HIV/AIDS関連情報

2006年11月25日(土) 中国、性と生殖に関する健康への援助

 中国が発展途上国の性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)を改善するための援助として、1千万元(約1億5千万円)に値するコンドームなどの製品をSouth-South Co-operation(SSC)に送ると表明していると11月9日付のCHINA DAILYは伝えています。

 SSCのメンバー国はすべて中国、インド、南アフリカのような発展途上国で、世界の人口の54%を占めています。中国はリプロダクティブ・ヘルス問題のマネジメントや調査経験を他の国々と情報交換したいという意向です。また、家族計画の分野でもっと多くの人材に研修を行いたいということです。

 国連の統計によると、少なくとも毎年50万人の女性が妊娠や出産関連の病気で亡くなっていて、大半が途上国の女性だそうです。そして毎年約3百万もの人々が亡くなるエイズに関しても、リプロダクティブ・ヘルスの状態が良くないことによってHIVに感染していると考えられています。

 過去30年間で、中国は家族計画やリプロダクティブ・ヘルスの改善に大きな成果を上げています。特に、1970年代に取り入れた「一人っ子政策」と呼ばれる家族計画対策によって食糧危機に陥らないよう人口増加を制限することができるようになりました。

 これが、発展途上国においては、中国の成功した政策としてとらえられていますし、今回のニュースのような援助という形となって現れています。

 しかし、中国の「一人っ子政策」は、人口抑制という面では成功しましたが、男児を生むことを善しとする中国人の習慣により、超音波検診で妊娠中に女児だということがわかった場合、人工中絶が行われることが多々あるといわれています。実際、中国の新生児の男女比はアンバランス(一説には116対100、通常は103から107対100)になっています。また、二人目が生まれてきたものの、罰則を恐れて届け出ることができずにいた両親のもとで、戸籍のない子供も増えており、今後大きな社会問題になるといわれています。

(大和さちよ・浅居雅彦)

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2006年11月23日(木) 中国のHIV陽性者は30%増加

 中国のHIVに感染した人は2006年に18万人を超え、前年末時点からは約30%増の高い伸びとなっていることが判明しました。11月22日付の現地英字紙、CHINA DAILYが報じています。

 同国衛生省が発表した最新統計によると、HIV陽性者数は18万3733人と前年末時点の14万4089人から約30%増加しました。薬物濫用と無防備な性行為が主な感染原因です。このうちエイズを発症した人は4万0667人となっています。

 同紙は「衛生当局は今回の陽性者増を調査精度が高まったことによるものとしているが、同時に感染が高リスクのグループから一般市民に広がりつつあるとも警告している」と報じました。

 国連が11月21日に発表した報告によると、中国では最近のHIV陽性者層の拡大にしたがって、女性の感染が増えているとのことです。

(浅居 雅彦)

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2006年11月22日(水) ハイチ、空腹はエイズの最大の敵

 発展途上国に広がるHIV/AIDS。貧困や啓発教育の欠如、社会的因習など様々な要因がその原因となっていますが、本日お伝えするのは「飢餓」です。「食べる」という人間の生存に最も基本的な要素の欠如は、HIV陽性者にも大きなダメージを与えるという報告です。

 11月11日付のAP通信では貧困とエイズによってやせ細り、動けなくなったハイチのMarie Lourdesさんの話をとりあげています。

 彼女には食べるものがなく、抗HIV薬を空っぽの胃に入れると胃がいたくなり、めまいと吐き気におそわれるのです。「食べ物がなくて一日に一度しか食事できないの」と彼女はいいます。

 彼女は現在51歳で、HIVに感染したのが発覚してから学校教師の職を辞めざるを得なくなり、お金を稼ぐ手段を失いました。飢餓と栄養失調はエイズ発症を防ぐ最大の敵で、発展途上国の何百万ものHIV陽性者が抗HIV薬より食べ物がまず必要であるといわれています。

 国連世界食糧計画(WFP)はハイチを始めとする50以上のHIV感染率の高い国々に食糧援助を行っています。適度に栄養がいきわたらないと、抗HIV薬を体内で消化・吸収することができません。世界中では、薬380万人ものエイズ患者が食糧援助を必要としていて、2008年までには640万人に数が増える妥当とWFPは予測しています。

(大和さちよ・浅居雅彦)

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2006年11月21日(火) アメリカ、何年も生きるHIV陽性者

 HIVに感染したアメリカ人は診断後平均24年生きることができ、この間にかかる医療費は60万ドル(7000万円)以上と高額です。

 米医療誌「メディカル・ケア」で発表されたこの調査をアトランタ発のAP通信は伝えています。

 年間の平均医療費は25,200ドル(297万円)で、1990年代の後半に予測した額より高い値となっています。また、平均寿命も、1990年代後半には10年間だと予測されていました。HIV/AIDSの医療技術の発展に伴って、HIV陽性者の平均寿命が上がっていることを示しています。

 これによって、アメリカではエイズは致命的な病気というより、慢性的な病気という認識に変わりつつあります。

(大和さちよ・浅居雅彦)

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2006年11月20日(月) タイ、03年の麻薬戦の再調査

 11月15日のnewsclip.beによりますと、タイ法務省は14日、03年に実施された※「対麻薬戦」について再調査を行うと発表しました。

 「対麻薬戦」については当Webサイト(06年5月31日「タイで薬物犯罪急増」同9月16日「薬物取締警察官がカラオケ客を射殺」)でもたびたびお伝えしましたが、麻薬業者ら2500-3000人が死亡したといわれております。死者の多くは軍・警察による超法規的処刑とみられ、国際社会から批判を浴びましたが、タクシン政権は、麻薬業者同士の口封じと主張していました。

 タクシン政権の失脚後、こういった前政権の「負の部分」に対する追求は深まっていくものと見られますが、取締りが緩くなると薬物犯罪が増加するタイの問題にも根深いものがあります。

※対麻薬戦
タクシン前政権の下、警察などが数万人に上る麻薬容疑者名簿を作成し、03年2月から一斉検挙を実施。10カ月間に約9万人を逮捕、覚せい剤4000万錠などを押収した。死者数は警察発表で1300人、一説には3000人以上と言われる。


(大和さちよ・浅居 雅彦)

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