HIV/AIDS関連情報

2007年2月6日(火) インドの出稼ぎ労働者に対するHIV対策

 2月1日のロイター通信によりますと、インドのエイズ撲滅局は、国内の出稼ぎ労働者たちのためのHIVから身を守るための計画があることを1月30日に発表しました。

 現在世界一の約570万人のHIV陽性者を抱えるインドでは、地方からの出稼ぎ労働者がハイリスクグループのひとつとなっています。11億人の人口を有するインドは、4人に1人が地方からの出稼ぎ労働者で、彼らは仕事を求めて国中を移動しています。

 このうち約5%に相当する1,200万人から1,500万人が、HIVが広く蔓延している都市に赴き短期間の労働を終えた後、故郷に戻るそうです。現在、インドの国民エイズ管理局(NACO, National AIDS Control Organization)は、このグループに対するHIV感染予防を検討しています。

 NACOの代表者であるスジャータ・ラオ(Sujatha Rao)氏は言います。

 「こういった出稼ぎ労働者たちは集団で行動することが多いと言えます。彼らがHIVの蔓延している地域に住むのなら、我々は彼らをHIV感染から守らなければなりません。我々はこういった出稼ぎ労働者たちが国内のどこで生活しているかを調査し、ピア・エデュケーションを通して、HIVの検査を受けてもらうようにし、コンドームの使用を呼びかけたいのです」

 専門家によりますと、インドのHIVは地方で急速に広がっています。多くの男性出稼ぎ労働者たちは、売春婦からHIVに感染し、それを故郷に帰って自分の妻にうつしています。実際、インドのHIV陽性者の半分以上は地方に住んでいます。

 4月から始まるインドの第三次国民エイズ管理計画(NACP-Ⅲ)では、26億ドル(約3,120億円)の予算が5年間で投じられることになっています。

 ラオ氏は、出稼ぎ労働者がどのようなルートで、ある場所から次の場所に労働を求めて移動するのかを追跡し、HIVが広く蔓延している地域に移動する前に予防対策を講じたいとしています。

 NACP-Ⅲの予算の大半は予防活動に使われる予定で、売春婦や出稼ぎ労働者といったハイリスクグループへのコンドームの配布もおこなわれることになっています。NACOによりますと、インドにはおよそ2百万人の売春婦がいますが、そのうちコンドームを使用しているのは半数に過ぎません。NACOはこの数字を3年ないし4年のうちに80%にまでもっていきたいと考えています。

 ラオ氏は言います。

 「忠誠や禁欲を出稼ぎ労働者たちに話しても現実的ではありません。率直にコンドームの使用を訴えるべきなのです」

 インドは無料抗HIV薬を支給する政府管轄のHIV治療センターを増やすことも計画しています。現在101ある治療センターの数を3月までに121にする予定です。

 NACOによりますと、無料治療プログラムがうまく機能していない最大の理由は、インドでは感染者の86%が自身の感染に気付いていないということです。

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 インドでは86%が自身のHIV感染に気付いていない・・・。日本にも自身が感染していることに気付いていない人は少なくありません。

(谷口 恭)

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2007年2月6日(火) フロリダ、黒人のHIV新規感染が減少

 CDC(全米疾病管理局)が週毎に発行している「疾病率と死亡率に関する週報」の2月2日号によりますと、フロリダでは1999年から2004年の間に新たにHIVに感染した黒人が大幅に減少していることが分かりました。(2月1日のロイターヘルスが報道しています)

 この調査は、CDCとフロリダ保健局が共同でおこなったもので、黒人の年あたりのHIV新規感染は、1999年に人口10万人あたり224.4人だったのが、2004年には134.0人にまで減少しています。男女別に減少率をみると、それぞれ9.1ポイント、10.2ポイントの減少となっています。ハイリスクグループ毎にみたときには、男性同性愛者以外はすべてのグループで減少となっています。

 淋病についても黒人の男女で罹患率が減少しており、さらにHIVの検査を受ける者も増加しています。

 他の人種をみてみると、ヒスパニックと白人の女性もある程度は減少傾向が認められますが黒人ほどではありません。また、ヒスパニックと白人の男性ではこの期間の減少は認められなかったそうです。

 研究者は、黒人の間での新規感染の減少の理由として、ハイリスクの性行為が減ったからではないか、とみています。

 しかしながら、減少しているといっても、HIVや淋病の罹患率は他の人種と比較すれば黒人は最も多く、今後性感染症の予防をさらに徹底していく必要があります。

(谷口 恭)

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2007年2月6日(火) オーストラリア、10人に1人が"アイス"を経験

 最近、オーストラリアで国内初の違法薬物に関する大規模調査がおこなわれ、過去1年間に"アイス"(メタンフェタミン(覚醒剤)を結晶化させたもの)や他のかたちの覚醒剤を経験したことのある者は50万人にのぼることが明らかとなりました。(1月31日のNEWS.COM.AUが報道しています)

 これまでにメタンフェタミンを一度でも使用したことのある者は、オーストラリア全体で10人に1人という結果となり、国家自体が暴力犯罪やHIV蔓延の危機に曝されているということが報告書で述べられています。また、覚醒剤(メタンフェタミン)依存症は73,000人、ヘロイン(麻薬)依存症は28,000人にのぼることが明らかとなりました。

 この調査はオーストラリア国民薬物委員会(Australian National Council on Drugs)によって実施され、報告書では、東南アジア諸国のドラッグ供給者がオーストラリアで"ビジネス"を拡大させようとしていることが指摘されています。アジア諸国のドラッグ製造者からみれば、オーストラリアは莫大な利益の見込める輸出国であり、今後東南アジア内での需要をしのぐことも予想されるそうです。

 メタンフェタミンの流通量が増えることによって、殺人や凶悪暴力犯罪、さらにHIVの蔓延につながることが危惧されています。

 オーストラリア国民薬物委員会のジョン・ヘロン(John Herron)医師は次のように述べています。

 「メタンフェタミン常用者が体験する妄想が暴力行為につながることは珍しくない」

 "アイス"は(日本市場も含めて)最もポピュラーな覚醒剤の形態で、常用者の4人に1人が精神症状をきたすと言われています。なかでも攻撃的になったり暴力行為をおこしたりすることはよくあり、同委員会はこういった攻撃性は使用を開始して12ヵ月以内に起こることを指摘しています。

 ヘロン医師は続けます。

 「オーストラリアは隣国と協力し、覚醒剤の製造、密輸、使用のいずれをも阻止していかなければならない。アジア太平洋諸国で、メタンフェタミン、とりわけ"アイス"を製造している秘密の工場の数と規模は拡大し続けている」

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 私がこの話をあるイギリス人にしたときに、彼は「10人に1人は多いと感じる」と言いました。それは、イギリスを含む欧米諸国では、覚醒剤よりもコカインやLSDの流通量の方が多いからでしょう。(MDMAは、欧米、アジアとも最も流通量の多い薬物です)

 覚醒剤に関して言うならば、私は日本もオーストラリアと同じような状態ではないかと感じています。「"アイス"は静脈注射ではなく吸入("アブリ")だから大丈夫」、と考えている日本人は少なくありませんが、彼(女)らは、吸入から静脈注射へ移行する依存者がどれだけ多いかを知っているのでしょうか・・・。

(谷口 恭)

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2007年2月5日(月) マイクロビサイドはHIVを予防しない

 マイクロビサイド(microbicide)というジェルをご存知でしょうか。これは性交渉の前に腟内にあらかじめ塗布しておくことによって、侵入してきたHIVを死滅させる薬剤で、コンドームの代用としてHIV予防に有効と考えられ、昨年の国際エイズ学会でも最も話題となったひとつです。マイクロビサイドの主成分はテノフォヴィル(Tenofovir)という抗HIV薬です。

 GINAではこのジェルに関するニュースをこれまでウェブサイトで取り上げていませんでしたが、それはこのジェルの使用に必ずしも賛成の立場にはないからです。理由は、有効性が科学的に確証されていないことと、他の性感染症を防ぐことができないというものです。

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 2月1日のAP通信によりますと、インドとアフリカ諸国でおこなわれていたマイクロビサイドの試験的使用が中止となりました。マイクロビサイドの使用で、HIV感染のリスクを減少させるどころか、かえって感染しやすくなることが判ったからです。

 この研究は、南アフリカ共和国、ベニン、ウガンダ、インドの1,500人の女性を対象としたもので、マイクロビサイドを使用していたグループが、偽薬を使用していたグループよりも大勢の女性がHIVに感染していたことが判りました。また、これらの国々でHIVに新たに感染した女性のうち、半数以上がマイクロビサイドを使用していたことも判りました。

 このマイクロビサイドは、カナダのポリデックス(Polydex)という会社が開発したもので、商品名をアッシャーセル(Ushercell)と言います。綿を基材とした化合物に硫酸セルロースを加えたジェルの形をとっています。

 この研究はバージニア州にあるCONRADという研究グループによっておこなわれ、この研究機関には国際開発米国局(The United States Agency for International Development)やビル&メリンダ・ゲイツ基金も資金協力をしていました。

 また、別の研究機関は、ナイジェリアの1,700人の女性を対象にアッシャーセルの試験的使用をおこなっていましたが、こちらも中止となりました。この研究スタッフのひとりは、「マイクロビサイドがHIV感染予防に有効という科学的確証は全く得ることができなかった」、とコメントしています。

 アッシャーセルは大規模使用を開始する前に11の事前研究を主に米国でおこなっていましたが、これらの研究ではいずれも有効性が示されていたそうです。

 アッシャーセル以外にもカラガード(Carraguard)という名前の別のマイクロビサイドがあり、こちらは現在も試験的調査が続けられています。3月に調査は終了し結果は今年中に発表される予定です。カラガードは、ニューヨークを拠点とする研究機関で開発され、南アフリカの6,000人の女性を対象におこなわれた事前の臨床試験では安全性に問題はなかったそうです。

 マイクロビサイドに巨額の資金を提供していたゲイツ基金のスポークスマンは、「我々は安全で有効性の高いマイクロビサイドが開発されることを信じている」とコメントしています。

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「コンドームを使いましょう」は理想論であって、実際は世の多くの男性がコンドームの使用を拒否するという現実があり、それならば男性側に知識がなくても女性をHIV感染から守る方法を模索する、という考え方は理解できるのですが、マイクロビサイドを使用してHIVに感染した女性のことを考えると、彼女たちは楽観的な期待の"被害者"であり、科学への信頼が損なわれたと言えるでしょう。

 また、マイクロビサイドに過度に期待する人たちに尋ねたいのは、他の性感染症についてはどのように考えているのかということです。HIV以外にも死に至る性感染症はいくつもあるのですから。

(谷口 恭)

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2007年2月3日(土) バンコク、ナイジェリア男性が大量の"アイス"を所有

 1月23日のバンコクポストによりますと、ナイジェリアの30歳の男性が覚醒剤所有で警察に逮捕されました。

 警察によりますと、押収されたのはメタンフェタミンの結晶(通称"アイス")1キログラム、300万バーツ(約900万円)相当で、X線を遮断するためカーボンシートにくるまれた状態でバッグに入れられていたそうです。覚醒剤以外に偽物のレソト(アフリカ南部の国)のパスポートが押収されています。

 この男性が中年男性の顧客に覚醒剤を手渡すという内密の情報があったため、警察が捜査し、取引に行く路上で逮捕されたようです。この男性は、3つのエージェントから覚醒剤を仕入れており、いくつかのナイトクラブに出入りする者に販売していた他、複数のヨーロッパの国への輸出もおこなっていたそうです。この男性は覚醒剤を販売目的で所有していた容疑で逮捕されましたが、男性は容疑を否認しています。

 この男性が逮捕されたのはスクンビットのソイ64、プラカノンという地区です。プラカノンにはBTS(バンコクのモノレール)の駅もあり、日本人もたくさん住んでいます。

(谷口 恭)

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