HIV/AIDS関連情報

2006年12月1日(金) オーストラリア、19歳の息子が母親の恋人を殺害

 HIV感染が原因で、19歳の青年が母親のボーイフレンドをナイフで殺害するという事件がシドニーのリヴァプールで起こりました。事件の真相はよく分からないのですが、詳細を11月23日のNEWS.COM.AUが報道していますのでご紹介いたします。

 警察の調べによると、11月22日の夜、シドニーのリヴァプール地区で、19歳の青年ジェイソン、母親のキャシー、ジェイソンの兄弟が一緒にいたところ、見知らぬ男性から母親に電話が入りました。その男性は、母親のボーイフレンドの24歳のスティーブンについての性的な話をおこない、スティーブンがHIV陽性であると告げました。

 それを聞いた母親は自分もスティーブンからHIVをうつされたに違いないと思い込み動転しました。すると、息子のジェイソンは、母親と兄弟をつれてスティーブンに会いに行きました。そして、逃げようとしたスティーブンを捕まえてナイフで胸部を7回刺して殺害したそうです。

 以上が警察及び検察の見解ですが、この事件には不可解な点がいくつかあります。

 まず、母親が離婚しているのかどうかが分かりませんし、ボーイフレンドが24歳というのも不思議な印象を受けます。スティーブンが実際にHIV陽性だったのかどうかも分かりませんし、母親がスティーブンからHIVに感染したのかどうかは明らかにされていません。

 また、容疑者のジェイソンは殺害を否定しています。ジェイソンは、スティーブンに会ったことは認めているものの、スティーブンは話し合いの場から逃げ出して見知らぬ男の車に乗り込んで逃走したと述べているようです。

 検察はジェイソンがスティーブンを刺殺したという目撃者の証言を得ていますが、ジェイソンの弁護士によると、その目撃者のガールフレンドとジェイソンは性的関係にあり、目撃者の証言には信憑性がないとしています。尚、殺害に使われたナイフは現在発見されていません。

 このように不可解な点が多いのですが、「HIV感染疑惑」が殺害につながった可能性が強く、HIVの「重み」を再認識させられる事件であると言えるでしょう。

(谷口 恭)

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2006年11月30日(木) 韓国、HIV新規感染増加とまらず

 11月20日のThe Nation(タイの英字新聞)が、韓国のHIV新規感染について報道していますのでお伝えします。

 韓国疾病管理局が発表した今年の1月から9月までのデータをみると、HIV新規感染は572人で、昨年同期比13%の上昇となります(昨年は506人)。このうち男性が527人です。

 年齢別データで目立つのは60歳以上のグループです。2000年にはこの期間(1月から9月)にHIV感染が判った60歳以上が10人だったのに対し、今年は56人にものぼっています。疾病管理局は、この理由として、「平均寿命が伸び、60歳を超えても性活動が活発であることが原因であろう」、と述べています。

 韓国ではこれまで累積で4,401人がHIVに罹患し、このうち806人が死亡しています。

 韓国のHIV感染の主な原因は「コンドームを用いない性行為(unprotected sex)」です。韓国のコンドーム使用率は23%(2005年)で、他国の40-60%という数字を大きく下回っています。これに対し、韓国当局は公共教育キャンペーンを施行することを発表しているようです。

(谷口 恭)

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2006年11月28日(火) タイ、HIV新規感染は若者に急増

 タイ保健省のソムヨス副大臣が、今年のタイのHIV感染の状況を発表し、11月24日のUPI通信が報じていますのでここにお伝えします。

 同副大臣によりますと、今年新たな感染が判ったおよそ1万5千人の感染者のうち、およそ4割が15歳から24歳の若者でした。このなかには15歳から19歳の母親も含まれており、全体の0.44%に相当します。

 また、HIV感染が判った妊婦のうちおよそ半数が10代の妊婦でした。

 さらに、今年は新たに軍に入隊した者の感染率が増加していることも特徴です。2005年には入隊者の0.4%がHIV陽性だったのに対し、今年(2006年)は0.5%が陽性だったようです。

(谷口 恭)

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2006年11月27日(月) スワッピングは奨励されるべきか

 「HIV蔓延を防ぐには結婚まで貞操を守るべきだ」、そのような提唱をし、ブッシュ政権はテキサス州で禁欲対策をおこないましたが、結果は、HIV感染が増えたというデータはないものの、禁欲対策をおこなったことによってかえって非童貞率が増えたという皮肉なものになりました。

 HIVの観点からではありませんが、このブッシュ政権の政策とはまったく逆の案を提唱している社会学者が中国にいます。

 その社会学者は、李銀河(Li Yinhe)氏という中国で最も有名な社会学者(女性)のひとりだそうです。11月6日のUPI通信によりますと、李銀河氏は「広州性文化展示会(Guangzhou Sex Culture Exposition)」という名の性のフォーラムで、「スワッピング(妻の交換)はノーマルな娯楽である」と発言し、これが物議をかもしています。

 これに対し、広東省人口家族計画委員会(Guangdong Provincial Population and Family Planning Committee)の幹部であるZhang Feng氏は、李銀河氏のこの発言に不快感を示し、「スワッピングによりHIVや他の性感染症が蔓延する恐れがあり、性のフォーラムでこのような発言をすること自体を認めることができない」、と発言しています。

 このフォーラムには初日だけで6万人以上が参加したそうです。

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 ブッシュ政権がおこなったような「禁欲」は非現実的でしょうが、スワッピングを奨励してHIVが蔓延するようなことがあれば問題です。しかし、予防対策をきちんととれば感染は防げるという意見もあるでしょうから、スワッピングを性感染の観点からのみで禁止することもナンセンスかもしれません。「性」の問題は本当にむつかしいことを実感します。

(谷口 恭)

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2006年11月26日(日) 住むのに適した国のランキング

 11月10日のNEWS.COM.AUの報道では、国連開発計画が発行する報告書(人間開発指標)によるとノルウエー、アイスランド、オーストラリア、アイルランドとスウェーデンは住むのに最適な国だとランキングされているのに対して、アフリカはエイズのせいで生活の質が悪化しているとのことです。

 日本はカナダとアメリカの間、7番目にランクインしています。

 報告書は国民一人当たりの収入だけでなく、教育のレベルや、健康や平均寿命なども考慮にいれてランキングしています。

 当然のことながら、トップにランクされている国々は高収入で、健康で、高い教育を受けることのできる環境にあります。例えばノルウェーの人々は、171番目ともっとも低いニジェールの人々より40倍も裕福だと報告されています。

 低い人間開発指標が出ている31の国々では、平均寿命はたったの46歳で、裕福な国々より32歳も低い値となっています。

 1990年以来、サブ・サハラアフリカの人間開発指標は停滞していて、経済的な理由もありますが、大半はエイズが原因だとレポートにあります。

 177カ国のリストはニジェールが最下位で、その上にランキングされているのがチャドやモザンビーク、コンゴなどのアフリカの国々となっています。

 尚、国連開発企画のこのランキングではタイは74位、他のアジア諸国は以下のように位置づけされています。

 韓国26位、中国81位、シンガポールが25位、ブルネイ34位、マレーシア61位、フィリピン84位、インドネシア108位、ベトナム109位、カンボジア129位、ミャンマー130位、ラオス133位。

(大和さちよ・浅居雅彦)

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