HIV/AIDS関連情報

2006年9月27日(水) ケニアのエイズ孤児

 9月20日の共同通信に、ケニアのエイズ孤児についてのレポートが掲載されています。

 ケニアのある学校では児童260人のうち109人がエイズ孤児だそうです。この学校の副校長は、「貧困のため仕事を求めて学校に来なくなる子が多い」と話しているそうです。ケニアでは2003年から小学校の授業料が無料になっていますが、小学生もが仕事をしなければならないほどの貧困があるのでしょう。

 ケニア当局は、「孤児の半数はHIV陽性の可能性がある」とコメントしているようです。政府はすべての孤児に月あたり1000ケニアシリング(約1500円)の援助をする計画を立てたものの、予算が捻出できずに断念したそうです。

 当ウェブサイトでは、新規感染は減っているもののエイズ孤児は増え続けている北タイの実態をレポートしましたが(「増え続ける北タイのエイズ孤児」(谷口恭))、全世界でみるとエイズ孤児は2005年で1500万人を超え、2年間で2割も増加しています。エイズ孤児の8割はサハラ砂漠以南に集中しており、ケニアだけで120万人にもなります。サハラ砂漠以南では15歳未満の子供の9%が両親のどちらかをエイズで亡くしているとUNAIDSは試算しています。

(谷口 恭)

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2006年9月27日(水) 河南省のエイズ村告発小説が発禁命令

 以前からこのコーナーでも度々とりあげている中国河南省のエイズ村について詳細を綴った小説が誕生しました。タイトルは「丁庄夢」といい、作者は中国人の閻連科(えん・れんか)さん(48歳)です。

 9月20日の共同通信によりますと、この小説は魯迅賞という名の賞をとったらしいのですが、中国当局はこの小説を発売禁止にしたそうです。ただ、日本で近日出版される予定の翻訳本に対しては現時点では発売禁止の動きは出ていないようです。

 さすがは言論の自由を認めない共産主義の中国という感じがしますが、私個人的にはこの小説が一時的にでも書店に並び賞をとったということは大きな進展だと思います。

 以前は、この村での取材を試みたジャーナリストが次々と行方不明になっていたのですから。

(谷口 恭)

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2006年9月27日(水) 京都の病院内で8人がB型肝炎に院内感染

 9月20日の共同通信によりますと、京都市山科区の音羽病院で透析を受けている8人の患者さんが院内でB型肝炎ウイルスに感染したことが分かったそうです。

 B型肝炎ウイルスは、以前に比べると随分ましになっていますが、今から10年程前までは、いわれのない差別を受けていたキャリアの方が少なからずおられたのは事実です。こういう事件が起こると、再びキャリアの方に対するスティグマがはびこるのではないかと危惧します。同病院には、原因究明を急ぐとともに今後の対策を徹底してもらいたいものです。

 尚、現在国内のB型肝炎ウイルスのキャリアは100万人から120万程度だと言われています。現在では母子感染対策を徹底していますから新たにキャリアになる人はほとんどいないと思われます。(B型肝炎ウイルスは成人してから血液や精液、膣分泌液を介して感染すればキャリアになることはほとんどありません)

(谷口 恭)

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2006年9月27日(水) HIV陽性者が国際指名手配

 47歳のイギリスのゲイが自分の恋人に故意にHIVを感染させたという理由で3年4ヶ月の禁固刑を言い渡された、というニュースを以前お伝えしました。(「US,UK,カンボジアでHIV陽性者が逮捕」2006年8月9日

 このゲイはこの裁判に現れず行方不明になっていましたが、どうやらフランスに逃亡したようです。

 9月25日のBBC NEWSによりますと、ロンドン警視庁はこのゲイが現在フランスに滞在しているとみているそうです。

 このゲイは38歳のパートナーに、自らがHIV陽性であることを知りながらコンドームを用いない性行為を強要し、ドメスティック・バイオレンスが日常化していたそうです。

 自分の恋人にHIVを感染させたとき、罪になるのかどうか、罪になるとすればどの程度のものなのか、という問題は非常にむつかしく、専門家の間でも意見が別れています。相手に安全だと思い込ませておいて故意に感染させたとすれば罪になるでしょうが、自分が感染の確証がなくて相手がコンドームを用いない性行為を求めたような場合は必ずしも罪になるわけではないと思われます。

 このゲイの場合、自分がHIV陽性であることを知っていて暴力で性行為を強要していたわけですから悪質であると言えます。したがって、国際指名手配となってもやむをえないでしょう。

 しかしながら、「恋人にHIVを感染させたゲイが国際指名手配された」という言葉だけが独り歩きをすると、HIV陽性者に対するスティグマが助長される可能性があります。今回のBBCは適切な表現をしていると思われますが、今後のマスコミの報道には充分注意してもらいたいものです。

(谷口 恭)

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2006年9月27日(水) 喫煙はHIV感染のリスク(続編)

 タバコがHIV感染のリスクを増加させることが分かった、というニュースをお伝えしましたが(「喫煙はHIV感染のリスク」2006年9月23日)、9月23日のBBC NEWSにさらに詳しく報道されていましたので報告いたします。

 喫煙することにより身体の免疫システムに何らかの変化が起こるのではないか、という説を前回は紹介しましたが、この研究を発表した学者はもうひとつの可能性を考えているようです。

 それは、「喫煙者は危険な性行為をおこないやすい」、ということです。この結果、喫煙者は非喫煙者に比べて、HIV感染のリスクが60-300%も増加する、と研究者は述べています。

 BBCではもうひとつ、喫煙の重要な点を指摘しています。前回お伝えしましたように、「HIV陽性者の喫煙はAIDS発症に関連性がない」、という結果が出たそうですが、実はこれは抗HIV薬を服用していない場合の結果です。

 2006年初期、アメリカでHIV陽性の女性を対象とした5年間の大規模研究で、喫煙者は非喫煙者に比べて36%もエイズを発症しやすいことが分かったそうです。この研究の対象となったHIV陽性者は抗HIV薬を服用しています。

 抗HIV薬を服用していると高脂血症を起こしやすく、そのため虚血性心疾患に対するリスクが上昇します。またエイズの合併症には結核、カリニ肺炎など呼吸器疾患が少なくありません。こういったことを考えると、イギリスの研究ではエイズ発症と喫煙の相関関係はなかったとしていますが、やはりHIV陽性者は喫煙を控えるに越したことはないでしょう。

(谷口 恭)

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