HIV/AIDS関連情報
2006年7月10日(月) 「援交カフェ」の前で日本人がタイ人に刺される
GINAの現地スタッフ(タイ人女性)からの情報によりますと、6月22日の深夜、バンコクのスクンビット通り沿いにある「援交カフェ」として有名なコーヒーショップの前で、日本人男性がタイ人男性にナイフで刺されたそうです。
このGINAの現地スタッフは、GINAの調査活動のため知人と待ち合わせるために、たまたまこの「援交カフェ」の前の屋台にいたそうなのですが、そこで突然、30代と思われる日本人男性とタイ人女性との言い合いが始まったそうです。何を言っているのかはっきりと聞き取れなかったそうですが、おそらくこのタイ人女性はこのコーヒーショップを利用しているフリーの売春婦で、支払いやサービスなど売春に関することでもめていたのではないかとのことです。
言い合いは次第にエスカレートしていき、しばらくすると、この女性のボーイフレンドと思わしきタイ人男性がやってきて、日本人に殴りかかったそうです。そして、ナイフを取り出し、腹部を一撃したそうです。
あたりは血の海となり、近くにいたタイ人女性3人がこの男性をタクシーに乗せて病院に運んだそうです。(タイでは救急車は公共のものではなく病院のものが一般的です。そのため日本のように気軽に救急車を呼ぶ慣習がありません。)
GINAスタッフによれば、翌日及び翌々日の新聞にこの事件が掲載されていなかったことから、おそらく死亡にはいたらなかったのではないか、とのことです。
このコーヒーショップは、実は、拙書『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』に登場する店です。同書で述べているように、私はタイの暗黒面をよく知る男性に案内されてこの店に入ったのですが、男性客の大半が日本人であることに驚きました。
現在GINAがタイでおこなっている調査のなかで、このコーヒーショップを利用している売春婦に対しても意識調査をおこなっています。まだ統計処理はできていませんが、かなりの女性が性感染症に罹患した経験があり、さらに定期的な検査は受けていないようです。
売春が善くないことは自明であったとしても簡単になくすことはできません。しかし、HIVを含めた性感染症に罹患するリスクが小さくないことは強く訴えたいと思います。同時に、今回の事件のようなリスクがあるということも覚えておいた方がいいでしょう。
(谷口 恭)
このGINAの現地スタッフは、GINAの調査活動のため知人と待ち合わせるために、たまたまこの「援交カフェ」の前の屋台にいたそうなのですが、そこで突然、30代と思われる日本人男性とタイ人女性との言い合いが始まったそうです。何を言っているのかはっきりと聞き取れなかったそうですが、おそらくこのタイ人女性はこのコーヒーショップを利用しているフリーの売春婦で、支払いやサービスなど売春に関することでもめていたのではないかとのことです。
言い合いは次第にエスカレートしていき、しばらくすると、この女性のボーイフレンドと思わしきタイ人男性がやってきて、日本人に殴りかかったそうです。そして、ナイフを取り出し、腹部を一撃したそうです。
あたりは血の海となり、近くにいたタイ人女性3人がこの男性をタクシーに乗せて病院に運んだそうです。(タイでは救急車は公共のものではなく病院のものが一般的です。そのため日本のように気軽に救急車を呼ぶ慣習がありません。)
GINAスタッフによれば、翌日及び翌々日の新聞にこの事件が掲載されていなかったことから、おそらく死亡にはいたらなかったのではないか、とのことです。
このコーヒーショップは、実は、拙書『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』に登場する店です。同書で述べているように、私はタイの暗黒面をよく知る男性に案内されてこの店に入ったのですが、男性客の大半が日本人であることに驚きました。
現在GINAがタイでおこなっている調査のなかで、このコーヒーショップを利用している売春婦に対しても意識調査をおこなっています。まだ統計処理はできていませんが、かなりの女性が性感染症に罹患した経験があり、さらに定期的な検査は受けていないようです。
売春が善くないことは自明であったとしても簡単になくすことはできません。しかし、HIVを含めた性感染症に罹患するリスクが小さくないことは強く訴えたいと思います。同時に、今回の事件のようなリスクがあるということも覚えておいた方がいいでしょう。
(谷口 恭)
2006年7月10日(月) バンコクで売春婦が摘発
バンコク週報1226号(2006年7月10日~2006年7月16日)によりますと、7月5日に、バンコク首都警察が、バンコク内トンブリ地区の飲食店で、店に来た客に売春をもちかけていたフリーの売春婦5人を逮捕したそうです。逮捕のきっかけは客からの通報で、逮捕された売春婦5人の年齢は18歳から20歳だったそうです。
タイでは、一応は、売春は違法ということになっていますが、拙レポート「南タイの売春事情」でもご紹介しましたように、地域の保健師が置屋で健康管理しているという実情もあり、また、拙書『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』でも述べているように、フリーの売春婦も含めると、タイの売春婦の総数は最大で100万人にもなるとの試算もあり、どうも売春禁止法の適用は曖昧なようです。
しかしながら、今回のように客からの通報があった場合は、警察も動かざるを得ないようです。
また、GINA現地スタッフ(タイ人)の情報によりますと、売春目的の外国人とタイ売春婦との出会いの場として有名ないわゆる「援助交際スポット」には、定期的に警察の視察が入るそうです。
GINAとしては、警察による摘発と同時に、フリーの売春婦に対する性感染症の知識の啓発や定期的な検査受診を勧めることが重要だと考えていますが、我々の知る限り現時点ではそのような世論はありません。将来的なGINAの活動として考えていきたく思います。
(谷口 恭)
タイでは、一応は、売春は違法ということになっていますが、拙レポート「南タイの売春事情」でもご紹介しましたように、地域の保健師が置屋で健康管理しているという実情もあり、また、拙書『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』でも述べているように、フリーの売春婦も含めると、タイの売春婦の総数は最大で100万人にもなるとの試算もあり、どうも売春禁止法の適用は曖昧なようです。
しかしながら、今回のように客からの通報があった場合は、警察も動かざるを得ないようです。
また、GINA現地スタッフ(タイ人)の情報によりますと、売春目的の外国人とタイ売春婦との出会いの場として有名ないわゆる「援助交際スポット」には、定期的に警察の視察が入るそうです。
GINAとしては、警察による摘発と同時に、フリーの売春婦に対する性感染症の知識の啓発や定期的な検査受診を勧めることが重要だと考えていますが、我々の知る限り現時点ではそのような世論はありません。将来的なGINAの活動として考えていきたく思います。
(谷口 恭)
2006年6月27日(火) 仏男性が腸の中にヘロイン
バンコク週報2006年6月26日号によりますと、サムイ島のラマイビーチでオープンバーを経営するフランス人の男性(53歳)が、消化管にヘロインを隠しもっていることが病院で明らかになったそうです。
腹部に激痛をうったえたその男性が病院を受診したため、レントゲンでお腹を撮影したところ、消化管内部にヘロインがあることが確認されたようです。
その男性は、スイスから戻ってきたばかりであることから、警察は薬物密輸の容疑で捜査を進めているとのことです。
以前は、タイで流通しているヘロイン(麻薬)は、タイ北部のゴールデントライアングル由来であると言われていました。北部の、主に高地民族が生活のために麻薬を製造していたのです。この地域の麻薬は良質で安価なため、ヘロイン目的でタイに渡航する人も大勢いました。さらに、高地民族のなかにも製造・販売だけでなく、自らが麻薬に手を出してしまう者が大勢いました。(詳しくは、『熱帯に生きる』谷口巳三郎著参照)
その後、タイ政府が徹底的な麻薬撲滅政策をとったために、現在ではゴールデントライアングルでの麻薬製造はほとんどなくなり、タイで麻薬を入手するのはむつかしいと言われています。
しかし、このフランス人のように海外からの仕入れがおこなわれるようになれば、タイが麻薬王国に逆戻りしてしまう可能性があります。
ヘロインは、覚醒剤などに比べても容易に耐性ができやすいために、最初はアブリで満足できていても、そのうちに静脈注射に移行することになります。そして、危険性は分かっていても、そのうちに注射の「回し打ち」をするようになり、HIVを含めた感染症に罹患するのです。
ちなみに、もしもこの男性が腹痛を我慢し、ヘロインを入れていた袋が破れれば数時間のうちに死亡した可能性が強いと思われます。
ときどき、大麻を入れたコンドームを飲みこんだ密売人が、機内でコンドームが破れたために、大量の大麻が体内に吸収され立てなくなることから、密輸が発覚し逮捕という事件が日本でも報道されていますが、大麻だからいいものの、覚醒剤や麻薬でこれをやると命を失うことになります。
(谷口 恭)
腹部に激痛をうったえたその男性が病院を受診したため、レントゲンでお腹を撮影したところ、消化管内部にヘロインがあることが確認されたようです。
その男性は、スイスから戻ってきたばかりであることから、警察は薬物密輸の容疑で捜査を進めているとのことです。
以前は、タイで流通しているヘロイン(麻薬)は、タイ北部のゴールデントライアングル由来であると言われていました。北部の、主に高地民族が生活のために麻薬を製造していたのです。この地域の麻薬は良質で安価なため、ヘロイン目的でタイに渡航する人も大勢いました。さらに、高地民族のなかにも製造・販売だけでなく、自らが麻薬に手を出してしまう者が大勢いました。(詳しくは、『熱帯に生きる』谷口巳三郎著参照)
その後、タイ政府が徹底的な麻薬撲滅政策をとったために、現在ではゴールデントライアングルでの麻薬製造はほとんどなくなり、タイで麻薬を入手するのはむつかしいと言われています。
しかし、このフランス人のように海外からの仕入れがおこなわれるようになれば、タイが麻薬王国に逆戻りしてしまう可能性があります。
ヘロインは、覚醒剤などに比べても容易に耐性ができやすいために、最初はアブリで満足できていても、そのうちに静脈注射に移行することになります。そして、危険性は分かっていても、そのうちに注射の「回し打ち」をするようになり、HIVを含めた感染症に罹患するのです。
ちなみに、もしもこの男性が腹痛を我慢し、ヘロインを入れていた袋が破れれば数時間のうちに死亡した可能性が強いと思われます。
ときどき、大麻を入れたコンドームを飲みこんだ密売人が、機内でコンドームが破れたために、大量の大麻が体内に吸収され立てなくなることから、密輸が発覚し逮捕という事件が日本でも報道されていますが、大麻だからいいものの、覚醒剤や麻薬でこれをやると命を失うことになります。
(谷口 恭)
2006年6月27日(火) WHO駐タイ代表が左遷された理由
「バンコク週報」第1224号(2006年6月26日~2006年7月2日)によりますと、世界保健機関(WHO)の駐タイ代表が、米政府の圧力で、インドに左遷されたことが話題を呼んでいるそうです。
これは、駐タイ代表が、「米政府の主張する知的所有権保護を受け入れてタイが自由貿易協定を締結すれば、医薬品を低価格で製造・販売できなくなり、タイのHIV感染者は割高な薬を買わされる羽目になる」、と指摘したために、米国の国連大使がWHO事務局長に抗議したことがきっかけとなったそうです。
知的所有権というのもたしかに大切なのでしょうが、こと医薬品、とりわけ抗HIV薬については「例外」を認めてもらうわけにはいかないのでしょうか。
この(元)駐タイ代表が指摘しているように、タイが米政府の主張する知的所有権保護を受け入れれば、現在のように抗HIV薬がタイの患者さんの元に届かなくなるのは明らかです。
米政府の言いなりとなれば、おそらく患者さんの毎月の医療費は最低でも数万円となるでしょう。これは、タイの多くのHIV陽性の方の月収以上の金額ですから、効果のある薬が存在するのにもかかわらず、合併症に苦しみながら命を失うことになってしまいます。
知的所有権の恩恵に預かれる人は、巨額な富を手にすることになるのでしょうが、そのせいで助かる命も助からなくなるのです。知的所有権の所有者たちは、いったいどんな気持ちで薬の開発に取り組んだのでしょうか・・・。
(谷口 恭)
これは、駐タイ代表が、「米政府の主張する知的所有権保護を受け入れてタイが自由貿易協定を締結すれば、医薬品を低価格で製造・販売できなくなり、タイのHIV感染者は割高な薬を買わされる羽目になる」、と指摘したために、米国の国連大使がWHO事務局長に抗議したことがきっかけとなったそうです。
知的所有権というのもたしかに大切なのでしょうが、こと医薬品、とりわけ抗HIV薬については「例外」を認めてもらうわけにはいかないのでしょうか。
この(元)駐タイ代表が指摘しているように、タイが米政府の主張する知的所有権保護を受け入れれば、現在のように抗HIV薬がタイの患者さんの元に届かなくなるのは明らかです。
米政府の言いなりとなれば、おそらく患者さんの毎月の医療費は最低でも数万円となるでしょう。これは、タイの多くのHIV陽性の方の月収以上の金額ですから、効果のある薬が存在するのにもかかわらず、合併症に苦しみながら命を失うことになってしまいます。
知的所有権の恩恵に預かれる人は、巨額な富を手にすることになるのでしょうが、そのせいで助かる命も助からなくなるのです。知的所有権の所有者たちは、いったいどんな気持ちで薬の開発に取り組んだのでしょうか・・・。
(谷口 恭)
2006年6月27日(火) 「新型HIV」タイでも疑い例
「バンコク週報」第1224号(2006年6月26日~2006年7月2日)によりますと、6月20日にバンコクのシリラート病院で、女性患者がこれまでタイで見つかったことのないタイプのHIVに感染していることが確認されており、一部のマスコミが「新型HIVに感染」と報道しているそうです。
「新型HIV」というのは、2004年にニューヨークで初めて発見された新しいHIVで、通常のHIVがエイズを発症するまでにおよそ10年の期間があるのに対し、「新型HIV」は感染からわずか数ヶ月でエイズを発症するのが特徴です。さらに、既存の抗HIV薬のほとんどが効かないと言われています。
今回のバンコクの女性から見つかったHIVは、たしかにこれまでにないHIVですが、「新型HIV」とは断定されていません。シリラート病院のプラサート教授は、「ウイルスの変異は一般的なこと」として、過剰反応を控えるよう呼びかけているそうです。
また、複数のタイ人女性がアフリカで売春を強要され、「新型HIV」に感染した後タイに帰国した、との報道が一部のマスコミでなされたようですが、その真偽はまだ確認されていません。
「新型HIV」がアフリカで流行しつつあるとの報道があるため、タワット保健省伝染病予防局長は、「タイではまだ確認されていない」とコメントしています。
タイでもようやく、HIVが「死に至る病」ではないことが認識されつつあります。そのため、感染者がいわれのない差別を受けることが以前に比べると少しは減ってきています。
ここで、現在のところ、なす術のない「新型HIV」が蔓延すると、再び悪夢の到来となってしまいます。できる限りの対策をとり、「新型HIV」の蔓延を阻止しなければならないのと同時に、過剰な報道によってスティグマが世間に流布することを防がなければなりません。
(谷口 恭)
「新型HIV」というのは、2004年にニューヨークで初めて発見された新しいHIVで、通常のHIVがエイズを発症するまでにおよそ10年の期間があるのに対し、「新型HIV」は感染からわずか数ヶ月でエイズを発症するのが特徴です。さらに、既存の抗HIV薬のほとんどが効かないと言われています。
今回のバンコクの女性から見つかったHIVは、たしかにこれまでにないHIVですが、「新型HIV」とは断定されていません。シリラート病院のプラサート教授は、「ウイルスの変異は一般的なこと」として、過剰反応を控えるよう呼びかけているそうです。
また、複数のタイ人女性がアフリカで売春を強要され、「新型HIV」に感染した後タイに帰国した、との報道が一部のマスコミでなされたようですが、その真偽はまだ確認されていません。
「新型HIV」がアフリカで流行しつつあるとの報道があるため、タワット保健省伝染病予防局長は、「タイではまだ確認されていない」とコメントしています。
タイでもようやく、HIVが「死に至る病」ではないことが認識されつつあります。そのため、感染者がいわれのない差別を受けることが以前に比べると少しは減ってきています。
ここで、現在のところ、なす術のない「新型HIV」が蔓延すると、再び悪夢の到来となってしまいます。できる限りの対策をとり、「新型HIV」の蔓延を阻止しなければならないのと同時に、過剰な報道によってスティグマが世間に流布することを防がなければなりません。
(谷口 恭)