HIV/AIDS関連情報
2006年10月7日(土) インドのHIVカップル
10月4日のBBCニュースでは、インドのGujarat県で開催された、HIV感染者たちのためのユニークなお見合いイベントについてとりあげています。
インド国内に500万人以上存在するHIV感染者の孤立化を防ぐために開かれたこのイベントには45人の男性と15人の女性が参加し、3つのカップルが誕生して結婚することになりました。
Gujarat県のHIV/エイズ感染者のためのネットワーク(Gujarat State Network for People living with HIV/AIDS)のDaksha Patelさんは、インドで初めてHIV感染者のための結婚事務所を設立し、「HIVやエイズに苦しむ人々が普通の生活を送れるようになるための手助け」だと言っています。
事務所に登録し、人生のパートナーを求めるHIV感染者たちは25歳以下の未亡人や30代半ばの男性です。
結婚適齢期のHIV感染者は家族や友人から結婚をすすめられても、HIVに感染していることを周囲にあかすことがなかなかできないことや、また、既に子供もいるHIV感染者の未亡人は経済的にも社会的にも手助けを必要としていることを、Patelさんは訴えています。
彼女は、「HIV感染者はHIV感染者と結婚するのが最良。HIV感染者が感染していない人と結婚すると相手もHIVに感染してしまうから」、と強調しています。
Patelさんの運営するHIV感染者のための結婚事務所はメンバーを増やしつつありますが、10対1の割合で花嫁を探している男性メンバーが花婿を探している女性メンバーを大幅に上回るという問題にぶつかっています。
インドではエイズに対する差別が特に女性に対して強く、そのため女性がなかなかHIVに感染しているということをオープンにできない現状があります。インドで爆発的に増加しているHIV感染者への対策として、女性のメンバーを増加させることがPatelさんの結婚事務所の今後の課題となりそうです。
(大和 さちよ)
インド国内に500万人以上存在するHIV感染者の孤立化を防ぐために開かれたこのイベントには45人の男性と15人の女性が参加し、3つのカップルが誕生して結婚することになりました。
Gujarat県のHIV/エイズ感染者のためのネットワーク(Gujarat State Network for People living with HIV/AIDS)のDaksha Patelさんは、インドで初めてHIV感染者のための結婚事務所を設立し、「HIVやエイズに苦しむ人々が普通の生活を送れるようになるための手助け」だと言っています。
事務所に登録し、人生のパートナーを求めるHIV感染者たちは25歳以下の未亡人や30代半ばの男性です。
結婚適齢期のHIV感染者は家族や友人から結婚をすすめられても、HIVに感染していることを周囲にあかすことがなかなかできないことや、また、既に子供もいるHIV感染者の未亡人は経済的にも社会的にも手助けを必要としていることを、Patelさんは訴えています。
彼女は、「HIV感染者はHIV感染者と結婚するのが最良。HIV感染者が感染していない人と結婚すると相手もHIVに感染してしまうから」、と強調しています。
Patelさんの運営するHIV感染者のための結婚事務所はメンバーを増やしつつありますが、10対1の割合で花嫁を探している男性メンバーが花婿を探している女性メンバーを大幅に上回るという問題にぶつかっています。
インドではエイズに対する差別が特に女性に対して強く、そのため女性がなかなかHIVに感染しているということをオープンにできない現状があります。インドで爆発的に増加しているHIV感染者への対策として、女性のメンバーを増加させることがPatelさんの結婚事務所の今後の課題となりそうです。
(大和 さちよ)
2006年10月7日(土) 中国のNGOのHIV活動
中国保健省と国連の統計によると、中国の65万人がHIV/エイズで苦しんでおり、2005年に報告されたHIV感染者の半数以上が安全ではない性行為によって感染したことがわかっています。
こうした現況を踏まえ、中国政府はNGOのエイズ予防活動を前向きに支援する姿勢を見せています。副保健大臣のChen Xiaohong氏は、CHINA dailyのインタビューで、今後NGOとの協働によるエイズの統制と予防のメカニズムを強化していくことを誓いました。
中国の中央政府は過去10年間にわたり、HIVの予防及び必要に応じた治療をおこなってきました。2003年には薬を買えない人に対する抗HIV薬の支給、エイズ孤児への教育、無料のHIV検査などを開始しました。さらに政府と疾病管理局(Centres for disease control and prevention)が一丸となって公共教育やHIV検査、コンドームの配布などを行ってきました。
しかしながら、政府の活動範囲にも限りがあり、特に売春や麻薬売買は違法であることから、政府やセンターの役人が売春婦や麻薬中毒者などHIV感染率の高いとされるグループとコミュニケーションを図ることは困難です。その点、NGOであればそういった活動が可能です。
「私たちは彼ら(HIV感染者)と同じ気持ちだから、簡単に受け入れてもらえる」と、北京をベースとしているHIV陽性者のネットワーク「ARK of Love」の代表Meng Lin氏は言います。
現在「ARK of Love」は中国政府に認可されておらず、法的には任意団体にすぎませんが、こういった草の根レベルの活動をおこなっている組織に対する政府の態度は協力的になってきています。
「ARK of Love」のような草の根組織がいくつも存在する一方で、「中国女性連盟」(All-China Women's Federation)や「中国家族計画同盟」(China Family Planning Association)など約50の国家NGOがエイズ撲滅のために戦っています。このように国家NGOだけでなく「ARK of Love」のようなNGO、さらにはボランティアたちが患者と社会の橋渡し役となることが期待されています。
2002年以来、中央政府は2千万ユアン(約250万米ドル、約2億9,250万円)をNGOが行う231のプロジェクトやプログラムに充ててきました。
また、「エイズ、結核、マラリアグローバル基金」(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)も中国のNGOの活動を支援しています。2004年以来、同基金の第3ラウンドから375万ユアン(約45万米ドル、約5,265万円)が合計72のNGOに行きわたり、移民や若者、売春婦などに対する公共教育に使われました。同基金の第5ラウンドでは2、900万ドル(約33億9,300万円)が7月より支給されていますが、このうち43%がNGOの活動を支えるのに使われる予定です。
NGOと政府の協働によるエイズ撲滅活動が今後も更に強まりそうです。
(大和 さちよ)
こうした現況を踏まえ、中国政府はNGOのエイズ予防活動を前向きに支援する姿勢を見せています。副保健大臣のChen Xiaohong氏は、CHINA dailyのインタビューで、今後NGOとの協働によるエイズの統制と予防のメカニズムを強化していくことを誓いました。
中国の中央政府は過去10年間にわたり、HIVの予防及び必要に応じた治療をおこなってきました。2003年には薬を買えない人に対する抗HIV薬の支給、エイズ孤児への教育、無料のHIV検査などを開始しました。さらに政府と疾病管理局(Centres for disease control and prevention)が一丸となって公共教育やHIV検査、コンドームの配布などを行ってきました。
しかしながら、政府の活動範囲にも限りがあり、特に売春や麻薬売買は違法であることから、政府やセンターの役人が売春婦や麻薬中毒者などHIV感染率の高いとされるグループとコミュニケーションを図ることは困難です。その点、NGOであればそういった活動が可能です。
「私たちは彼ら(HIV感染者)と同じ気持ちだから、簡単に受け入れてもらえる」と、北京をベースとしているHIV陽性者のネットワーク「ARK of Love」の代表Meng Lin氏は言います。
現在「ARK of Love」は中国政府に認可されておらず、法的には任意団体にすぎませんが、こういった草の根レベルの活動をおこなっている組織に対する政府の態度は協力的になってきています。
「ARK of Love」のような草の根組織がいくつも存在する一方で、「中国女性連盟」(All-China Women's Federation)や「中国家族計画同盟」(China Family Planning Association)など約50の国家NGOがエイズ撲滅のために戦っています。このように国家NGOだけでなく「ARK of Love」のようなNGO、さらにはボランティアたちが患者と社会の橋渡し役となることが期待されています。
2002年以来、中央政府は2千万ユアン(約250万米ドル、約2億9,250万円)をNGOが行う231のプロジェクトやプログラムに充ててきました。
また、「エイズ、結核、マラリアグローバル基金」(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)も中国のNGOの活動を支援しています。2004年以来、同基金の第3ラウンドから375万ユアン(約45万米ドル、約5,265万円)が合計72のNGOに行きわたり、移民や若者、売春婦などに対する公共教育に使われました。同基金の第5ラウンドでは2、900万ドル(約33億9,300万円)が7月より支給されていますが、このうち43%がNGOの活動を支えるのに使われる予定です。
NGOと政府の協働によるエイズ撲滅活動が今後も更に強まりそうです。
(大和 さちよ)
2006年10月7日(土) インドネシアの人身売買に対する処罰法案
現在、インドネシアの刑法では人身売買はそれほど深刻な犯罪としてみなされておらず、最高でも懲役12年の刑罰となっています。これに対して政府は、人身売買が社会問題になっている現状を踏まえ、刑罰を重くする法案を草稿しました。
9月30日のChina dailyによりますと、 インドネシア政府が人身売買を深刻な犯罪として終身刑によって処罰できるように、法案を草稿しているととりあげています。その人身売買の法案によると、人身売買の取引者で犠牲者を死に至らしめた者は、終身刑か50億ルピア(43,000米ドル、約503万円)の罰金を処せられるとJakarta Postが報じています。また、人身売買の犠牲者がHIVを含む深刻な病気にかかった場合は、懲役20年の刑罰を科せられ、暴力によって人身売買を行えば懲役15年です。
法案は現在下院内に設置された社会福祉委員会(House of Representatives' Commission VIII on social welfare and the government)にて協議中で、法案の可決にいたっては、そのような犯罪を取り扱う国の専門機関が設立され、関連省庁大臣の指導のもと各県にも支部事務所を構えて人身売買を防ぐための政策を打ち出していく予定です。
さらに、海外の国家とも政府が協力して不法な人身売買を防ぎ、そのような協力によって犯罪ケースの相互的な見解の一致やその他の技術的な協力につながるものと期待されています。
(大和 さちよ)
9月30日のChina dailyによりますと、 インドネシア政府が人身売買を深刻な犯罪として終身刑によって処罰できるように、法案を草稿しているととりあげています。その人身売買の法案によると、人身売買の取引者で犠牲者を死に至らしめた者は、終身刑か50億ルピア(43,000米ドル、約503万円)の罰金を処せられるとJakarta Postが報じています。また、人身売買の犠牲者がHIVを含む深刻な病気にかかった場合は、懲役20年の刑罰を科せられ、暴力によって人身売買を行えば懲役15年です。
法案は現在下院内に設置された社会福祉委員会(House of Representatives' Commission VIII on social welfare and the government)にて協議中で、法案の可決にいたっては、そのような犯罪を取り扱う国の専門機関が設立され、関連省庁大臣の指導のもと各県にも支部事務所を構えて人身売買を防ぐための政策を打ち出していく予定です。
さらに、海外の国家とも政府が協力して不法な人身売買を防ぎ、そのような協力によって犯罪ケースの相互的な見解の一致やその他の技術的な協力につながるものと期待されています。
(大和 さちよ)
2006年10月5日(木) ヨーロッパでは4割以上が危険な性行為
先進国では軒並みHIVの新規感染が減少している・・・、そんなことが言われていたのはもう昔のことのようです。
EU加盟国でおこなわれた調査で、国民の40%以上がHIVの予防をせずに危険な性行為をおこなっていることが分かりました。
この調査は昨年の9月と10月に、15のEU旧加盟国と10の新加盟国の15歳以上のおよそ25,000人を対象におこなわれたもので、結果は10月2日のロイター通信が報じています。
「性交渉でHIVの予防をしているか」という質問に対して、41%が「していない」と答え、「している」と答えたのは48%でした。
コンドームについては、旧加盟国では42%が使用していると答え、主に東ヨーロッパから成る新加盟国では使用していると答えたのはわずか34%です。
旧加盟国では、2002年の調査結果と比較すると、コンドームを用いた安全な性行為をしている人が減少しています。
EUの保健関係者のMarkos Kyprianou氏は言います。
「HIVは予防できる疾患であることを忘れてはならない。予防がおろそかになってきていることに私は強い懸念を感じている」
最近のUNAIDSのデータによりますと、西ヨーロッパのHIV陽性者はおよそ50万人で、その数は増加傾向にあります。
この調査ではHIVに関する知識も問うています。45%が眼鏡の共用、便座に座る、献血をするなどといった理由でHIVに感染すると答えています。
特に新加盟国で誤った理解をしている人が多く、スロバキア人の47%がキスでHIVが感染すると答え、リトアニア人の28%は眼鏡を共用することで感染すると答えています。
(谷口 恭)
EU加盟国でおこなわれた調査で、国民の40%以上がHIVの予防をせずに危険な性行為をおこなっていることが分かりました。
この調査は昨年の9月と10月に、15のEU旧加盟国と10の新加盟国の15歳以上のおよそ25,000人を対象におこなわれたもので、結果は10月2日のロイター通信が報じています。
「性交渉でHIVの予防をしているか」という質問に対して、41%が「していない」と答え、「している」と答えたのは48%でした。
コンドームについては、旧加盟国では42%が使用していると答え、主に東ヨーロッパから成る新加盟国では使用していると答えたのはわずか34%です。
旧加盟国では、2002年の調査結果と比較すると、コンドームを用いた安全な性行為をしている人が減少しています。
EUの保健関係者のMarkos Kyprianou氏は言います。
「HIVは予防できる疾患であることを忘れてはならない。予防がおろそかになってきていることに私は強い懸念を感じている」
最近のUNAIDSのデータによりますと、西ヨーロッパのHIV陽性者はおよそ50万人で、その数は増加傾向にあります。
この調査ではHIVに関する知識も問うています。45%が眼鏡の共用、便座に座る、献血をするなどといった理由でHIVに感染すると答えています。
特に新加盟国で誤った理解をしている人が多く、スロバキア人の47%がキスでHIVが感染すると答え、リトアニア人の28%は眼鏡を共用することで感染すると答えています。
(谷口 恭)
2006年10月3日(火) 買春男性の過半数に特定のパートナー
少なくとも先進国の間では買春をする男性が減ってきているのではないか、最近はそのような意見を聞くことが増えてきましたが、どうやらそうではないようです。
10月2日のロイター通信に、医学誌「Sexually Transmitted Infections」で発表された、グラスゴーのSandyforl Intiativeという研究機関のTamsin Groom医師がおこなった研究が報告されていますので、ご紹介したいと思います。
*************************
買春をするスコットランドの男性のおよそ半数に、妻や恋人など特定のパートナーがいることが分かりました。また、調査の対象となった全男性の27%は定期的に買春をおこなっていることも分かりました。
買春をおこなう場所は国内派と海外派に分かれ、どちらでもおこなっている男性はあまりいないそうです。多くの男性はコンドームを使用すると回答していますが、海外派の方が使用しないことが多いそうです。
グラスゴーの性感染症クリニックを2002年10月から2004年2月までに受診した男性2,500人のうち、HIVに感染していた者はいませんでしたが、淋病、クラミジア、梅毒といった性感染症には5人に1人が感染していたそうです。
また、コンドームを用いずに危険な買春をおこなっていた男性の56%に特定のパートナーがいるという結果が出ています。
Groom医師は言います。
「調査結果から察すると、こういった男性は、海外の病原体が国内で蔓延する"架け橋"となっていると考えられる」
調査を受けた男性のなかには正直に回答していない者も少なくないと思われ、そのため実際は、買春行為で性感染症に罹患しそれを特定のパートナーに感染させているケースは調査結果よりも多いのではないか、そのようにみる専門家は少なくありません。
今回の調査で、買春をおこなっている男性が最も多いヨーロッパの国はスペインで39%にものぼることが分かりました。アジア諸国ではヨーロッパよりも買春が普及しており、タイでは73%の男性が買春をしている、とGroom医師は述べています。
**************************
ロイター通信のこの記事には日本のデータが掲載されていませんが、(何度もこのウェブサイトで述べているように)、海外で性感染症に罹患し、それを奥さんや恋人に感染させている日本人男性は珍しくないということを私は日々の臨床で感じています。
(谷口 恭)
10月2日のロイター通信に、医学誌「Sexually Transmitted Infections」で発表された、グラスゴーのSandyforl Intiativeという研究機関のTamsin Groom医師がおこなった研究が報告されていますので、ご紹介したいと思います。
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買春をするスコットランドの男性のおよそ半数に、妻や恋人など特定のパートナーがいることが分かりました。また、調査の対象となった全男性の27%は定期的に買春をおこなっていることも分かりました。
買春をおこなう場所は国内派と海外派に分かれ、どちらでもおこなっている男性はあまりいないそうです。多くの男性はコンドームを使用すると回答していますが、海外派の方が使用しないことが多いそうです。
グラスゴーの性感染症クリニックを2002年10月から2004年2月までに受診した男性2,500人のうち、HIVに感染していた者はいませんでしたが、淋病、クラミジア、梅毒といった性感染症には5人に1人が感染していたそうです。
また、コンドームを用いずに危険な買春をおこなっていた男性の56%に特定のパートナーがいるという結果が出ています。
Groom医師は言います。
「調査結果から察すると、こういった男性は、海外の病原体が国内で蔓延する"架け橋"となっていると考えられる」
調査を受けた男性のなかには正直に回答していない者も少なくないと思われ、そのため実際は、買春行為で性感染症に罹患しそれを特定のパートナーに感染させているケースは調査結果よりも多いのではないか、そのようにみる専門家は少なくありません。
今回の調査で、買春をおこなっている男性が最も多いヨーロッパの国はスペインで39%にものぼることが分かりました。アジア諸国ではヨーロッパよりも買春が普及しており、タイでは73%の男性が買春をしている、とGroom医師は述べています。
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ロイター通信のこの記事には日本のデータが掲載されていませんが、(何度もこのウェブサイトで述べているように)、海外で性感染症に罹患し、それを奥さんや恋人に感染させている日本人男性は珍しくないということを私は日々の臨床で感じています。
(谷口 恭)