HIV/AIDS関連情報

2007年2月3日(土) バイアグラがHIV感染を促進?

 1月22日のAP通信によりますと、アメリカのエイズ関係のNPO「エイズヘルスケア財団」が22日、ファイザー製薬に対し訴訟を起こしました。ファイザー製薬の販売するED改善薬「バイアグラ」がHIVや他の性感染症の蔓延を助長しているというのが訴訟の理由です。

 このNPOは、「ファイザー製薬の広告がバイアグラの誤った使用を促している」としています。ある調査により、バイアグラは結晶のメタンフェタミン(覚醒剤ですがこれを特に"アイス"と呼びます)と同時にパーティで「カクテルドラッグ」として用いられていることが分かったそうです。

 "アイス"に限らず覚醒剤は一般的に性的な興奮を呼び起こしますが、勃起力を損なうことがあります。そこで、勃起力を維持するためにバイアグラが使用されている、とこのNPOのスタッフは述べています。

 ファイザー製薬の広告には、「週末のMVPになろう(Be this Sunday's MVP)」とのコピーがあり、同NPOはこのコピーがパーティでの使用を促進していると考えています。裁判はロサンジェルス高等裁でおこなわれ 同社がニューイヤーパーティなどのパーティでの使用を促すような広告を流すことをやめさせることが目的のようです。

 また、このNPOはFDA(米国食品医薬品局)に対しても、バイアグラの広告をファイザー製薬が規制するように求めています。FDAは現在この件についてはコメントをしていませんが、2004年にはファイザー製薬のバイアグラの広告は、性行為の薬ということを強調し勃起不全の治療薬であることを明記していないことに対して警告をおこなったという経緯があります。また、広告に主要な副作用を記載していないことに対しても問題視しています。

 一方、ファイザー製薬は、自社の広告がバイアグラのパーティでの使用を促進しているということを否認しています。同社は、米国の9つの州で2003年に6百万ドルを寄附しエイズ予防につとめる活動をおこなっています。

 バイアグラの昨年の売り上げは米国だけで8億6千万ドル(約1,032億円)にのぼります。この訴訟はファイザー製薬が20億ドルのコスト削減をするために1万人をリストラした直後におこされています。

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 バイアグラは非常に人気のある医薬品で、私も日々の臨床で処方していますが、患者さんのなかには個人輸入や海外の薬局で購入している人がいます。海外で売られているバイアグラは100mgが一般的ですが、日本で認可が下りているのは25mgと50mgだけです。日本人が100mgを服用するのは大変危険なことですが、それに気づいている人があまりにも少ないことに驚かされます。

 バイアグラが原因でHIVを含む性感染症が蔓延するかどうかは分かりませんが、バイアグラを治療目的以外で使用することが危険なことはもっと注目されるべきでしょう。

(谷口 恭)