HIV/AIDS関連情報

2006年9月4日(月) HIV2型、日本人初感染

 9月4日の各メディアが報道しているように、世界での感染の主流を占めるHIV1型とは遺伝子タイプが異なる2型に日本人が感染したことを、厚生労働省のエイズ研究班が確認しました。同省によると、過去には、日本滞在中の外国籍の感染者は報告があるが、日本人感染者の確認は今回初めてとのことです。

 同省によると HIV2型の感染が確認されたのは、過去に西アフリカで輸血を受けた経験がある男性です。同省は「滞在していた地域では2型が流行しており、現地での輸血が感染原因とみられる」としています。

 HIV2型は、1型に比べ感染力が弱く、発症までの潜伏期間が長いのが特徴。

 厚労省は、医療機関や保健所などが実施しているHIV検査で2型の感染を見逃さないよう、検査の徹底を求める通知を出しました。

(浅居 雅彦)

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2006年9月3日(日) インド最高裁、エイズ対策の遅れで政府を尋問

 8月31日のロイター通信によりますと、インド最高裁は、エイズ治療政策の遅れに対する説明をインド政府に求めました。

 インド政府は2005年までに10万人のHIV/AIDS患者に無料で抗HIV薬を支給することを決めていたのですが、現在投薬を受けているのは5万人のみです。インド政府はこの現状をいくつかのNGOから指摘され非難を受けていました。

 インド国民エイズ管理機構(India's National AIDS Control Organization)によりますと、インドの田舎では、標準的な医療が供給されておらず、これが抗HIV薬を適切に配布できない原因となっているそうです。

 インドで抗HIV薬が支給されていないということに強い違和感を覚えます。なぜなら、インドは世界最大のHIV陽性者(UNAIDSのデータでは約570万人)を有していながら、同時に抗HIV薬のジェネリック薬品の世界最大の供給国であるからです。

(谷口 恭)

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2006年9月3日(日) UNESCOがアフガニスタンの教師にエイズ教育

 8月30日付けのIRIN NEWSによりますと、アフガニスタンの首都カブールで、UNESCOがHIV/AIDSに関する二日間のワークショップを開きました。

 ワークショップには、アフガニスタン教育省やカブール教育大学の幹部や教師20人以上が参加したそうです。

 アフガニスタンでは、公的にHIV感染が認められたのは58人だけとなっていますが、実際の感染者はそれよりも遥かに多いと多くの関係者はみています。厚生省のある役人は、「アフガニスタンではHIVに関する国全域の調査がおこなわれたことがなく、国民の乏しい意識を考えるとHIVはかなり蔓延していると思われる」、とコメントしています。

 ある医療関係者は言います。

 「この国は戦争の後遺症で苦しんでいる。その結果、違法薬物の回し打ち、パキスタンやイランから戻ってきた難民、高い文盲率と無知、女性の地位の低さ、危険な性行為、脆弱な保健制度、HIVに対する低い意識などが原因となって、HIV/AIDSがかなり蔓延していると思われる」

 薬物、難民、文盲、女性差別、保健制度、・・・。HIV/AIDSは、狭い意味の医療だけではけっして解決しない、ということを改めて考えさせられます。

(谷口 恭)

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2006年8月31日(木) スワジランドの女性は性的に奔放?

 8月29日付けのIRIN NEWSによりますと、World Visionという機関がスワジランドの人々を対象にした調査で、女性の方が男性よりもセックス・パートナーが多いという結果が出て物議をかもしています。

 同調査では、過去3ヶ月以内に2人以上のセックス・パートナーがいた、と答えた女性は60%にも及び、男性よりも18%高かったそうです。調査結果から、彼女らは11歳頃からデート(原文では"date"だけですが、文脈から「性行為をおこなう」という意味だと思われます)を重ね、同時に4人の男性を相手にすることもある、ということが分かりました。

 この結果に対して、「(HIVの蔓延に対して)女性に責任があるわけではない」と主張する活動家は少なくありません。女性が貧しさから体を売らざるを得ない現状があるからです。女性たちは、愛や結婚のためではなく、お金のために性的関係を持っているのです。

 この調査をおこなったWorld Visionは言います。
 「金持ちの年上の男性が若い女性たちの恋人(愛人)になっていることが多い。女性たちは何も言えない。男性がこの(悪しき)文化を変えなければならない。」

 スワジランドの社会では、性についての話題を簡単に口にできないそうです。HIVの話をすることもむつかしいそうです。

 UNAIDSのデータでは、スワジランドの成人のおよそ33%がHIV陽性です。

 尚、スワジランドは南アフリカとモザンビークに挟まれた、人口110万人の小国で、最大部族であるスワジ族の王国です。1968年にイギリスから独立しています。

(谷口 恭)

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2006年8月31日(木) バンコク、デモの勝利!

 以前このコーナーで、UKの製薬会社グラクソ・スミスクライン(以下、グラクソ)が抗HIV薬のCombidの特許出願を取り下げるよう抗議デモがバンコクでおこなわれている、というニュースを報告しましたが(2006年8月14日「バンコクで英製薬会社に対する抗議デモ」)、その結果、グラクソはデモ抗議を受け入れて特許出願を取り消しました。

 これは、タイ国のHIV/AIDS患者のみならず、世界的に大きな意味があるのではないか、と、タイの英字新聞Nationが報じています。

 8月17日のNationによりますと、グラクソがタイでの特許出願を取り下げたことにより、インドが同じジェネリック薬品を作ることができるようになり、世界中に販売を開始する可能性があるそうです。

 それにしても、今回のグラクソの決断は評価されるべきだと思われます。同社は、WHOと協力して象皮病の撲滅にも力を注いでいますし、先進国のみならず発展途上国の医療にも力を注いでいる企業です。(私が日々処方している薬品にも同社のすぐれた製品が多数あります。)

(谷口 恭)

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