HIV/AIDS関連情報
2006年8月22日(火) HIV/AIDS新規報告23人 昨年の倍増 兵庫県上半期
8月19日の神戸新聞によりますと、兵庫県内で今年上半期のHIV陽性者とエイズ患者が昨年一年間の報告数に迫る23人になっていることが、県のまとめで分かったとのことです。このうち、半数近い10人がエイズ患者として報告されています。
県内の新規報告数(HIV陽性+エイズ患者)は2001年に初めて20人を記録。2003年から4年連続で20人以上となっており、昨年は26人。今年は半年でこれに迫る倍増ペースとなっています。また、エイズ患者として報告された数は昨年初めて10人となり、今年はすでに6月までに10人を記録しています。新規報告数全体の半数近くを占め、割合も増加する傾向にあるといいます。
23人を感染原因別にみると、「同性間の性的接触」が12人、「両性間の性的接触」が1人、「異性間の性的接触」が4人。薬物注射と母子感染は、過去にそれぞれ1人および2人の報告がありますが、今回の23人には含まれていなかったようです。海外で感染したとみられるのは2人で、感染地域不明が2人でした。年齢別では30代が最多の12人、20代と50代が4人。女性は1人だけでした。
県は、「気付かないままエイズ患者になるのを防ぐには、発症まで10年程度といわれる感染段階での早期発見が重要」とし、県内の健康福祉事務所(保健所)でのHIV抗体受検を呼び掛けています。
HIV陽性者が急激に増加していることも問題ですが、エイズ患者として報告された人数が新規報告数の半数近くを占めていることに驚きます。8月20日付の当websiteのニュース、「『たかじんのそこまで言って委員会 』にてAIDSがテーマに」の中で、AIDSを発症して初めて、自分がHIVに感染していた事実を知る人も増えているということをお伝えしましたが、それを裏付けるようなデータです。
(浅居 雅彦)
県内の新規報告数(HIV陽性+エイズ患者)は2001年に初めて20人を記録。2003年から4年連続で20人以上となっており、昨年は26人。今年は半年でこれに迫る倍増ペースとなっています。また、エイズ患者として報告された数は昨年初めて10人となり、今年はすでに6月までに10人を記録しています。新規報告数全体の半数近くを占め、割合も増加する傾向にあるといいます。
23人を感染原因別にみると、「同性間の性的接触」が12人、「両性間の性的接触」が1人、「異性間の性的接触」が4人。薬物注射と母子感染は、過去にそれぞれ1人および2人の報告がありますが、今回の23人には含まれていなかったようです。海外で感染したとみられるのは2人で、感染地域不明が2人でした。年齢別では30代が最多の12人、20代と50代が4人。女性は1人だけでした。
県は、「気付かないままエイズ患者になるのを防ぐには、発症まで10年程度といわれる感染段階での早期発見が重要」とし、県内の健康福祉事務所(保健所)でのHIV抗体受検を呼び掛けています。
HIV陽性者が急激に増加していることも問題ですが、エイズ患者として報告された人数が新規報告数の半数近くを占めていることに驚きます。8月20日付の当websiteのニュース、「『たかじんのそこまで言って委員会 』にてAIDSがテーマに」の中で、AIDSを発症して初めて、自分がHIVに感染していた事実を知る人も増えているということをお伝えしましたが、それを裏付けるようなデータです。
(浅居 雅彦)
2006年8月20日(日) 「たかじんのそこまで言って委員会 」にてAIDSがテーマに
8月13日のよみうりテレビ「たかじんのそこまで言って委員会」でAIDSが討論のテーマとして、取り上げられていました。この番組は、司会のやしきたかじんさんがゲストを招いて旬の社会問題を本音、毒舌で討論するという関西では人気の番組です。
「AIDS(HIV)が発見されてから今年で25年たったが、先進国では唯一、日本はHIV陽性者が増え続けており、原因のひとつに若者の性の乱れがある」と題しての討論でした。
番組を観ていて、各ゲストのHIV/AIDSへの理解はオヤッと思うこともありましたが、最近放送メディアでは頻度の少なくなったHIV/AIDSが、バラエティ番組で取り上げられたことに関しては評価できると思いました。
この番組のHP(http://www.takajin.tv/)に、「あなたが、今後のエイズ対策で『忘れてはいけない』と思うことはなんですか?」と題して一般の方からアンケートを取っています。これを読んでみますと、意外なことに「風俗産業やAV業界を取り締まる」「HIV定期検査の義務付け」「性教育の強化で貞操観念を身につけさせる」などの保守的かつ、高圧的な意見が多く散見されました。
HIVはセックスが感染ルートのひとつです。性行為は誰もが行うものであり、法律や社会道徳で禁止や規制をすることはできません。トゥーランドットのアリアではありませんが、「誰も寝てはならない」というわけにはいかないのです。
GINAとしては、HIV/AIDSに対する正しい知識を、すべての人に理解して欲しいと願います。
現に、AIDSを発症して初めて、自分がHIVに感染していた事実を知る人も増えています。一般的に、HIVに感染してからAIDSを発症するまでには10年ほどの潜伏期間があることが多く、発症してからでは、どの性行為で感染したのか特定できず、さらに現在の配偶者にも感染させていたということが少なくないのです。
HIVは誰にでも感染する可能性があります。
もし、今までに、フェラチオ、クンリニングスも含めてコンドームなしの性行為の経験がある方はすべて、HIV検査をすべき十分な理由があると言えるのです。
(浅居 雅彦)
「AIDS(HIV)が発見されてから今年で25年たったが、先進国では唯一、日本はHIV陽性者が増え続けており、原因のひとつに若者の性の乱れがある」と題しての討論でした。
番組を観ていて、各ゲストのHIV/AIDSへの理解はオヤッと思うこともありましたが、最近放送メディアでは頻度の少なくなったHIV/AIDSが、バラエティ番組で取り上げられたことに関しては評価できると思いました。
この番組のHP(http://www.takajin.tv/)に、「あなたが、今後のエイズ対策で『忘れてはいけない』と思うことはなんですか?」と題して一般の方からアンケートを取っています。これを読んでみますと、意外なことに「風俗産業やAV業界を取り締まる」「HIV定期検査の義務付け」「性教育の強化で貞操観念を身につけさせる」などの保守的かつ、高圧的な意見が多く散見されました。
HIVはセックスが感染ルートのひとつです。性行為は誰もが行うものであり、法律や社会道徳で禁止や規制をすることはできません。トゥーランドットのアリアではありませんが、「誰も寝てはならない」というわけにはいかないのです。
GINAとしては、HIV/AIDSに対する正しい知識を、すべての人に理解して欲しいと願います。
現に、AIDSを発症して初めて、自分がHIVに感染していた事実を知る人も増えています。一般的に、HIVに感染してからAIDSを発症するまでには10年ほどの潜伏期間があることが多く、発症してからでは、どの性行為で感染したのか特定できず、さらに現在の配偶者にも感染させていたということが少なくないのです。
HIVは誰にでも感染する可能性があります。
もし、今までに、フェラチオ、クンリニングスも含めてコンドームなしの性行為の経験がある方はすべて、HIV検査をすべき十分な理由があると言えるのです。
(浅居 雅彦)
2006年8月19日(土) 依然真相不明―河南省のエイズ村―
8月18日のロイター通信によりますと、中国河南省(Henan)の共産党幹部が、「エイズ対策に用意された金を横領した」罪で逮捕されました。その金額はおよそ150万円で、横領したという確かな証拠は見つかっていないそうです。
この事件の真相はともかく、この河南省というところは、依然から「エイズ村」が存在すると言われていました。
ロイターの報道にもあるように、この貧困地域では1990年代まで、いわゆる「売血」がおこなわれており、1回で50元(約730円)の現金収入が得られることから貧困にあえぐ村人は列をつくったと言われています。注射針の使いまわしにより、数千人の人がHIVに感染し、なかには、住民の過半数が売血でHIVに感染した地域がある、との噂もあります。
中国当局は否定し続けていますが、90年代後半あたりから、この噂は世界中を駆け巡りました。そして、この噂がさらに大きくなったのは、取材に行ったジャーナリストが次々と行方不明となったからです。私自身は、これを「噂」でしか聞いたことがなく、信頼できるメディアの報道は見たことがありませんでしたが、今回のロイターの記事では、この噂を裏付けるかのように、「拘束(detain)され脅し(harasses)をうけたジャーナリストがいる」、と報道されています。
現在、中国のHIV陽性者はおよそ65万人とされていますが、実際は、河南省だけで100万人を超えると見ている専門家は少なくありません。
ちなみに、河南省とは黄河の南に位置し、1億人近い人口を抱えています。7月28日付けの「中国政府、保証を求めたエイズ患者を逮捕」という記事も河南省での出来事です。
(谷口 恭)
この事件の真相はともかく、この河南省というところは、依然から「エイズ村」が存在すると言われていました。
ロイターの報道にもあるように、この貧困地域では1990年代まで、いわゆる「売血」がおこなわれており、1回で50元(約730円)の現金収入が得られることから貧困にあえぐ村人は列をつくったと言われています。注射針の使いまわしにより、数千人の人がHIVに感染し、なかには、住民の過半数が売血でHIVに感染した地域がある、との噂もあります。
中国当局は否定し続けていますが、90年代後半あたりから、この噂は世界中を駆け巡りました。そして、この噂がさらに大きくなったのは、取材に行ったジャーナリストが次々と行方不明となったからです。私自身は、これを「噂」でしか聞いたことがなく、信頼できるメディアの報道は見たことがありませんでしたが、今回のロイターの記事では、この噂を裏付けるかのように、「拘束(detain)され脅し(harasses)をうけたジャーナリストがいる」、と報道されています。
現在、中国のHIV陽性者はおよそ65万人とされていますが、実際は、河南省だけで100万人を超えると見ている専門家は少なくありません。
ちなみに、河南省とは黄河の南に位置し、1億人近い人口を抱えています。7月28日付けの「中国政府、保証を求めたエイズ患者を逮捕」という記事も河南省での出来事です。
(谷口 恭)
2006年8月19日(土) HIV予防に割礼はどこまで有効か
The Global Fund to AIDS(世界エイズ基金)が、「割礼でHIVに感染するリスクを60%減らすことができる」、という発表をおこない、先月末あたりから世界中のメディアが報道しています。
GINAとしては、この発表は設立趣旨にそれほど合致しないと判断したために、当websiteでの紹介を見合わせていましたが、先日世界で最も権威ある医学誌のひとつであるThe Lancetもこの発表を掲載し、さらに、トロントでおこなわれた第16回国際エイズ会議でも議論を呼んだことから、このコーナーで報告することにしました。
同基金によりますと、「高い割礼率の西アフリカ及び中央アフリカではHIV陽性率が低く、その逆に、低い割礼率の南部アフリカ及び東アフリカでは陽性率が高い」、そうです。この理由は、「割礼をすることにより、陰茎亀頭が硬くなり、このためウイルスが浸透しにくくなるのではないか」、と考えられているそうです。もしも、アフリカに住むすべての男性が割礼をすれば、およそ600万人もの男性が新たにHIVに感染することが防げる、と同基金では試算しています。
UKの公的機関National Aids Trustの最高責任者であるDeborah Jackが発表したコメントが、8月9日のThe Independent(Online Edition)で報道されています。「割礼がHIV感染を減少させることは事実だとしても、割礼した者のリスクがなくなるわけではない。割礼はコンドームに代わる予防法ではない」、と彼女は警告しています。
GINAとしては、このコメントを全面的に支持したいと思います。
第16回国際エイズ会議で話題を呼んだものに、性交前に女性の腟に塗布することによってHIVを死滅させることのできるマイクロビサイドと呼ばれるジェルがあります。このジェルの有用性は科学的に確かなもののようですが、100%確実なわけではありません。割礼と同様、過信は禁物です。それに、HIV以外の性感染症のリスクが減少するわけではありません。
よく、患者さんから聞かれる質問に、「HIV陽性者と性行為をして自分に感染する可能性は何パーセントくらいですか」、というのがあります。こういう数字はたしかに研究発表されていますが、公衆衛生学的に議論する際に有用であるに過ぎません。個人の行動という観点から考えたときには、ほとんど意味がないのです。
なぜなら、実際にHIVに感染した人に話を聞くと、ただ一度の性行為で感染したと思われる人がいくらでもいるからです。要するに、一個人でみたときには、HIVに感染する確率は、0%か100%のどちらかしかないのです。
(谷口 恭)
GINAとしては、この発表は設立趣旨にそれほど合致しないと判断したために、当websiteでの紹介を見合わせていましたが、先日世界で最も権威ある医学誌のひとつであるThe Lancetもこの発表を掲載し、さらに、トロントでおこなわれた第16回国際エイズ会議でも議論を呼んだことから、このコーナーで報告することにしました。
同基金によりますと、「高い割礼率の西アフリカ及び中央アフリカではHIV陽性率が低く、その逆に、低い割礼率の南部アフリカ及び東アフリカでは陽性率が高い」、そうです。この理由は、「割礼をすることにより、陰茎亀頭が硬くなり、このためウイルスが浸透しにくくなるのではないか」、と考えられているそうです。もしも、アフリカに住むすべての男性が割礼をすれば、およそ600万人もの男性が新たにHIVに感染することが防げる、と同基金では試算しています。
UKの公的機関National Aids Trustの最高責任者であるDeborah Jackが発表したコメントが、8月9日のThe Independent(Online Edition)で報道されています。「割礼がHIV感染を減少させることは事実だとしても、割礼した者のリスクがなくなるわけではない。割礼はコンドームに代わる予防法ではない」、と彼女は警告しています。
GINAとしては、このコメントを全面的に支持したいと思います。
第16回国際エイズ会議で話題を呼んだものに、性交前に女性の腟に塗布することによってHIVを死滅させることのできるマイクロビサイドと呼ばれるジェルがあります。このジェルの有用性は科学的に確かなもののようですが、100%確実なわけではありません。割礼と同様、過信は禁物です。それに、HIV以外の性感染症のリスクが減少するわけではありません。
よく、患者さんから聞かれる質問に、「HIV陽性者と性行為をして自分に感染する可能性は何パーセントくらいですか」、というのがあります。こういう数字はたしかに研究発表されていますが、公衆衛生学的に議論する際に有用であるに過ぎません。個人の行動という観点から考えたときには、ほとんど意味がないのです。
なぜなら、実際にHIVに感染した人に話を聞くと、ただ一度の性行為で感染したと思われる人がいくらでもいるからです。要するに、一個人でみたときには、HIVに感染する確率は、0%か100%のどちらかしかないのです。
(谷口 恭)
2006年8月19日(土) エイズ対策での医療従事者不足、世界で400万人超
8月16日のnikkei netによりますと、エイズ対策で不足している医療・保健従事者は世界で400万人を超える――。世界保健機関(WHO)などは15日、カナダのトロントで開催中の国際エイズ会議でこんな試算結果を報告しました。
サハラ砂漠以南のアフリカや南アジアなど世界57カ国が深刻な人材不足に直面していると、WHOは指摘しています。これらの国々の人口は世界の1割強にすぎませんが、エイズ患者・HIV陽性者数では全世界の約3分の2を占めます。ところが医療・保健従事者は世界全体の3%しかいないと報告されています。
足りないのはエイズ治療にあたる医師や看護師だけでなく、感染予防の啓発や患者のカウンセリングにあたる保健関係者らも含めてです。WHOは人材確保には今後5年間で少なくとも72億ドル(約8350億円)が必要だと試算しており、国際機関や財団などに寄付を求めていく方針だそうです。
同会議に参加しているマイクロソフト社のビル・ゲイツ氏は世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)に対し5億ドル(約580億円)の寄附を自身のビル&メリンダ・ゲイツ財団を通して行っており、先日著名投資家のウォーレン・バフェット氏から440億ドル(約5兆1千億円)もの寄附を受け取ったこともあり、WHOは同財団に対して、何らかの打診をおこなうのではないかと見る動きもあります。
しかし、エイズ対策に必要な人材を確保しようと思えば、8350億円ものお金が必要になるとWHOは試算しています。本当に気の滅入る話です。
WHOが報告するようにエイズに従事する人材が不足しているという現状がある一方で、金銭的にもスタッフの確保にも苦労しながらも、日々患者さんのために貢献されている方も少なくありません。例えば、私は、タイ国でHIV/AIDSの問題に草の根レベルで取り組んでいる人たちをみると、深い感銘を受けるのと同時に、自分に何ができるのか、ということをいつも考えます。寄附をよびかけるのも効果はありますが、実際に現地で活躍している人たちのことを知ってもらうことによって、世論の関心が高まり、さらに人材不足の解消にもつながることを私は期待したいと思います。
(浅居 雅彦)
サハラ砂漠以南のアフリカや南アジアなど世界57カ国が深刻な人材不足に直面していると、WHOは指摘しています。これらの国々の人口は世界の1割強にすぎませんが、エイズ患者・HIV陽性者数では全世界の約3分の2を占めます。ところが医療・保健従事者は世界全体の3%しかいないと報告されています。
足りないのはエイズ治療にあたる医師や看護師だけでなく、感染予防の啓発や患者のカウンセリングにあたる保健関係者らも含めてです。WHOは人材確保には今後5年間で少なくとも72億ドル(約8350億円)が必要だと試算しており、国際機関や財団などに寄付を求めていく方針だそうです。
同会議に参加しているマイクロソフト社のビル・ゲイツ氏は世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)に対し5億ドル(約580億円)の寄附を自身のビル&メリンダ・ゲイツ財団を通して行っており、先日著名投資家のウォーレン・バフェット氏から440億ドル(約5兆1千億円)もの寄附を受け取ったこともあり、WHOは同財団に対して、何らかの打診をおこなうのではないかと見る動きもあります。
しかし、エイズ対策に必要な人材を確保しようと思えば、8350億円ものお金が必要になるとWHOは試算しています。本当に気の滅入る話です。
WHOが報告するようにエイズに従事する人材が不足しているという現状がある一方で、金銭的にもスタッフの確保にも苦労しながらも、日々患者さんのために貢献されている方も少なくありません。例えば、私は、タイ国でHIV/AIDSの問題に草の根レベルで取り組んでいる人たちをみると、深い感銘を受けるのと同時に、自分に何ができるのか、ということをいつも考えます。寄附をよびかけるのも効果はありますが、実際に現地で活躍している人たちのことを知ってもらうことによって、世論の関心が高まり、さらに人材不足の解消にもつながることを私は期待したいと思います。
(浅居 雅彦)