HIV/AIDS関連情報

2007年2月3日(土) タイ・ラオス国境で性感染症予防活動

 ミャンマー、ラオス、カンボジアといったタイと接している国では、国境を越えてタイに不法入国する人が多いという問題がありますが、国境付近では性感染症が蔓延しやすいという特徴もあります。

 ウボンラチャタニ県というイサーン地方にある大きな県をご存知でしょうか。この県には比較的大きな空港があり、外国人にも人気のあるきれいな観光地です。ウボンラチャタニ県はラオスと接しており、チョンメク(Chong Mek)という国境の町では、週末になると5千人ものラオス人とタイ人で賑わいます。(最近、タイとラオスは良好な関係にあり、タイ人がラオスに、ラオス人がタイに入国するのが容易になってきています)

 1月29日のバンコクポストによりますと、ウボンラチャタニの保健局は、この国境地点でのHIVを含む性感染症の予防プロジェクトを開始しました。このプロジェクトには、ラオスのチャンパサク県と一部のNPOも協力しています。

 このプロジェクトは国境付近のカラオケで働く女性を助けるために発足しています。カラオケで働く女性たち(おそらくほとんどはラオス人)は売春をしている(させられている)ことが多いからです。

 ウボンラチャタニ県保健局の関係者によりますと、現在ウボンラチャタニではHIV陽性者が3千人を超え増加傾向が続いています。

 このプロジェクトのひとつに性感染症センターの設立があります。このセンターは、「バーンカンエン」(「友情の家」という意味です)という名前で、HIVを含む性感染症に関するアドバイスをおこなっています。

 地元にはシリンドホーン(Sirindhorn)病院という病院があり、そこで働く医師と看護師が隔週の水曜日にこのセンターに赴きボランティアで治療にあたっているそうです。

(谷口 恭)

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2007年2月3日(土) 子宮けい癌にまつわる4つの俗説

 全米では先月、子宮けい癌の月間キャンペーンがおこなわれたようです。この月間キャンペーンに合わせて、ミシガン大学の子宮けい癌の専門家たちが正しい知識の啓発活動をおこない、1月26日のロイターヘルスが報道しています。

 ロイターヘルスのこの記事では、子宮けい癌にまつわる俗説を4つ取り上げています。

 ひとつめの俗説は、「わたしは年をとっているから子宮けい癌の検査をしなくていい」というものです。しかしこれは完全な誤りであると、ミシガン大学の臨床助教授であるローレン・ゾシュニック(Lauren Zoschnick)博士は指摘しています。博士は言います。

 「たしかに、全米がん協会は4年前、子宮けい癌の検査は65歳まででよいとするようなコメントを発表した。しかし、我々の調査では、これくらいの年齢の女性が未亡人であったり離婚を経験したりしていて、性活動が再び活発になっている場合が多いことが分かった。子宮がある限りは子宮けい癌のリスクはある。そして、我々の調査で、この世代の子宮けい癌やHIV感染がわずかではあるが増加傾向にあることが分かった」

 ゾシュニック博士は、「高齢者は必ずしも毎年検査を受ける必要がなく、その人の性生活の状況に応じて2~3年に一度でよい」、としています。

 2つめの俗説は、「あたしはまだ若いから子宮けい癌を心配する必要はない」というものです。子宮けい癌の(全米の)平均年齢は48歳と若い年齢ではありませんが、がん自体は20代でできている可能性もあります。通常、子宮けい癌は、まずHPV(ヒトパピローマウイルス)が子宮けい部に感染して、子宮けい部が異形成と呼ばれる前がん状態(がんの一歩手前の状態)になります。検査で若い女性に異形成が見つかることはよくあることです。

 3つめの俗説は、「子宮けい癌は予防できない」というものです。ミシガン大学のキャロリン・ジョンストン(Carolyn Johnston)博士は言います。

「子宮けい癌はほぼ完全に予防することができる。2006年にFDA(全米食品医薬品局)はHPVのワクチン(Gardasil)を承認した。このワクチンは4種類のHPVを予防する効果があることが分かっている。4種のうち2つは子宮けい癌をひきおこすHPVに効果があり、残りの2つはイボ(尖圭コンジローマ)をひきおこすHPVを予防する」

 4つめの俗説は、「あたしは性交渉をしないからワクチンをうつ必要がない」というものです。ミシガン大学のゾシュニック博士によりますと、子宮けい癌を引き起こすHPVはオーラルセックス、アナルセックス、性器への接触などによっても感染します。博士は言います。 

 「(男性の)性器からの分泌液は活動性の高いウイルスを含んでいる。腟交渉をしなくてもHPVは感染する。どのようなかたちでウイルスと接触しても、ウイルスは容易に腟内に侵入し子宮けい部にたどり着き、がん細胞の増殖が始まるのである」

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 性行動が活発な女性であれば年に一度は子宮けい癌の検査を受けるべきであるというのは世界共通の認識です。しかしながら、日本人を含めて大勢の女性は年に一度も検査を受けていません。

 昨年から先進国諸国ではワクチンが市場に登場しています。以前お伝えしましたように、オーストラリアでは12歳から26歳の女性は全員無料でワクチン接種ができます。(「オーストラリア、子宮けい癌のワクチン無料接種」2006年8月30日) 日本ではもう少し先になりそうです。

 尚、子宮けい癌の検査は子宮の入り口を綿棒で軽くこすり(痛みはありません)、それを顕微鏡で観察することによっておこないます。産婦人科や性病科の外来ならどこでもできますし、オープンしたばかりの「すてらめいとクリニック」でも子宮けい癌検査目的の患者さんは少しずつ増えてきています。

(谷口 恭)

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2007年2月3日(土) ニューヨークが無料コンドームの大量配布

 1月25日のAP通信によりますと、ニューヨークのブルームバーグ市長はHIVを含む性感染症を減少させることを検討しており、その戦略のひとつにコンドームの無料配布の拡大があげられています。

 ニューヨークではこれまでも市から大量のコンドームが無料で配布されていますが、今後さらにその数を増やしていくそうです。関係者の話によれば、多くの人々に携帯してもらうためコンドームのパッケージをお洒落にすることが検討されているようです。現在浮上しているアイデアは、地下鉄をモチーフとしパッケージに地図を載せるというものです。ニューヨーク市健康局のトーマス・フリーデン(Thomas Frieden)長官は、「人々はノンブランドのものよりもブランドを好む。それはコーラや薬品といったものでも同じだ」、と述べています。

 現在ニューヨーク市は毎月150万個、年間では1,800万個の無料コンドームを配布しています。数百もの団体が無料コンドームを市から仕入れて、クリニック、バー、レストラン、ネイルサロン、クラブ、さらに牢獄といった場所でも無料配布がおこなわれています。

 無料配布されているコンドームは個人が直接ニューヨーク市に注文することはできませんが、組織であればどのような団体でも無制限に注文することができます。2005年にオンラインオーダーシステムを導入してから一気に注文数が増加しています。

 こういった無料コンドームの配布は、フリーデン長官が健康局長官に就任した2002年から急速に広まっています。フリーデン長官のオフィスの外には、無料コンドームを入れた箱が用意されているそうです。

 現在ニューヨークには10万人以上のHIV陽性者が住んでおり、65歳未満のニューヨーカーの死因第3位がエイズです。

(谷口 恭)

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2007年2月3日(土) バイアグラがHIV感染を促進?

 1月22日のAP通信によりますと、アメリカのエイズ関係のNPO「エイズヘルスケア財団」が22日、ファイザー製薬に対し訴訟を起こしました。ファイザー製薬の販売するED改善薬「バイアグラ」がHIVや他の性感染症の蔓延を助長しているというのが訴訟の理由です。

 このNPOは、「ファイザー製薬の広告がバイアグラの誤った使用を促している」としています。ある調査により、バイアグラは結晶のメタンフェタミン(覚醒剤ですがこれを特に"アイス"と呼びます)と同時にパーティで「カクテルドラッグ」として用いられていることが分かったそうです。

 "アイス"に限らず覚醒剤は一般的に性的な興奮を呼び起こしますが、勃起力を損なうことがあります。そこで、勃起力を維持するためにバイアグラが使用されている、とこのNPOのスタッフは述べています。

 ファイザー製薬の広告には、「週末のMVPになろう(Be this Sunday's MVP)」とのコピーがあり、同NPOはこのコピーがパーティでの使用を促進していると考えています。裁判はロサンジェルス高等裁でおこなわれ 同社がニューイヤーパーティなどのパーティでの使用を促すような広告を流すことをやめさせることが目的のようです。

 また、このNPOはFDA(米国食品医薬品局)に対しても、バイアグラの広告をファイザー製薬が規制するように求めています。FDAは現在この件についてはコメントをしていませんが、2004年にはファイザー製薬のバイアグラの広告は、性行為の薬ということを強調し勃起不全の治療薬であることを明記していないことに対して警告をおこなったという経緯があります。また、広告に主要な副作用を記載していないことに対しても問題視しています。

 一方、ファイザー製薬は、自社の広告がバイアグラのパーティでの使用を促進しているということを否認しています。同社は、米国の9つの州で2003年に6百万ドルを寄附しエイズ予防につとめる活動をおこなっています。

 バイアグラの昨年の売り上げは米国だけで8億6千万ドル(約1,032億円)にのぼります。この訴訟はファイザー製薬が20億ドルのコスト削減をするために1万人をリストラした直後におこされています。

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 バイアグラは非常に人気のある医薬品で、私も日々の臨床で処方していますが、患者さんのなかには個人輸入や海外の薬局で購入している人がいます。海外で売られているバイアグラは100mgが一般的ですが、日本で認可が下りているのは25mgと50mgだけです。日本人が100mgを服用するのは大変危険なことですが、それに気づいている人があまりにも少ないことに驚かされます。

 バイアグラが原因でHIVを含む性感染症が蔓延するかどうかは分かりませんが、バイアグラを治療目的以外で使用することが危険なことはもっと注目されるべきでしょう。

(谷口 恭)

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2007年2月2日(金) タイ、海外の指名手配中の小児愛者を調査

 先日、イギリスの幼児性的虐待者がタイで逮捕されたという事件をお伝えしましたが(「イギリスのロリコン教師がバンコクで逮捕」2007年1月30日)、タイには世界中から小児愛者が集まってくると言われています。

 それを受けてなのか、現在タイの入国管理局は、母国で幼児虐待の容疑で指名手配を受けている外国人18人のブラックリストをもとにタイに入国していないかを調査しています。

 1月29日のバンコク週報などの情報によりますと、幼児への性犯罪で指名手配を受けている18人のうち、14人がアメリカ人、残りはカナダ人、コロンビア人、メキシコ人、そして日本人です。氏名も公開されています。

 指名手配を受けている日本人は、過去にバンコクでタイ雑貨店を経営しており、昨年実家のある熊本県に戻っていたときに、インターネットオークションで児童ポルノを販売していた容疑で指名手配を受けています。

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 以前別のところでも述べましたが、タイには世界中から小児愛者が集まり、パタヤの小児買春の常連客は200から300人にもなるという研究報告もあります。病的な小児愛の治療がむつかしいのは事実ですが、自分の国に外国人が小児買春目的でやって来られるタイ人の身にもなってもらいたいものです。

(谷口 恭)

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