HIV/AIDS関連情報
2006年9月9日(土) タイの携帯電話普及がもたらす悪影響
9月8日のバンコク週報によりますと、タイ国文化委員会(文化省管轄)のアモンラット広報局長は、携帯電話がタイの文化、およびタイ人の日常生活に少なからぬ悪影響を与えていると指摘しているそうです。
特に若者の間では携帯電話が必要不可欠なものとなっており、新機種が発表される度に話題になるなど、物欲主義の強まりの一因ともなっていると同局長はコメントしています。部屋に閉じこもって携帯電話で話す時間が増えており、このため家族の絆が弱くなっていることが危惧されています。また、携帯電話欲しさに売春をおこなう女子高生が急増しているそうです。
「家族との絆を大切にする」というタイの善き伝統が、携帯電話のために失われるのなら、何のための文明か分かりません。
「タイの若い世代の85%がHIVに無関心である」とUNAIDSは2006年の報告書で述べており、HIVの新規感染者では若い女性が増えてきています。携帯電話の新機種購入と引き換えにHIVに感染したら・・・。これほど大きな代償もないでしょう。
参考までに、昨年文化省がタイの小学生から高校生を対象におこなった調査によりますと、小学生の約24%、中学生・高校生の約53%が携帯電話を所有しているそうです。ただしこれは全国調査ですから、バンコク内だけでみればこの数字は大きく跳ね上がるものと思われます。
タイでは通話料金は比較的安価な一方で、携帯電話本体はかなり高価です。新機種のなかには2万バーツ(約6万円)を超えるものもあり、これは一般的なタイ人の月給の2倍程度になります。バンコクの街を歩けば、高校生や大学生の多くがこのような高価な機種を持っていることに驚かされます。
(谷口 恭)
特に若者の間では携帯電話が必要不可欠なものとなっており、新機種が発表される度に話題になるなど、物欲主義の強まりの一因ともなっていると同局長はコメントしています。部屋に閉じこもって携帯電話で話す時間が増えており、このため家族の絆が弱くなっていることが危惧されています。また、携帯電話欲しさに売春をおこなう女子高生が急増しているそうです。
「家族との絆を大切にする」というタイの善き伝統が、携帯電話のために失われるのなら、何のための文明か分かりません。
「タイの若い世代の85%がHIVに無関心である」とUNAIDSは2006年の報告書で述べており、HIVの新規感染者では若い女性が増えてきています。携帯電話の新機種購入と引き換えにHIVに感染したら・・・。これほど大きな代償もないでしょう。
参考までに、昨年文化省がタイの小学生から高校生を対象におこなった調査によりますと、小学生の約24%、中学生・高校生の約53%が携帯電話を所有しているそうです。ただしこれは全国調査ですから、バンコク内だけでみればこの数字は大きく跳ね上がるものと思われます。
タイでは通話料金は比較的安価な一方で、携帯電話本体はかなり高価です。新機種のなかには2万バーツ(約6万円)を超えるものもあり、これは一般的なタイ人の月給の2倍程度になります。バンコクの街を歩けば、高校生や大学生の多くがこのような高価な機種を持っていることに驚かされます。
(谷口 恭)
2006年9月9日(土) タイの自殺者、1日平均13人
9月6日のnewsclip.be発のニュースです。タイ保健省によると、2005年のタイ人の自殺者は10万人当たり6.9人で、04年の同7.7人から減少しました。総数は約5000人としています。
同省は「10万人当たりの自殺者は、日本24.1人、スリランカ21.6人、米国10.5人、スウェーデン13.5人。タイはこれらの国に比べ問題が少ないといえるが、タイ北部では自殺率が高くなっていて、原因としてはHIV感染による自殺が多いようだ」と指摘しました。
日本の自殺者数は、警察庁発表で、04年3万2325人、05年3万2552人。1日平均の自殺者は05年で、平均89人です。
尚、WHOの2004年の資料によりますと、自殺率の高い国はリトアニア、ロシア、ベラルーシと続き日本は第10位ですが、1位から9位はすべて旧ソ連や東ヨーロッパの国で、いわゆる先進国では日本が世界1位となります。タイは71位で、フィリピン(83位)とともに、アジアで最も自殺率の低い国のひとつとなっています。
(浅居 雅彦)
同省は「10万人当たりの自殺者は、日本24.1人、スリランカ21.6人、米国10.5人、スウェーデン13.5人。タイはこれらの国に比べ問題が少ないといえるが、タイ北部では自殺率が高くなっていて、原因としてはHIV感染による自殺が多いようだ」と指摘しました。
日本の自殺者数は、警察庁発表で、04年3万2325人、05年3万2552人。1日平均の自殺者は05年で、平均89人です。
尚、WHOの2004年の資料によりますと、自殺率の高い国はリトアニア、ロシア、ベラルーシと続き日本は第10位ですが、1位から9位はすべて旧ソ連や東ヨーロッパの国で、いわゆる先進国では日本が世界1位となります。タイは71位で、フィリピン(83位)とともに、アジアで最も自殺率の低い国のひとつとなっています。
(浅居 雅彦)
2006年9月8日(金) 科学者たちが南アのエイズ政策を激しく非難
日本を含めた先進国では、「エイズの原因はHIV感染であり治療には抗HIV薬を用いる」というのが常識になっています。ところが、これを認めない国家も存在します。
最近、80人以上の科学者が協力し、南アフリカ共和国大統領Thabo Mbeki氏に、ある「通達」をおこないました。協力した科学者のなかには、RNAウイルスの逆転写酵素を発見し1975年にノーベル医学生理学賞を受賞したアメリカの生物学者David Baltimore氏や、エイズの原因がHIVであることを発見したRobert Gallo氏も含まれています。
9月8日のThe Independent (online edition)によりますと、大統領に宛てられたその通達には次のように述べられています。
「厚生大臣のTshabalala-Msimang医師をただちに解雇し、南アフリカがとっている恐ろしくて非科学的なエイズ対策を撤廃すべきだ。エイズの原因がHIVでない、などという馬鹿げた主張をおこない、科学を尊重せずに効果のない不道徳な政策で国民を危険に陥れている人間を厚生大臣に就任させているのは、南アフリカの恥である」
Tshabalala-Msimang医師は、HIV陽性者に対し、抗HIV薬を支給するのではなく、ビートの根、ニンニク、レモン、芋などを摂取するように指導をおこなっています。
この通達に対し、Mbeki大統領は返答をしていませんが、この厚生大臣を擁護し、「南アフリカのエイズ対策に対する誤った情報が世界中で流布している」、との発表をおこないました。また、大統領は、「エイズの原因がHIVであるという説は疑わしく、抗HIV薬の効果は定かではない」、とのコメントもおこなっています。
南アフリカは、2003年に38万人の患者に対し抗HIV薬を支給すると発表しましたが、現在支給を受けているのはわずか14万人です。科学者たちは、実際に必要なのは50万人にのぼるとしています。
この通達は、先月トロントで開かれたエイズ学会で、「狂信的分派集団(lunatic fringe)」と言う言葉を用い、南アフリカのこの政策を激しく非難した国連大使Stephen Lewis氏に承認されています。
尚、南アフリカのHIV陽性者は550万人(インドに次いで世界二位)で、一日におよそ900人がエイズで死亡しています。
(谷口 恭)
最近、80人以上の科学者が協力し、南アフリカ共和国大統領Thabo Mbeki氏に、ある「通達」をおこないました。協力した科学者のなかには、RNAウイルスの逆転写酵素を発見し1975年にノーベル医学生理学賞を受賞したアメリカの生物学者David Baltimore氏や、エイズの原因がHIVであることを発見したRobert Gallo氏も含まれています。
9月8日のThe Independent (online edition)によりますと、大統領に宛てられたその通達には次のように述べられています。
「厚生大臣のTshabalala-Msimang医師をただちに解雇し、南アフリカがとっている恐ろしくて非科学的なエイズ対策を撤廃すべきだ。エイズの原因がHIVでない、などという馬鹿げた主張をおこない、科学を尊重せずに効果のない不道徳な政策で国民を危険に陥れている人間を厚生大臣に就任させているのは、南アフリカの恥である」
Tshabalala-Msimang医師は、HIV陽性者に対し、抗HIV薬を支給するのではなく、ビートの根、ニンニク、レモン、芋などを摂取するように指導をおこなっています。
この通達に対し、Mbeki大統領は返答をしていませんが、この厚生大臣を擁護し、「南アフリカのエイズ対策に対する誤った情報が世界中で流布している」、との発表をおこないました。また、大統領は、「エイズの原因がHIVであるという説は疑わしく、抗HIV薬の効果は定かではない」、とのコメントもおこなっています。
南アフリカは、2003年に38万人の患者に対し抗HIV薬を支給すると発表しましたが、現在支給を受けているのはわずか14万人です。科学者たちは、実際に必要なのは50万人にのぼるとしています。
この通達は、先月トロントで開かれたエイズ学会で、「狂信的分派集団(lunatic fringe)」と言う言葉を用い、南アフリカのこの政策を激しく非難した国連大使Stephen Lewis氏に承認されています。
尚、南アフリカのHIV陽性者は550万人(インドに次いで世界二位)で、一日におよそ900人がエイズで死亡しています。
(谷口 恭)
2006年9月8日(金) フィンランドのHIV増加はタイのせい?
フィンランドで最大の発行部数をほこる新聞Helsingin SanomatのInternational edition9月7日号によりますと、フィンランドでは今年のHIV新規感染者が現時点で117人を記録し、同国の厚生省は最終的に170人にのぼるとみているようです。2001年の感染者は53人ですから、急激に感染者が増加していることになります。(UNAIDSのデータによりますと、フィンランドのHIV感染者は現在およそ1900人で、国民全体の0.1%に相当します。)
フィンランドの新規感染者のうち4人に3人は性交渉によるもので、最も多いのが40歳前後の異性愛者だそうです。そしてその多くが海外での売春行為による感染で、なかでも「タイでの売春行為が問題だ」、とフィンランド政府が公式に発表しました(発表したのは厚生省幹部のMerja Saarinen氏)。
国名をあげて公式に非難をされたタイ国は反論をおこないました。
9月7日のBangkok Postにタイ厚生省のコメントが紹介されています。
「感染者が増加しているのは、タイに旅行に来るフィンランド人が危険な性行為をするからであって、旅行者はどこに行ってもHIVの感染予防をしなければならない」
疾病管理局の局長であるタワット医師(Dr.Thawat)は言います。
「我々は、すべての渡航者に対して、タイ渡航の目的が売春かどうかを調べることはできない」
タイのHIV/AIDS問題に関心のある者なら知らない者はいないと言われているミスター・コンドームことミーチャイ・ウィラワタイヤ(Mechai Veravaidya)氏も、今回のフィンランドの公式発表に対してコメントを出しています。ミーチャイ氏は、タイを非難したフィンランド政府を批判し、「フィンランド政府はタイで感染したという具体的証拠を提出すべきだ」、と述べています。
しかしミーチャイ氏は、同時に、「外国人は売春目的でタイに来ないように」とのコメントも発表しています。「ここ3年でエイズ予防の関心が薄れ、売春婦のコンドーム使用率は90%にまで低下してきている」、と警告を発しています。
9月6日のBangkok Postによりますと、タイ国のHIV感染者はおよそ80万人で(UNAIDSのデータでは約58万人です)、新規感染者は減少してきているものの(昨年は約17,000人)、感染者総数は増加し続けています。(これは抗HIV薬の普及により死亡数が減少したことが主要因です)
タイでは、エイズ対策が予防から治療にシフトしてきており、疾病管理局によれば、昨年のエイズ予防対策費が300-400万バーツ(約900-1,200万円)だったのに対し、今年は180万バーツ(約540万円)に低下しています。
フィンランドが科学的証拠を提出せずに、公式にタイを非難したことには問題があると言えます。しかしながら、フィンランド人にとってタイは最も人気のある観光地であり、売春目的でのタイ渡航(sex tourism)をおこなうフィンランド人が多いのは事実でしょう。そして、これはフィンランドだけではありません。イギリスにも同様のデータがありますし(当website「なぜ日本人や西洋人はタイでHIVに感染するのか」参照)、日本にはきちんとしたデータはないものの、私は日々の臨床で同じことを感じています。
(谷口 恭)
フィンランドの新規感染者のうち4人に3人は性交渉によるもので、最も多いのが40歳前後の異性愛者だそうです。そしてその多くが海外での売春行為による感染で、なかでも「タイでの売春行為が問題だ」、とフィンランド政府が公式に発表しました(発表したのは厚生省幹部のMerja Saarinen氏)。
国名をあげて公式に非難をされたタイ国は反論をおこないました。
9月7日のBangkok Postにタイ厚生省のコメントが紹介されています。
「感染者が増加しているのは、タイに旅行に来るフィンランド人が危険な性行為をするからであって、旅行者はどこに行ってもHIVの感染予防をしなければならない」
疾病管理局の局長であるタワット医師(Dr.Thawat)は言います。
「我々は、すべての渡航者に対して、タイ渡航の目的が売春かどうかを調べることはできない」
タイのHIV/AIDS問題に関心のある者なら知らない者はいないと言われているミスター・コンドームことミーチャイ・ウィラワタイヤ(Mechai Veravaidya)氏も、今回のフィンランドの公式発表に対してコメントを出しています。ミーチャイ氏は、タイを非難したフィンランド政府を批判し、「フィンランド政府はタイで感染したという具体的証拠を提出すべきだ」、と述べています。
しかしミーチャイ氏は、同時に、「外国人は売春目的でタイに来ないように」とのコメントも発表しています。「ここ3年でエイズ予防の関心が薄れ、売春婦のコンドーム使用率は90%にまで低下してきている」、と警告を発しています。
9月6日のBangkok Postによりますと、タイ国のHIV感染者はおよそ80万人で(UNAIDSのデータでは約58万人です)、新規感染者は減少してきているものの(昨年は約17,000人)、感染者総数は増加し続けています。(これは抗HIV薬の普及により死亡数が減少したことが主要因です)
タイでは、エイズ対策が予防から治療にシフトしてきており、疾病管理局によれば、昨年のエイズ予防対策費が300-400万バーツ(約900-1,200万円)だったのに対し、今年は180万バーツ(約540万円)に低下しています。
フィンランドが科学的証拠を提出せずに、公式にタイを非難したことには問題があると言えます。しかしながら、フィンランド人にとってタイは最も人気のある観光地であり、売春目的でのタイ渡航(sex tourism)をおこなうフィンランド人が多いのは事実でしょう。そして、これはフィンランドだけではありません。イギリスにも同様のデータがありますし(当website「なぜ日本人や西洋人はタイでHIVに感染するのか」参照)、日本にはきちんとしたデータはないものの、私は日々の臨床で同じことを感じています。
(谷口 恭)
2006年9月7日(木) フレディ・マーキュリー記念フェスティバル
1991年に45歳という短い生命をエイズで終えたクイーンのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーの誕生日は9月5日です。
フレディ・マーキュリーにとって、生きていれば60歳の誕生日になるこの日を記念してロンドンでイベントがおこなわれたようです。
9月4日のThe Independent (Online Edition)によりますと、世界中のファンから集まった誕生日プレゼントは、The Mercury Phoenix Trustという名のクイーンの他のメンバーとマネージャーが設立したエイズ基金のもとでオークションに出されるそうです。
同じようなイベントは、ロンドンだけでなく、ケープタウン、ケルン、ウィーン、そして東京でも実施されたようです。
フレディ・マーキュリーは、タンザニアのザンジバル島出身で、クイーンのヒット曲「We Will Rock You」「Bohemian Rhapsody」「We Are the Champion」などは、世代を超えて世界中の人々から愛されていると言えるでしょう。
1991年当時、フレディ・マーキュリーのエイズでの死亡は、世界中で大きな衝撃となり、彼の死がその後のエイズ関係の基金設立につながったと言われています。
ちなみに、他にエイズで死亡した有名人には、私の知る限りでは、ロック・ハドソン(俳優)、クラウス・ノミ(歌手)、シルヴェスター(歌手)などがいます。
(谷口 恭)
フレディ・マーキュリーにとって、生きていれば60歳の誕生日になるこの日を記念してロンドンでイベントがおこなわれたようです。
9月4日のThe Independent (Online Edition)によりますと、世界中のファンから集まった誕生日プレゼントは、The Mercury Phoenix Trustという名のクイーンの他のメンバーとマネージャーが設立したエイズ基金のもとでオークションに出されるそうです。
同じようなイベントは、ロンドンだけでなく、ケープタウン、ケルン、ウィーン、そして東京でも実施されたようです。
フレディ・マーキュリーは、タンザニアのザンジバル島出身で、クイーンのヒット曲「We Will Rock You」「Bohemian Rhapsody」「We Are the Champion」などは、世代を超えて世界中の人々から愛されていると言えるでしょう。
1991年当時、フレディ・マーキュリーのエイズでの死亡は、世界中で大きな衝撃となり、彼の死がその後のエイズ関係の基金設立につながったと言われています。
ちなみに、他にエイズで死亡した有名人には、私の知る限りでは、ロック・ハドソン(俳優)、クラウス・ノミ(歌手)、シルヴェスター(歌手)などがいます。
(谷口 恭)