HIV/AIDS関連情報

2006年6月27日(火) WHO駐タイ代表が左遷された理由

 「バンコク週報」第1224号(2006年6月26日~2006年7月2日)によりますと、世界保健機関(WHO)の駐タイ代表が、米政府の圧力で、インドに左遷されたことが話題を呼んでいるそうです。
 
 これは、駐タイ代表が、「米政府の主張する知的所有権保護を受け入れてタイが自由貿易協定を締結すれば、医薬品を低価格で製造・販売できなくなり、タイのHIV感染者は割高な薬を買わされる羽目になる」、と指摘したために、米国の国連大使がWHO事務局長に抗議したことがきっかけとなったそうです。

 知的所有権というのもたしかに大切なのでしょうが、こと医薬品、とりわけ抗HIV薬については「例外」を認めてもらうわけにはいかないのでしょうか。

 この(元)駐タイ代表が指摘しているように、タイが米政府の主張する知的所有権保護を受け入れれば、現在のように抗HIV薬がタイの患者さんの元に届かなくなるのは明らかです。
 
 米政府の言いなりとなれば、おそらく患者さんの毎月の医療費は最低でも数万円となるでしょう。これは、タイの多くのHIV陽性の方の月収以上の金額ですから、効果のある薬が存在するのにもかかわらず、合併症に苦しみながら命を失うことになってしまいます。

 知的所有権の恩恵に預かれる人は、巨額な富を手にすることになるのでしょうが、そのせいで助かる命も助からなくなるのです。知的所有権の所有者たちは、いったいどんな気持ちで薬の開発に取り組んだのでしょうか・・・。

(谷口 恭)