HIV/AIDS関連情報

2007年2月6日(火) オーストラリア、10人に1人が"アイス"を経験

 最近、オーストラリアで国内初の違法薬物に関する大規模調査がおこなわれ、過去1年間に"アイス"(メタンフェタミン(覚醒剤)を結晶化させたもの)や他のかたちの覚醒剤を経験したことのある者は50万人にのぼることが明らかとなりました。(1月31日のNEWS.COM.AUが報道しています)

 これまでにメタンフェタミンを一度でも使用したことのある者は、オーストラリア全体で10人に1人という結果となり、国家自体が暴力犯罪やHIV蔓延の危機に曝されているということが報告書で述べられています。また、覚醒剤(メタンフェタミン)依存症は73,000人、ヘロイン(麻薬)依存症は28,000人にのぼることが明らかとなりました。

 この調査はオーストラリア国民薬物委員会(Australian National Council on Drugs)によって実施され、報告書では、東南アジア諸国のドラッグ供給者がオーストラリアで"ビジネス"を拡大させようとしていることが指摘されています。アジア諸国のドラッグ製造者からみれば、オーストラリアは莫大な利益の見込める輸出国であり、今後東南アジア内での需要をしのぐことも予想されるそうです。

 メタンフェタミンの流通量が増えることによって、殺人や凶悪暴力犯罪、さらにHIVの蔓延につながることが危惧されています。

 オーストラリア国民薬物委員会のジョン・ヘロン(John Herron)医師は次のように述べています。

 「メタンフェタミン常用者が体験する妄想が暴力行為につながることは珍しくない」

 "アイス"は(日本市場も含めて)最もポピュラーな覚醒剤の形態で、常用者の4人に1人が精神症状をきたすと言われています。なかでも攻撃的になったり暴力行為をおこしたりすることはよくあり、同委員会はこういった攻撃性は使用を開始して12ヵ月以内に起こることを指摘しています。

 ヘロン医師は続けます。

 「オーストラリアは隣国と協力し、覚醒剤の製造、密輸、使用のいずれをも阻止していかなければならない。アジア太平洋諸国で、メタンフェタミン、とりわけ"アイス"を製造している秘密の工場の数と規模は拡大し続けている」

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 私がこの話をあるイギリス人にしたときに、彼は「10人に1人は多いと感じる」と言いました。それは、イギリスを含む欧米諸国では、覚醒剤よりもコカインやLSDの流通量の方が多いからでしょう。(MDMAは、欧米、アジアとも最も流通量の多い薬物です)

 覚醒剤に関して言うならば、私は日本もオーストラリアと同じような状態ではないかと感じています。「"アイス"は静脈注射ではなく吸入("アブリ")だから大丈夫」、と考えている日本人は少なくありませんが、彼(女)らは、吸入から静脈注射へ移行する依存者がどれだけ多いかを知っているのでしょうか・・・。

(谷口 恭)