HIV/AIDS関連情報

2006年6月27日(火) 「新型HIV」タイでも疑い例

 「バンコク週報」第1224号(2006年6月26日~2006年7月2日)によりますと、6月20日にバンコクのシリラート病院で、女性患者がこれまでタイで見つかったことのないタイプのHIVに感染していることが確認されており、一部のマスコミが「新型HIVに感染」と報道しているそうです。

 「新型HIV」というのは、2004年にニューヨークで初めて発見された新しいHIVで、通常のHIVがエイズを発症するまでにおよそ10年の期間があるのに対し、「新型HIV」は感染からわずか数ヶ月でエイズを発症するのが特徴です。さらに、既存の抗HIV薬のほとんどが効かないと言われています。

 今回のバンコクの女性から見つかったHIVは、たしかにこれまでにないHIVですが、「新型HIV」とは断定されていません。シリラート病院のプラサート教授は、「ウイルスの変異は一般的なこと」として、過剰反応を控えるよう呼びかけているそうです。
 
 また、複数のタイ人女性がアフリカで売春を強要され、「新型HIV」に感染した後タイに帰国した、との報道が一部のマスコミでなされたようですが、その真偽はまだ確認されていません。

 「新型HIV」がアフリカで流行しつつあるとの報道があるため、タワット保健省伝染病予防局長は、「タイではまだ確認されていない」とコメントしています。

 タイでもようやく、HIVが「死に至る病」ではないことが認識されつつあります。そのため、感染者がいわれのない差別を受けることが以前に比べると少しは減ってきています。

 ここで、現在のところ、なす術のない「新型HIV」が蔓延すると、再び悪夢の到来となってしまいます。できる限りの対策をとり、「新型HIV」の蔓延を阻止しなければならないのと同時に、過剰な報道によってスティグマが世間に流布することを防がなければなりません。

(谷口 恭)