケル・ソマレ首相はこの事態に積極的に対処する姿勢を見せていますが、次のようにも述べています。

 「この国には800もの異なった文化と言語がある。さらに読み書きのできる国民は34%しかいないことを考えるとエイズ対策は容易ではない」

 パプアニューギニアの最たる感染ルートは異性間性交渉です。コンドームを用いない性行為、買春、浮気、などによりHIVが蔓延しています。問題は首都のポートモレスビーだけでなく、この国の主要な産業である採石や材木の港町にも広がっているとみられています。

 そして忘れてはならないのが、女性が危険に曝されているということです。アムネスティ・インターナショナルがこの件についてコメントしています。

 「女性は最もリスクの高い存在です。一夫多妻の夫たちはたくさんの性交渉の相手を有しています。女性たちはコンドームの使用を求めることができず性交渉を拒むこともできないのです」

 さらに先進国からは考えられないような理由もあります。厚生大臣のマン医師は言います。

 「人々はこの病気を魔術のようなもの(witchcraft and sorcery)と考えている。正しい知識が彼らに普及するまでに多くの命が犠牲になるだろう」

 最近ある病院がおこなった同国エンガ県の2箇所の調査では感染率が30%にもなったそうです。厚生省がおこなった700人の金の採掘労働者を対象とした調査ではそのうち70人が陽性だったそうです。

 WHO(世界保健機関)は2015年までに感染者が100万人になるのではないかとみています。

 しかしWHO関係者のBernard Fabre-Teste医師は次のように述べています。

 「現在パプアニューギニアは積極的にエイズ問題に取り組もうとしている。HIV検査を奨励しカウンセリングを受けられるようにもなってきている。予防プログラムが遂行され、治療システムも確立し、より正確で戦略的な情報が発信されている」

 現在WHOは、政府のプログラムが適切に遂行できるよう、地域の医師や看護師に教育をおこなっています。

 最後にパプアニューギニアのHIVに関するデータをまとめておきましょう。

 初めてHIV陽性者が確認されたのが1987年で、1997年からは新規のHIV陽性者が年間30%の伸びを示すようになりました。2005年には約6万人がHIV陽性でしたが、このうち抗HIV薬の治療を受けられたのはわずか171人です。人口は約580万人で一人あたりのGDPは2,300ドル(約27万円)、成人の感染率は1.8%。尚、この国の感染ルートはほとんどが異性間性交渉です。(UNAIDSのデータより)

(谷口 恭)