HIV/AIDS関連情報

2007年2月13日(火) 中国のエイズ活動家が軟禁状態に

 以前に比べると慈善団体の活動に対する中国政府の対応は随分と軟化しているように感じますが、それでも、やはり共産党独裁政権なんだなぁ・・・と思わずにはいられない事件がときおり報道されます。昨年このコーナーでお伝えした事件「中国のNGOが強制解散させられた理由とは?」(2006年10月23日)はその一例です。

 中国河南省にGao Yaojieという80代の素晴らしい女性医師がいます。Gao医師は来月に米国でおこなわれるVital Voice Global Partnershipというチャリティ団体から表彰される予定ですが、中国政府がGao医師の渡米を阻止しようとしています。尚、このチャリティ団体はヒラリー・クリントン氏も支持しています。

 まずは、Gao氏の功績についてまとめておきましょう。Gao氏の住む河南省では90年代半ばから売血によってHIVが急速に広がり始めました。特に産業もないこの地域では住民のほとんどが貧困な状態にあり、生きていくためには自分の血を売って生活するしかなかったのです。しかし不衛生な状態で採血がおこなわれたため、使いまわしの針が原因でHIVが一気に蔓延しました。

 Gao医師はこの事実を訴え、エイズに関する基本的なことを書いたパンフレットを作成し、鄭州(河南省の省都)の長距離バスターミナルで配布しました。河南省の売血事情を本にもまとめました。そして、抗HIV薬を支給し、エイズに苦しむ人々やエイズ孤児たちを自分の質素なアパートに招きケアをおこないました。これらにかかった費用は、一部の寄附金以外はすべてGao医師個人が捻出したものです。

 現在Gao医師は引退していますが、売血によりHIVが蔓延したことを告発したことでこれまでにも多くの賞を受賞しています。2001年には、国連の賞を受け取るためワシントンに渡航する予定でしたが、中国政府にパスポートの申請を拒否され授賞式には参加できませんでした。

 2月4日のAP通信によりますと、Gao医師は現在自宅で軟禁されています。河南省の役人がGao医師に来月おこなわれる授賞式に出席しないように警告しましたが、Gao医師はこれを拒否したからです。そこで省の役人はGao氏を自宅に軟禁し渡米のためのビザ申請に北京に行けないようにしています。

 Gao医師の友人や家族もGao医師の自宅を訪問できないようにされ、Gao医師の娘は現在警察の事情聴取を受けています。1月末からGao氏の自宅の電話には誰もでないそうです。

 河南省はマスコミの電話取材に答えることを拒否しています。

***********

 中国政府と河南省に激しい憤りを感じる事件です。やはりこの国に民主主義はないのでしょうか。

(谷口 恭)

参考:「河南省のエイズ村告発小説が発禁命令」2006年9月27日
    「河南省の最新情報」2006年9月23日
    「依然真相不明―河南省のエイズ村―」2006年8月19日