HIV/AIDS関連情報

2006年5月31日(水) タイで薬物犯罪急増

 結局無効となった2006年4月2日におこなわれた総選挙後、一時休養をとっていたタクシン首相が5月22日に復帰しましたが、首相不在のこの2ヶ月間で、薬物犯罪が急増しているそうです。

 アサンプション大学が2006年5月に実施した、タイの青少年150万人以上を対象とした調査によりますと、「過去1ヶ月に覚醒剤を使用した」と回答した者が41,666人いたそうです。タクシン首相が2003年に「第1次薬物一掃運動」を開始してから3ヶ月後におこなわれた同規模の調査では、使用者はおよそ5,000人でしたから、当時と比較すると700%の増加ということになります。

 薬物制圧事務局の報告によりますと、最近は、若い世代、特に大学生が密売人となるケースが急増しているそうです。

 タクシン首相が(強引に)開始した「薬物一掃運動」は行き過ぎたきらいがあり、批判も多く、これまでに2500人から5000人以上が射殺されていると言われています。そのなかには冤罪もかなり含まれているのではないかという声もあります。

 ただ、タクシン首相のこの政策の結果、タイがかつてのような「ドラッグ天国」でなくなったのは事実です。日本の方がよほど覚醒剤が簡単に入手できる、という人も少なくありません。

 日本に比べるとタイでは、いわゆる「アブリ」ではなく、初めから静脈注射をする人が少なくありません。(これは日本で入手できる覚醒剤よりも純度が悪いからではないかと言われています。)

 覚醒剤を静脈注射する人たちのなかには、「回し打ち」するようになる者も出てきますから、以前のように「静脈注射によるHIVの感染」の増加が懸念されます。

(谷口 恭)