HIV/AIDS関連情報
2007年3月23日(金) アンジェリーナ・ジョリーが3人目の養子
カンボジアではマドックス君(現在5歳)を、エチオピアではザラちゃん(現在2歳)を養子に迎え入れたアンジェリーナ・ジョリーが、今度はベトナムの孤児院で暮らす3歳の男の子を養子にすることを発表しました(報道は3月15日のバンコクポスト)。
3月12日、アンジェリーナはすでに養子となっているマドックス君とともにホーチミンの孤児院を訪れ、その後法的な手続きを取るために法務省に出向きました。
アンジェリーナは、昨年11月に夫のブラッド・ピットと共にその孤児院を訪問していたそうです。
アンジェリーナは昨年5月にはナミビアでブラッド・ピットとの子供シローちゃん(女児)を出産していますから、今後は子供4人の6人家族ということになります。
***********
このニュースは世界中のマスコミで一斉に発表されましたが、マドンナがマラウイの子供を養子にしたときのような批判はまったく報道されていません。3人の養子を迎え入れたアンジェリーナには一切の批判はなく、ただひとりの養子をとったことで世界中から非難されたマドンナは、いったいどこに違いがあるのでしょうか・・・
(谷口 恭)
3月12日、アンジェリーナはすでに養子となっているマドックス君とともにホーチミンの孤児院を訪れ、その後法的な手続きを取るために法務省に出向きました。
アンジェリーナは、昨年11月に夫のブラッド・ピットと共にその孤児院を訪問していたそうです。
アンジェリーナは昨年5月にはナミビアでブラッド・ピットとの子供シローちゃん(女児)を出産していますから、今後は子供4人の6人家族ということになります。
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このニュースは世界中のマスコミで一斉に発表されましたが、マドンナがマラウイの子供を養子にしたときのような批判はまったく報道されていません。3人の養子を迎え入れたアンジェリーナには一切の批判はなく、ただひとりの養子をとったことで世界中から非難されたマドンナは、いったいどこに違いがあるのでしょうか・・・
(谷口 恭)
2007年3月23日(金) 中国のエイズ活動家の憂い
Gao Yaojieという80代の女性医師であるエイズ活動家が、バイタル・ボイス(Vital Voices)という団体から賞を受け取るために渡米しようとしたところ中国政府に妨害されたというニュースを以前お伝えしました。この活動家は最終的には渡米をおこない、無事に受賞することができたのですが、授賞式の後、ワシントンでマスコミの取材に答え、中国の現状を嘆いています。詳細を3月13日のロイター通信が報道しています。
Gao氏は過去10年をエイズ活動に費やし、河南省のエイズ蔓延は行政に責任があることを指摘してきました。河南省の数千人もの農民たちは、貧困から売血せざるを得ず、不衛生な環境で自分たちの血液をお金に換えていましたが、献血がおこなわれた診療所は河南省が運営しているものも少なくなかったのです。
Gao氏は数千部ものエイズ啓蒙のパンフレットを作成し、バスの乗客、ナイトクラブで働く売春婦、農民などに配布してきました。しかしGao氏は充分な効果がなかった、と取材に答えています。
「私の行動は失敗だったんじゃないかって思います。10年以上もかけて活動をしてきたけどエイズの蔓延は防げなかったんだから・・・」
Gao氏の渡米は、当初中国当局は認めていませんでしたが、国際的なプレッシャーのおかげで最終的に渡米が許可されたという経緯があります。ヒラリー・クリントン氏が抗議をしたことも大きな要因だったようです。
「なぜ中国政府はあなたに渡米を認めようとしなかったのか」という質問に対して、Gao氏は困惑しながらも次のように答えています。
「それは私の口からは言いにくいんだけど・・・、結局のところ、役人たちは一般人の死や生命に無関心なのよ。彼らが興味をもっているのは、自分たちの権力、地位、報酬、そして省の評判だけなの・・・」
中国では売血行為は法的に禁止されています。にもかかわらず、Gao氏が省運営の診療所で売血行為がおこなわれていたことを告発した後も、罪に問われた役人はいません。
Gao氏は、エイズ蔓延に便乗したペテン師たちについても述べています。河南省には「エイズが治る」と嘘をついて効果のない薬を売りまわる人たちが大勢いるそうなのです。
Gao氏は中国の悪しき伝統である纏足(てんそく)をさせられており小さな足をしていますが、会見で黒いエスパドリーユを履いていたそうです。Gao氏は中国の混乱の歴史を80年以上に渡り見てきた人物です。文化大革命の頃は当局から追われた身となり自殺まで試みています。
Gao氏は2冊の本を出版することを検討しています。ひとつは、1996年から取り組んできたエイズとの闘いについて、もうひとつはエイズを罹患した人々への贈る言葉です。
「エイズになった人たちのことを多くの人に知ってもらいたいの。彼(女)らは、何も悪いことをしていないのに悲惨な生活を強いられているわ。子供たちは生命とは何かを知る前に死んでいくのよ・・・」
Gao氏は売血でエイズを発症したある家族のことを述べました。
「その家族の父親はすでに亡くなっていて、母親は父親を追うように首吊り自殺をしたの。その夫婦には小さなひとりの子供がいて、首をつっている母親を見つけたの。「降りてきてお母さん、おりてきてお母さん」と何度も叫びながらすでに死んでいる母親の足を引っ張ろうとするのよ・・・」
(谷口 恭)
参考:「中国のエイズ活動家が軟禁状態に」2007年2月13日
Gao氏は過去10年をエイズ活動に費やし、河南省のエイズ蔓延は行政に責任があることを指摘してきました。河南省の数千人もの農民たちは、貧困から売血せざるを得ず、不衛生な環境で自分たちの血液をお金に換えていましたが、献血がおこなわれた診療所は河南省が運営しているものも少なくなかったのです。
Gao氏は数千部ものエイズ啓蒙のパンフレットを作成し、バスの乗客、ナイトクラブで働く売春婦、農民などに配布してきました。しかしGao氏は充分な効果がなかった、と取材に答えています。
「私の行動は失敗だったんじゃないかって思います。10年以上もかけて活動をしてきたけどエイズの蔓延は防げなかったんだから・・・」
Gao氏の渡米は、当初中国当局は認めていませんでしたが、国際的なプレッシャーのおかげで最終的に渡米が許可されたという経緯があります。ヒラリー・クリントン氏が抗議をしたことも大きな要因だったようです。
「なぜ中国政府はあなたに渡米を認めようとしなかったのか」という質問に対して、Gao氏は困惑しながらも次のように答えています。
「それは私の口からは言いにくいんだけど・・・、結局のところ、役人たちは一般人の死や生命に無関心なのよ。彼らが興味をもっているのは、自分たちの権力、地位、報酬、そして省の評判だけなの・・・」
中国では売血行為は法的に禁止されています。にもかかわらず、Gao氏が省運営の診療所で売血行為がおこなわれていたことを告発した後も、罪に問われた役人はいません。
Gao氏は、エイズ蔓延に便乗したペテン師たちについても述べています。河南省には「エイズが治る」と嘘をついて効果のない薬を売りまわる人たちが大勢いるそうなのです。
Gao氏は中国の悪しき伝統である纏足(てんそく)をさせられており小さな足をしていますが、会見で黒いエスパドリーユを履いていたそうです。Gao氏は中国の混乱の歴史を80年以上に渡り見てきた人物です。文化大革命の頃は当局から追われた身となり自殺まで試みています。
Gao氏は2冊の本を出版することを検討しています。ひとつは、1996年から取り組んできたエイズとの闘いについて、もうひとつはエイズを罹患した人々への贈る言葉です。
「エイズになった人たちのことを多くの人に知ってもらいたいの。彼(女)らは、何も悪いことをしていないのに悲惨な生活を強いられているわ。子供たちは生命とは何かを知る前に死んでいくのよ・・・」
Gao氏は売血でエイズを発症したある家族のことを述べました。
「その家族の父親はすでに亡くなっていて、母親は父親を追うように首吊り自殺をしたの。その夫婦には小さなひとりの子供がいて、首をつっている母親を見つけたの。「降りてきてお母さん、おりてきてお母さん」と何度も叫びながらすでに死んでいる母親の足を引っ張ろうとするのよ・・・」
(谷口 恭)
参考:「中国のエイズ活動家が軟禁状態に」2007年2月13日
2007年3月17日(土) ドイツ人留学生が殺害された理由は・・・
3月15日、バンコクのラムカムヘン通り30のアパートに住む25歳の男性ドイツ人が殺害されているのが発見されました。
男性は全裸で出血した状態で倒れており、遺体の近くには血液の付着したダンベルが置かれていたことから、このダンベルが凶器とみられています。
男性は、2004年にラムカムヘン大学に入学するためにタイに来ていたようです。ラムカムヘン大学は、タイの国立大学で、希望すれば誰でも無試験で入学することができます。
**************
さて、この事件は、Bangkok Post, The Nationといったタイの英字新聞の情報ではここまでなのですが、バンコク週報はもう少し踏み込んだ報道をしています。
3月16日のバンコク週報によりますと、この男性は同性愛者で、部屋からはHIV陽性を示す診断書が見つかっています。その診断書の日付は昨年12月となっているそうです。
このため、警察では、被害者にエイズをうつされた者が恨みを晴らそうと部屋に押しかけたという線でも捜査をすすめるそうです。
男性は全裸で出血した状態で倒れており、遺体の近くには血液の付着したダンベルが置かれていたことから、このダンベルが凶器とみられています。
男性は、2004年にラムカムヘン大学に入学するためにタイに来ていたようです。ラムカムヘン大学は、タイの国立大学で、希望すれば誰でも無試験で入学することができます。
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さて、この事件は、Bangkok Post, The Nationといったタイの英字新聞の情報ではここまでなのですが、バンコク週報はもう少し踏み込んだ報道をしています。
3月16日のバンコク週報によりますと、この男性は同性愛者で、部屋からはHIV陽性を示す診断書が見つかっています。その診断書の日付は昨年12月となっているそうです。
このため、警察では、被害者にエイズをうつされた者が恨みを晴らそうと部屋に押しかけたという線でも捜査をすすめるそうです。
2007年3月16日(金) 世界銀行がタイの若者を危惧
タイの将来を担うべき若者が多くの危険にさらされている・・・
こんな発表を世界銀行がおこない、3月14日のバンコクポストが報道しています。世界銀行は、昨年(2006年)、新たにHIVに感染した15,000人のうち40%が若者であることも重要視しています。(注1)
世界銀行は、「知識が欠落しているために若者は脆弱な存在である」と述べ、過去にはそれなりに成功したエイズへの予防啓発はここ数年で後退していることを指摘しました。
タイでは、12歳から24歳の喫煙と飲酒が数年間に急増していることも問題となっています。世界銀行は、若者の不健康な生活を改めるにはアルコールとタバコの税率を上げるべきだと主張し、これらの税金が20%上がれば少なくとも10%の若者が飲酒と喫煙をやめるとする研究を引き合いに出しています。
また、タイでは充分な教育を受けていないことが原因で、いい仕事に就けていない若者が多いことも指摘されました。1994年から2002年にかけての中学校への入学率は、女性は9%上昇し71%となりましたが、男子はわずか3%上昇したのみで64%にすぎません。中学に進学できない理由は金銭上の問題であることが多いようです。(注2)
「タイ政府は教育予算を増額し、教師は教育の技術の向上に努めるべきで、タイの学校の教育レベルを上げなければならない。タイの最も質の高い学校は先進国の最も質の低い学校以下であることがわかった」、と世界銀行はコメントしています。
大学を卒業していても就職が見つからない理由として、コンピュータースキルや英語力に乏しいことがあげられています。また、およそ10万人の障害をもった子供たちや移民者は公的な教育システムを享受できない現状があることも問題視されています。
注1 バンコクポストは、「15,000人の若者がHIVに感染し、これが新規感染者の40%に相当する」としていますが、上に述べたように「新規感染者15,000のうち40%が若者」が正しいと思われます。原文は、more than 15,000 Thai youths
were infected with Aids in 2006, accounting for 40% of new patientsです。
注2 現在のタイは中学(secondary school)は一応義務教育です。
こんな発表を世界銀行がおこない、3月14日のバンコクポストが報道しています。世界銀行は、昨年(2006年)、新たにHIVに感染した15,000人のうち40%が若者であることも重要視しています。(注1)
世界銀行は、「知識が欠落しているために若者は脆弱な存在である」と述べ、過去にはそれなりに成功したエイズへの予防啓発はここ数年で後退していることを指摘しました。
タイでは、12歳から24歳の喫煙と飲酒が数年間に急増していることも問題となっています。世界銀行は、若者の不健康な生活を改めるにはアルコールとタバコの税率を上げるべきだと主張し、これらの税金が20%上がれば少なくとも10%の若者が飲酒と喫煙をやめるとする研究を引き合いに出しています。
また、タイでは充分な教育を受けていないことが原因で、いい仕事に就けていない若者が多いことも指摘されました。1994年から2002年にかけての中学校への入学率は、女性は9%上昇し71%となりましたが、男子はわずか3%上昇したのみで64%にすぎません。中学に進学できない理由は金銭上の問題であることが多いようです。(注2)
「タイ政府は教育予算を増額し、教師は教育の技術の向上に努めるべきで、タイの学校の教育レベルを上げなければならない。タイの最も質の高い学校は先進国の最も質の低い学校以下であることがわかった」、と世界銀行はコメントしています。
大学を卒業していても就職が見つからない理由として、コンピュータースキルや英語力に乏しいことがあげられています。また、およそ10万人の障害をもった子供たちや移民者は公的な教育システムを享受できない現状があることも問題視されています。
注1 バンコクポストは、「15,000人の若者がHIVに感染し、これが新規感染者の40%に相当する」としていますが、上に述べたように「新規感染者15,000のうち40%が若者」が正しいと思われます。原文は、more than 15,000 Thai youths
were infected with Aids in 2006, accounting for 40% of new patientsです。
注2 現在のタイは中学(secondary school)は一応義務教育です。
2007年3月5日(月) メキシコ、軍のHIV陽性者の除隊は違憲
2月28日のBBCニュースによりますと、メキシコの最高裁の判決で、軍のHIV陽性者が除隊されないことが決まりました。HIV陽性という理由で除隊にするのは違憲との判断を最高裁が下したというわけです。
この裁判はHIV陽性の11人の軍人がおこしたもので、メキシコ軍ではこれまでにおよそ300人のHIV陽性者が軍を除隊させられています。
メキシコ軍は、HIV陽性者は"役立たず(useless)"と主張し、軍の規約にはHIV陽性の者は除隊されることになっているそうです。今回の判決により、医学的に任務が遂行できない場合やエイズを発症しているといった場合を除けば、HIV陽性という理由で軍を除隊させることができなくなります。
*********
当然の判決だと思われますし、他国ではHIV陽性の軍人というのも珍しくないでしょう。ところで、日本の自衛隊ではどうなのでしょうか。HIV陽性という理由で除隊された自衛官というのは聞いたことがありませんが、不当な解雇はおこなわれていないと考えていいのでしょうか・・・。
(谷口 恭)
この裁判はHIV陽性の11人の軍人がおこしたもので、メキシコ軍ではこれまでにおよそ300人のHIV陽性者が軍を除隊させられています。
メキシコ軍は、HIV陽性者は"役立たず(useless)"と主張し、軍の規約にはHIV陽性の者は除隊されることになっているそうです。今回の判決により、医学的に任務が遂行できない場合やエイズを発症しているといった場合を除けば、HIV陽性という理由で軍を除隊させることができなくなります。
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当然の判決だと思われますし、他国ではHIV陽性の軍人というのも珍しくないでしょう。ところで、日本の自衛隊ではどうなのでしょうか。HIV陽性という理由で除隊された自衛官というのは聞いたことがありませんが、不当な解雇はおこなわれていないと考えていいのでしょうか・・・。
(谷口 恭)