HIV/AIDS関連情報
2006年10月2日(月) ビシュケクの国際会議
中央アジアと東ヨーロッパにおけるHIV/AIDS問題を解決することを目的とした国際会議がキルギスタンの首都ビシュケクで9月25日から始まり、9月25日のIRIN NEWSが報道しています。
この会議にはロシアやウクライナを含む中央アジアの保健関係の役人や国際活動をおこなっているNGOが集まり、会議のタイトルは「中央アジアと東ヨーロッパにおけるHIV蔓延と拡大防止のための法的整備および地域協力の重要性」とされています。
会議は、「中央アジアエイズ克服機関」(CAAP, Central Asia AIDS Control project)と「反エイズ大西洋横断諸国」(TPAA, Transatlantic Partners Against AIDS)が中心となり開催されています。(どちらの組織名も上手く訳せていませんが・・・)
CAAPは世界銀行と国際開発協会に金銭支援を受けている組織です。
オープニングでは、キルギスタンの政府役人が、「政治家はHIV/AIDS問題を克服するために効果的な法律をつくる義務がある」と述べ、CAAPの幹部は、「立法化はHIVに関する差別やスティグマをなくすことを目的としたものであるべきだ。最近10年間で、薬物の静脈注射をする者、売春婦、移民労働者が急増しており、彼(女)らが脆弱な状態にある」と述べました。
中央アジアでは最近4年間でHIV感染が急増しており、公式発表では、2000年に500人だったのが、2004年には12,000人と急増しています。しかし米国CDC(疾病対策予防局)は、中央アジアのHIV陽性者は9万人とみています。
世界的にみて、HIV対策は早期に介入すれば、最終的なコストをおさえることが分かっています。
「このままHIVが蔓延すれば、経済への影響は不可避であり、ウズベキスタンで20%、カザフスタンとキルギスタンで10%の経済成長率の減速が予想される。一般的にHIVの蔓延は、経済成長率を0.5%から1%減速させ、この影響は石油やガス業界から金融や娯楽、農業といった分野にまで影響を与える」、との報告もおこなわれたようです。
尚、UNAIDSの2005年のデータでは、中央アジア5ヶ国のHIV陽性者はおよそ52,000人となっています。尚、中央アジア5ヶ国とは、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンのことで、人口は、順に1,500万人、500万人、650万人、500万人、2,700万人で、HIV陽性者は、12,000人、4,000人、4,900人、500人、31,000人となっています。どの国も成人の陽性率は0.1~0.2%です。
(谷口 恭)
この会議にはロシアやウクライナを含む中央アジアの保健関係の役人や国際活動をおこなっているNGOが集まり、会議のタイトルは「中央アジアと東ヨーロッパにおけるHIV蔓延と拡大防止のための法的整備および地域協力の重要性」とされています。
会議は、「中央アジアエイズ克服機関」(CAAP, Central Asia AIDS Control project)と「反エイズ大西洋横断諸国」(TPAA, Transatlantic Partners Against AIDS)が中心となり開催されています。(どちらの組織名も上手く訳せていませんが・・・)
CAAPは世界銀行と国際開発協会に金銭支援を受けている組織です。
オープニングでは、キルギスタンの政府役人が、「政治家はHIV/AIDS問題を克服するために効果的な法律をつくる義務がある」と述べ、CAAPの幹部は、「立法化はHIVに関する差別やスティグマをなくすことを目的としたものであるべきだ。最近10年間で、薬物の静脈注射をする者、売春婦、移民労働者が急増しており、彼(女)らが脆弱な状態にある」と述べました。
中央アジアでは最近4年間でHIV感染が急増しており、公式発表では、2000年に500人だったのが、2004年には12,000人と急増しています。しかし米国CDC(疾病対策予防局)は、中央アジアのHIV陽性者は9万人とみています。
世界的にみて、HIV対策は早期に介入すれば、最終的なコストをおさえることが分かっています。
「このままHIVが蔓延すれば、経済への影響は不可避であり、ウズベキスタンで20%、カザフスタンとキルギスタンで10%の経済成長率の減速が予想される。一般的にHIVの蔓延は、経済成長率を0.5%から1%減速させ、この影響は石油やガス業界から金融や娯楽、農業といった分野にまで影響を与える」、との報告もおこなわれたようです。
尚、UNAIDSの2005年のデータでは、中央アジア5ヶ国のHIV陽性者はおよそ52,000人となっています。尚、中央アジア5ヶ国とは、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンのことで、人口は、順に1,500万人、500万人、650万人、500万人、2,700万人で、HIV陽性者は、12,000人、4,000人、4,900人、500人、31,000人となっています。どの国も成人の陽性率は0.1~0.2%です。
(谷口 恭)
2006年10月2日(月) 非常識なタイの買春客たち
売買春に伴うリスクには、HIVを含めた性感染症の罹患以外にも様々なものがあります。傷害事件もそのひとつで、このコーナーでも、過去に二度、バンコク内のホテルで売春婦が殺害されたという事件をお伝えしました。
最近、バンコク週報で、タイの夜の店での事件が立て続けに報道されましたのでここにご紹介したいと思います。
まずはパタヤのパブ内でのできごとです。9月30日のバンコク週報によりますと、28日、47歳のスウェーデン人がパブ内の歌手のスカートの中に手を入れたとして警察に突き出されました。この記事には、取調べを受けるその男性の写真が掲載されているのですが、肘を机についてまるで反省していない様子です。
この記事には記者の体験も掲載されており、その記者は数年前に、パッポンのゴーゴーバーで、日本人の男性に股間を触られたダンサーがビール瓶でその男性の頭部を殴り、大量出血させるという現場を目撃したそうです。
10月2日のバンコク週報の記事では、チョンブリー県(パタヤかどうかは分かりません)のカラオケ店で、9月30日、ホステスに店外デートを断られた男性(タイ人)が店内で銃を乱射し、オーナーが死亡、ホステス4人が重軽傷を負うという事件が起きたそうです。
この3つの事件に共通する問題点は、いずれも男性が夜の店の女性を卑下しているということではないでしょうか。タイの夜の店で働く多くの女性が売春をしているのは事実でしょうが、それを目的で店に行くならそれなりのマナーを順守すべきでしょう。「売買春をなくせばいい」というのは単なる机上の空論であったとしても、買春の衝動を抑えられないなら、少なくとも最低限の常識は身につけてもらいたいものです。
(谷口 恭)
最近、バンコク週報で、タイの夜の店での事件が立て続けに報道されましたのでここにご紹介したいと思います。
まずはパタヤのパブ内でのできごとです。9月30日のバンコク週報によりますと、28日、47歳のスウェーデン人がパブ内の歌手のスカートの中に手を入れたとして警察に突き出されました。この記事には、取調べを受けるその男性の写真が掲載されているのですが、肘を机についてまるで反省していない様子です。
この記事には記者の体験も掲載されており、その記者は数年前に、パッポンのゴーゴーバーで、日本人の男性に股間を触られたダンサーがビール瓶でその男性の頭部を殴り、大量出血させるという現場を目撃したそうです。
10月2日のバンコク週報の記事では、チョンブリー県(パタヤかどうかは分かりません)のカラオケ店で、9月30日、ホステスに店外デートを断られた男性(タイ人)が店内で銃を乱射し、オーナーが死亡、ホステス4人が重軽傷を負うという事件が起きたそうです。
この3つの事件に共通する問題点は、いずれも男性が夜の店の女性を卑下しているということではないでしょうか。タイの夜の店で働く多くの女性が売春をしているのは事実でしょうが、それを目的で店に行くならそれなりのマナーを順守すべきでしょう。「売買春をなくせばいい」というのは単なる机上の空論であったとしても、買春の衝動を抑えられないなら、少なくとも最低限の常識は身につけてもらいたいものです。
(谷口 恭)
2006年10月1日(日) パプアニューギニアのHIV蔓延
9月28日のBBC NEWS(website版)によりますと、パプアニューギニアのいくつかの地方ではHIV陽性者が倍増しているそうです。いまや国民の2%近くがHIV陽性となっており、サハラ砂漠以南に似たような状況になるのではないかとみる専門家もいるようです。
年間およそ30%もの増加を示している現状があるのにもかかわらず、有効な対策をとっていない政府に対する批判の声は少なくありません。
マイケル・ソマレ首相はこの事態に積極的に対処する姿勢を見せていますが、次のようにも述べています。
「この国には800もの異なった文化と言語がある。さらに読み書きのできる国民は34%しかいないことを考えるとエイズ対策は容易ではない」
パプアニューギニアの最たる感染ルートは異性間性交渉です。コンドームを用いない性行為、買春、浮気、などによりHIVが蔓延しています。問題は首都のポートモレスビーだけでなく、この国の主要な産業である採石や材木の港町にも広がっているとみられています。
そして忘れてはならないのが、女性が危険に曝されているということです。アムネスティ・インターナショナルがこの件についてコメントしています。
「女性は最もリスクの高い存在です。一夫多妻の夫たちはたくさんの性交渉の相手を有しています。女性たちはコンドームの使用を求めることができず性交渉を拒むこともできないのです」
さらに先進国からは考えられないような理由もあります。厚生大臣のマン医師は言います。
「人々はこの病気を魔術のようなもの(witchcraft and sorcery)と考えている。正しい知識が彼らに普及するまでに多くの命が犠牲になるだろう」
最近ある病院がおこなった同国エンガ県の2箇所の調査では感染率が30%にもなったそうです。厚生省がおこなった700人の金の採掘労働者を対象とした調査ではそのうち70人が陽性だったそうです。
WHO(世界保健機関)は2015年までに感染者が100万人になるのではないかとみています。
しかしWHO関係者のBernard Fabre-Teste医師は次のように述べています。
「現在パプアニューギニアは積極的にエイズ問題に取り組もうとしている。HIV検査を奨励しカウンセリングを受けられるようにもなってきている。予防プログラムが遂行され、治療システムも確立し、より正確で戦略的な情報が発信されている」
現在WHOは、政府のプログラムが適切に遂行できるよう、地域の医師や看護師に教育をおこなっています。
最後にパプアニューギニアのHIVに関するデータをまとめておきましょう。
初めてHIV陽性者が確認されたのが1987年で、1997年からは新規のHIV陽性者が年間30%の伸びを示すようになりました。2005年には約6万人がHIV陽性でしたが、このうち抗HIV薬の治療を受けられたのはわずか171人です。人口は約580万人で一人あたりのGDPは2,300ドル(約27万円)、成人の感染率は1.8%。尚、この国の感染ルートはほとんどが異性間性交渉です。(UNAIDSのデータより)
(谷口 恭)
年間およそ30%もの増加を示している現状があるのにもかかわらず、有効な対策をとっていない政府に対する批判の声は少なくありません。
マイケル・ソマレ首相はこの事態に積極的に対処する姿勢を見せていますが、次のようにも述べています。
「この国には800もの異なった文化と言語がある。さらに読み書きのできる国民は34%しかいないことを考えるとエイズ対策は容易ではない」
パプアニューギニアの最たる感染ルートは異性間性交渉です。コンドームを用いない性行為、買春、浮気、などによりHIVが蔓延しています。問題は首都のポートモレスビーだけでなく、この国の主要な産業である採石や材木の港町にも広がっているとみられています。
そして忘れてはならないのが、女性が危険に曝されているということです。アムネスティ・インターナショナルがこの件についてコメントしています。
「女性は最もリスクの高い存在です。一夫多妻の夫たちはたくさんの性交渉の相手を有しています。女性たちはコンドームの使用を求めることができず性交渉を拒むこともできないのです」
さらに先進国からは考えられないような理由もあります。厚生大臣のマン医師は言います。
「人々はこの病気を魔術のようなもの(witchcraft and sorcery)と考えている。正しい知識が彼らに普及するまでに多くの命が犠牲になるだろう」
最近ある病院がおこなった同国エンガ県の2箇所の調査では感染率が30%にもなったそうです。厚生省がおこなった700人の金の採掘労働者を対象とした調査ではそのうち70人が陽性だったそうです。
WHO(世界保健機関)は2015年までに感染者が100万人になるのではないかとみています。
しかしWHO関係者のBernard Fabre-Teste医師は次のように述べています。
「現在パプアニューギニアは積極的にエイズ問題に取り組もうとしている。HIV検査を奨励しカウンセリングを受けられるようにもなってきている。予防プログラムが遂行され、治療システムも確立し、より正確で戦略的な情報が発信されている」
現在WHOは、政府のプログラムが適切に遂行できるよう、地域の医師や看護師に教育をおこなっています。
最後にパプアニューギニアのHIVに関するデータをまとめておきましょう。
初めてHIV陽性者が確認されたのが1987年で、1997年からは新規のHIV陽性者が年間30%の伸びを示すようになりました。2005年には約6万人がHIV陽性でしたが、このうち抗HIV薬の治療を受けられたのはわずか171人です。人口は約580万人で一人あたりのGDPは2,300ドル(約27万円)、成人の感染率は1.8%。尚、この国の感染ルートはほとんどが異性間性交渉です。(UNAIDSのデータより)
(谷口 恭)
2006年10月1日(日) インド、エイズ無料診療所が2倍に
9月28日のロイター通信によりますと、インド国民エイズ管理機構(NACO)が、無料でエイズの治療を受けられる診療所が2倍に増えたことを発表しました。
半年前には54箇所しかなかった無料診療所が現在では91箇所となり、来年3月までには100箇所になる見込みだそうです。現在は無料の抗HIV薬を支給されている者は約4万人しかいませんが(ただし鉄道会社など政府とは別の組織が約1万人に支給しているそうです)、半年後には8万5千人にまで増えるとみられています。
インドの平均月収はおよそ1,750ルピー(約4,500円)ですが、一月あたりの抗HIV薬(ARV)の費用はおよそ1400ルピー(約3600円)です。
(谷口 恭)
半年前には54箇所しかなかった無料診療所が現在では91箇所となり、来年3月までには100箇所になる見込みだそうです。現在は無料の抗HIV薬を支給されている者は約4万人しかいませんが(ただし鉄道会社など政府とは別の組織が約1万人に支給しているそうです)、半年後には8万5千人にまで増えるとみられています。
インドの平均月収はおよそ1,750ルピー(約4,500円)ですが、一月あたりの抗HIV薬(ARV)の費用はおよそ1400ルピー(約3600円)です。
(谷口 恭)
2006年10月1日(日) インド、刑法377条を直ちに撤廃せよ!
インドの同性愛を禁じる馬鹿げた法律については以前にもお伝えしましたが(「インドでゲイの合法化認められず」(2006年7月31日)、最近インドで開催されたアジア太平洋会議で、この法律が取り上げられ、それを9月27日のロイター通信が報道していますのでここにお伝えします。
同性愛を禁じる法律は刑法377条で定められており、男性同性愛行為をおこなったものは最高で懲役10年の刑が科せられることになっています。ある活動家によれば、インドの警察はこの法律を理由に、公園や路地にいるゲイを脅して金銭を搾取しているそうです。
現在、この法律をめぐってインド最高裁で審議がおこなわれています。
インド国民エイズ管理機構(NACO, National AIDS Control Organization)の代表者Sujatha Rao氏は言います。
「刑法377条を廃止しなければ、男性と性交渉を持つ男性(MSM)は社会からますます疎外されるようになり、その結果HIVが蔓延する。コンドーム配布のようなエイズ予防プロジェクトを利用しているゲイはわずか数パーセントに過ぎない」
一方インド内務省は、「世論は同性愛を認めていない」と述べ、この法律の廃止に反対しています。
しかしもちろん、この法律に反対する世論もあります。最近、何人かの作家、法律家、芸術家などが共同で、この法律を撤廃するよう求めた嘆願書をインド政府に提出し、その後、この法律に反対する世論が活発になってきているようです。
北部ウッタルプラデシ州でゲイの擁護をしている著名な活動家Arif Jafar氏は言います。
「私は警察に殴られました。留置されているときは、水ももらえず他の囚人から虐待を受けることもありました」
Jafar氏もまたゲイで、刑法377条により昨年は47日間にわたり刑務所に留置されました。出所してからもこの件でラクナウ(ウッタルプラデシ州の州都)の裁判所に出席しなければなりません。
「こんな法律はただちに撤廃すべきだ。私が経験したような屈辱は誰にも味あわせたくない」
氏はロイターの取材にそう答えています。
NACOはインドのMSMをおよそ250万人と見積もっていますが、これよりもかなり多い可能性も考えています。そして、MSMの25%がHIV陽性と試算しています。
UNAIDSのデータでは、インドのHIV陽性者は約570万人で世界一位です。
(谷口 恭)
同性愛を禁じる法律は刑法377条で定められており、男性同性愛行為をおこなったものは最高で懲役10年の刑が科せられることになっています。ある活動家によれば、インドの警察はこの法律を理由に、公園や路地にいるゲイを脅して金銭を搾取しているそうです。
現在、この法律をめぐってインド最高裁で審議がおこなわれています。
インド国民エイズ管理機構(NACO, National AIDS Control Organization)の代表者Sujatha Rao氏は言います。
「刑法377条を廃止しなければ、男性と性交渉を持つ男性(MSM)は社会からますます疎外されるようになり、その結果HIVが蔓延する。コンドーム配布のようなエイズ予防プロジェクトを利用しているゲイはわずか数パーセントに過ぎない」
一方インド内務省は、「世論は同性愛を認めていない」と述べ、この法律の廃止に反対しています。
しかしもちろん、この法律に反対する世論もあります。最近、何人かの作家、法律家、芸術家などが共同で、この法律を撤廃するよう求めた嘆願書をインド政府に提出し、その後、この法律に反対する世論が活発になってきているようです。
北部ウッタルプラデシ州でゲイの擁護をしている著名な活動家Arif Jafar氏は言います。
「私は警察に殴られました。留置されているときは、水ももらえず他の囚人から虐待を受けることもありました」
Jafar氏もまたゲイで、刑法377条により昨年は47日間にわたり刑務所に留置されました。出所してからもこの件でラクナウ(ウッタルプラデシ州の州都)の裁判所に出席しなければなりません。
「こんな法律はただちに撤廃すべきだ。私が経験したような屈辱は誰にも味あわせたくない」
氏はロイターの取材にそう答えています。
NACOはインドのMSMをおよそ250万人と見積もっていますが、これよりもかなり多い可能性も考えています。そして、MSMの25%がHIV陽性と試算しています。
UNAIDSのデータでは、インドのHIV陽性者は約570万人で世界一位です。
(谷口 恭)