HIV/AIDS関連情報

2007年2月9日(金) テキサス州、子宮けい癌のワクチンが義務化

 子宮けい癌のワクチンが発売され、先進国の間では少しずつ普及しだしています。すでにオーストラリアでは12歳から26歳の全女性が無料でこのワクチンを接種できるようになっています。(詳細は「オーストラリア、子宮けい癌のワクチン無料接種」2006年8月30日

 米国テキサス州では、11歳と12歳の女生徒全員にこのワクチンの接種が義務付けられることになります。

 2月5日のロイター通信によりますと、女子生徒へのこのワクチン接種を義務化するのは全米初で、同州のペリー知事は、州立の学校の生徒全員が接種すべきワクチンのリストにこの子宮けい癌のワクチンを加えました。

 しかし、同知事のこの決定は物議をかもしています。いくつかの宗教団体や保護者団体が、ワクチン接種を義務化することによって未成年の性行動を活発にする、という理由で同知事の決定に反対しています。

 ペリー知事は、「このワクチンは確実に子宮けい癌を防ぐことができる」と述べ、ワクチン接種義務化の正当性を主張していますが、同時に、「宗教的な理由などでワクチン接種を拒否することもできる」、と付記しています。

 テキサス州で接種がおこなわれるのは、メルク社のガーダシル(Gardasil)という昨年6月に米国で承認されたワクチンです。このワクチンは4種類のHPV(ヒトパピローマウイルス)を予防します。4種類のうち2種類は70%以上の子宮けい癌の原因となるHPVで、残りの2つは性器にできるイボ(尖圭コンジローマ)の原因のHPVです。

 現時点では、このワクチンの適用は9歳から26歳の女性となっています。臨床試験ではHPVが引き起こすこれらふたつの疾病(子宮頚癌と尖圭コンジローマ)を100%予防できたという結果が得られています。

 このワクチンは、テキサス州の9歳から18歳までの女子なら誰もが(おそらく無料か低料金で)接種可能です。また、19歳から21歳までの女性でメディケイド(アメリカの比較的低所得者を対象とした公的保険)に加入している者も保険を使って接種することが可能です。

 全米の35歳から54歳の女性のがんで5番目に多いのが子宮けい癌です。テキサス州によりますと、同州は、全米で2番目に子宮けい癌の罹患者が多いそうです。

 子宮けい癌は世界中で毎年30万人の女性の命を奪っています。最近は若い世代に蔓延していることもあり、このワクチンは性行動を開始する前に接種するのが最適であると言われています。

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 日本では子宮頚癌のワクチンはまだ承認されていません。子宮けい癌も尖圭コンジローマも若い世代に蔓延しているのは日本も同じなので、1日も早く実用化できる日を待ちたいと思います。

(谷口 恭)

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2007年2月7日(水) 日本のHIV感染が過去最高に

 2月7日の共同通信によりますと、昨年(2006年)1年間に国内で新たに報告されたHIV感染者数は914人、エイズ発症数は390人で、計1,304人に上りました。厚労省のエイズ動向委員会が7日、速報値として発表しています。今後まとめる確定値で数が増減する可能性もありますが、新規感染者、エイズ発症者数とも過去最多は間違いないようです。合計が年間1,000人を超えたのは2004年から3年連続で、大半が性感染という結果がでています。

 日本では、まだまだ検査を受けている人が少ないようです。オーラルセックスも含めてunprotected sex(コンドームを用いない性行為)の経験のある人は検査を考えてみるべきでしょう。

(谷口 恭)

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2007年2月7日(水) 南アのHIV蔓延は富裕層に

 南アフリカ共和国は世界第2位のHIV陽性者をかかえる国ですが、これまでは感染者の多くは貧困層であると考えられていました。しかし最近の傾向はそうではないようです。

 1月31日のロイター通信によりますと。南アフリカ大学と民間企業の共同研究で、専門職に従事する者やフルタイムで勤務する者など、同国の経済発展を担う立場の人たちの間でHIV感染が急速に広がっていることが明らかとなりました。

 従来、同国では、正しい知識を欠き、適切な治療や保健サービスを受けることのできない地方の貧困層の間でHIV感染が蔓延していると考えられてきました。現在も、30歳以下の若い世代が最たるハイリスクグループであることには変わりありませんが、従来はハイリスクと考えられていなかった高い教育を受けた富裕層の間でも急速にHIV感染が広がっていることが今回の研究で判ったのです。

 同国のHIV陽性者は2002年に6.2%だったのが2004年には8.3%にまで上昇しており、増加率は34%になります。

 同国ではフルタイムで勤務する者は国民の半分程度ですが、この層でみると、2002年の罹患率が14.4%なのに対し2005年には19.2%と36%も上昇しています。

 一方、失業者の間では、上昇率は2002年の11%から2005年の18.4%と、こちらも高い数字を示していますが、陽性率はフルタイム従業員よりも低くなっています。

 年齢別にみると30歳から34歳の間で最も急速に感染率が増加しています。これは彼(女)らから仕事を奪うことにつながりかねません。

 仕事別ではなく実際の収入ベースでみると、高収入上位3分の1は、貧困層3分の1よりも低い感染率(8.5%と23.4%)ですが、感染者の上昇率でみれば、2002年から2005年で、貧困層が14%の上昇なのに対し、高収入上位3分の1の層では39%も増加しています。

 研究者のひとりは次のように述べています。

 「この国のハイリスクグループは次第に上の世代に、そして次第に富裕層に移行してきている。今、急激にHIV感染が広がっているのは、非雇用者(従業員)よりもむしろ雇用者(経営者)たちである。銀行口座を持っていない人の間でHIVが蔓延しているわけではない。HIVが広がっているのは投資をおこなうような人たちの間である。HIVの蔓延がこの国の経済に大きな打撃を与えることになるだろう」

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 日本を含む先進国でも、HIVの新規感染はお金に余裕があり海外に頻繁に旅行できるような人たちの間で広がっています。なぜ、高い教育を受け、フルタイムの職業を持っている教養のある人たちがHIV感染予防をおこなえないのでしょうか・・・。

(谷口 恭)

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2007年2月6日(火) 初めての相手からHIVとC型肝炎ウイルスに感染

 性行為によって男性から女性にHIVとC型肝炎ウイルスが感染することは珍しいことではありませんが、それまで処女だった女性が初めての男性から恣意的にこれらを感染させられたとなると想像を絶する悲しみがあるに違いありません。

 現在スコットランドのエディンバラで、ある裁判がおこなわれており、この模様を1月31日のBBC NEWSが報道しています。

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 HIV関連の施設ではたらく47歳の看護師サラ・クーパー(Sarah Cooper)氏は、法廷で次のように証言をおこないました。

 「私がXさんにHIVとC型肝炎ウイルスに感染していることを告げなければならなかったときは本当にショックでした。最初私たちは互いに微笑みあっていました。けれどもXさんは突然表情を変え、怒りを表し、私に、それ以上言わないで!と言って思考することをやめてしまいました。Xさんは私をつかんで私の身体を揺すりました。そして膝をついて私の前でしゃがみ込み、お願いだからそれが嘘だと言って、とつぶやき泣き崩れたのです。Xさんは心を閉ざし何もできなくなり、子供のようになってしまいました」

 Xさんはエディンバラ在住の女性(年齢・本名は報道されていません)で、38歳のシェフの恋人からHIVとC型肝炎ウイルスをうつされたのです。ふたりは2003年の9月から2004年の2月まで交際をしていました。XさんにHIVとC型肝炎ウイルスをうつした男性は、感染していることを隠しコンドームを用いない性行為を強要していました。

 報道によりますと、この男性はこれまでに200人の女性と性交渉をおこなっていたそうです。男性自身はコンドームを使用していたと証言していますが、Xさんが2つのウイルスに感染したことからも分かるように、自身がHIVとC型肝炎ウイルスが陽性であることを知りながらそれを偽り危険な性行為を強要していたのです。

 Xさんにとって、この男性が初めての相手だったそうです。Xさんはこの男性のことを「化け物(monster)」と言っているそうです。

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 200人の女性と性交渉をおこない、それまで処女だった女性に対しても嘘をつき、HIVとC型肝炎ウイルスを感染させた罪は決して小さくないでしょう。恋愛は100あるとすれば100通りの恋愛があるわけで他人がとやかく言う問題ではありませんが、このケースが明らかな「犯罪」であることは自明です。

(谷口 恭)

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2007年2月6日(火) イギリス、外国人のビザ承認でHIV差別

 2月1日のBBC NEWSによりますと、2月5日より、ケニアのイギリス大使館ではケニア人のイギリスへのビザ申請時に、結核に罹患していないことを示す証明書の提出が義務付けられます。
 
 これを受けて、ケニアのHIV関連のNPOが「この制度はHIV感染者に対する差別だ」と痛烈に抗議をおこなっています。このNPOの代表者は言います。

 「結核はHIV陽性者にとってよくある感染症で、この制度が施行されればHIV陽性者はイギリスに渡航できなくなる。これはイギリスのHIV陽性者に対する差別的な戦略であり、国際法に違反している」

 結核はHIV陽性者が発症する感染症の代表的なものです。ケニアでは毎年(HIV陰性者も含めて)およそ10万人が結核に罹患しています。毎年1万5千人以上がイギリス渡航のためのビザを申請しており、この大半が学生です。

 現在、ケニア中のエイズ関連の運動家たちは、イギリスに対し、直ちにこの制度を撤回するよう抗議をおこなっています。

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 イギリスはこの制度をすでにタンザニアとスーダンで施行しています。このウェブサイトでも何度かお伝えしましたが、イギリスはHIV陽性者にとって大変厳しい国です。いずれ、日本人に対しても同じ制度を通達するようになるかもしれません。

 尚、日本は先進国のなかでは韓国と並んで例外的に結核の罹患者が多い国です。

(谷口 恭)

参考: 「治療不能」の結核が急増 2006年9月11日

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