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2007年2月3日(土) 子宮けい癌にまつわる4つの俗説

 全米では先月、子宮けい癌の月間キャンペーンがおこなわれたようです。この月間キャンペーンに合わせて、ミシガン大学の子宮けい癌の専門家たちが正しい知識の啓発活動をおこない、1月26日のロイターヘルスが報道しています。

 ロイターヘルスのこの記事では、子宮けい癌にまつわる俗説を4つ取り上げています。

 ひとつめの俗説は、「わたしは年をとっているから子宮けい癌の検査をしなくていい」というものです。しかしこれは完全な誤りであると、ミシガン大学の臨床助教授であるローレン・ゾシュニック(Lauren Zoschnick)博士は指摘しています。博士は言います。

 「たしかに、全米がん協会は4年前、子宮けい癌の検査は65歳まででよいとするようなコメントを発表した。しかし、我々の調査では、これくらいの年齢の女性が未亡人であったり離婚を経験したりしていて、性活動が再び活発になっている場合が多いことが分かった。子宮がある限りは子宮けい癌のリスクはある。そして、我々の調査で、この世代の子宮けい癌やHIV感染がわずかではあるが増加傾向にあることが分かった」

 ゾシュニック博士は、「高齢者は必ずしも毎年検査を受ける必要がなく、その人の性生活の状況に応じて2~3年に一度でよい」、としています。

 2つめの俗説は、「あたしはまだ若いから子宮けい癌を心配する必要はない」というものです。子宮けい癌の(全米の)平均年齢は48歳と若い年齢ではありませんが、がん自体は20代でできている可能性もあります。通常、子宮けい癌は、まずHPV(ヒトパピローマウイルス)が子宮けい部に感染して、子宮けい部が異形成と呼ばれる前がん状態(がんの一歩手前の状態)になります。検査で若い女性に異形成が見つかることはよくあることです。

 3つめの俗説は、「子宮けい癌は予防できない」というものです。ミシガン大学のキャロリン・ジョンストン(Carolyn Johnston)博士は言います。

「子宮けい癌はほぼ完全に予防することができる。2006年にFDA(全米食品医薬品局)はHPVのワクチン(Gardasil)を承認した。このワクチンは4種類のHPVを予防する効果があることが分かっている。4種のうち2つは子宮けい癌をひきおこすHPVに効果があり、残りの2つはイボ(尖圭コンジローマ)をひきおこすHPVを予防する」

 4つめの俗説は、「あたしは性交渉をしないからワクチンをうつ必要がない」というものです。ミシガン大学のゾシュニック博士によりますと、子宮けい癌を引き起こすHPVはオーラルセックス、アナルセックス、性器への接触などによっても感染します。博士は言います。 

 「(男性の)性器からの分泌液は活動性の高いウイルスを含んでいる。腟交渉をしなくてもHPVは感染する。どのようなかたちでウイルスと接触しても、ウイルスは容易に腟内に侵入し子宮けい部にたどり着き、がん細胞の増殖が始まるのである」

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 性行動が活発な女性であれば年に一度は子宮けい癌の検査を受けるべきであるというのは世界共通の認識です。しかしながら、日本人を含めて大勢の女性は年に一度も検査を受けていません。

 昨年から先進国諸国ではワクチンが市場に登場しています。以前お伝えしましたように、オーストラリアでは12歳から26歳の女性は全員無料でワクチン接種ができます。(「オーストラリア、子宮けい癌のワクチン無料接種」2006年8月30日) 日本ではもう少し先になりそうです。

 尚、子宮けい癌の検査は子宮の入り口を綿棒で軽くこすり(痛みはありません)、それを顕微鏡で観察することによっておこないます。産婦人科や性病科の外来ならどこでもできますし、オープンしたばかりの「すてらめいとクリニック」でも子宮けい癌検査目的の患者さんは少しずつ増えてきています。

(谷口 恭)