HIV/AIDS関連情報

2007年2月7日(水) 南アのHIV蔓延は富裕層に

 南アフリカ共和国は世界第2位のHIV陽性者をかかえる国ですが、これまでは感染者の多くは貧困層であると考えられていました。しかし最近の傾向はそうではないようです。

 1月31日のロイター通信によりますと。南アフリカ大学と民間企業の共同研究で、専門職に従事する者やフルタイムで勤務する者など、同国の経済発展を担う立場の人たちの間でHIV感染が急速に広がっていることが明らかとなりました。

 従来、同国では、正しい知識を欠き、適切な治療や保健サービスを受けることのできない地方の貧困層の間でHIV感染が蔓延していると考えられてきました。現在も、30歳以下の若い世代が最たるハイリスクグループであることには変わりありませんが、従来はハイリスクと考えられていなかった高い教育を受けた富裕層の間でも急速にHIV感染が広がっていることが今回の研究で判ったのです。

 同国のHIV陽性者は2002年に6.2%だったのが2004年には8.3%にまで上昇しており、増加率は34%になります。

 同国ではフルタイムで勤務する者は国民の半分程度ですが、この層でみると、2002年の罹患率が14.4%なのに対し2005年には19.2%と36%も上昇しています。

 一方、失業者の間では、上昇率は2002年の11%から2005年の18.4%と、こちらも高い数字を示していますが、陽性率はフルタイム従業員よりも低くなっています。

 年齢別にみると30歳から34歳の間で最も急速に感染率が増加しています。これは彼(女)らから仕事を奪うことにつながりかねません。

 仕事別ではなく実際の収入ベースでみると、高収入上位3分の1は、貧困層3分の1よりも低い感染率(8.5%と23.4%)ですが、感染者の上昇率でみれば、2002年から2005年で、貧困層が14%の上昇なのに対し、高収入上位3分の1の層では39%も増加しています。

 研究者のひとりは次のように述べています。

 「この国のハイリスクグループは次第に上の世代に、そして次第に富裕層に移行してきている。今、急激にHIV感染が広がっているのは、非雇用者(従業員)よりもむしろ雇用者(経営者)たちである。銀行口座を持っていない人の間でHIVが蔓延しているわけではない。HIVが広がっているのは投資をおこなうような人たちの間である。HIVの蔓延がこの国の経済に大きな打撃を与えることになるだろう」

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 日本を含む先進国でも、HIVの新規感染はお金に余裕があり海外に頻繁に旅行できるような人たちの間で広がっています。なぜ、高い教育を受け、フルタイムの職業を持っている教養のある人たちがHIV感染予防をおこなえないのでしょうか・・・。

(谷口 恭)