HIV/AIDS関連情報

2007年6月4日(月) 過少報告されているインドの感染者数

 現在、世界で最もHIV感染者の多い国はインドで、国連のデータでは570万人となっています。570万人というこの数字の信憑性についてしばしば話題になりますが、インドの財務大臣が「570万人という数字は過少報告されている」と発言し議論を呼んでいます。(報道は5月23日のロイター通信)

 インドの財務大臣パラニアパーン・チダムバラム(Palaniappan Chidambaram)氏は、公式な場で次のようなコメントを発表しました。

 「HIV感染者の人数はどの調査のものも少なく発表されており、この国では感染に気付いていない者が大勢いる。これが大変深刻な問題であることを我々は受け止めなければならない時期にきている」

 インドでは、エイズに関する正しい知識が普及しておらず差別やスティグマが蔓延しています。そのため容易に検査をおこなうことができませんし、感染が分かればその事実を隠そうとする人が絶えないのです。病院でさえも、患者さんのHIV感染が分かってもそれを届け出ないところが少なくないそうです。

 また、一般の人々の知識はかなり低く、政治家でさえも、「感染者と握手をしただけでHIVに感染する」、と考えている人が大勢いることがいくつもの調査で明らかとなっています。

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 日本はインドに比べると、ある程度正しい知識が普及していると思われますが、それでも社会的偏見のために、HIV検査をためらっている人が少なくありません。

 HIVが差別される理由など何もないのです!! 

 少なくとも日本では、(報道にあるようなインドの病院とは異なり)、医療関係者は偏見をもっていませんし、感染者の力になりたいと考えています。

 もしもあなたが検査を躊躇しているなら、悩む前に医療機関を受診しましょう。

(谷口 恭)

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2007年6月4日(月) インドの悪徳クリニック

 インドには、「エイズを治せる」と言って、HIV感染者の弱みにつけこむような悪徳クリニックが数千件もあると言われています。

 インドでは、まともな医療をおこなっているクリニックでは治療費が高額となるため、効果のないハーブ療法、ホメオパシー、薬物治療などを供給する悪徳クリニックに訪れる感染者が少なくないのです。

 また、感染者に対する病院内での差別や社会的スティグマがはびこるなかでは、陽性者はまともな医療機関に行きづらいという現状があり、そのため新聞広告やポスターで宣伝されている悪徳クリニックを訪れることになります。

 5月29日のロイター通信によりますと、こういった悪徳クリニックに対抗するキャンペーンがHIV陽性者のネットワークによって立ち上げられました。

 このネットワークの代表者であるシャバナ・パテル(Shabana Patel)氏は言います。

 「悪徳クリニックはエイズ撲滅への道を妨げているだけではなく、貧しくて教育を受けていない患者をだましているのです」

 悪徳クリニックが、偽りの治療で感染者にどれくらいの支払いを強いているのかはクリニックによって様々だそうですが、ある関係者は、「1年間の費用が3千ドル(約36万円)以上するケースが多い」、と言います。

 この関係者はさらに続けます。

 「悪徳クリニックでは血液検査すらしない。偽りの診断方法で"奇跡の治療薬"を売りつけているのです」

 上記のネットワークのもとには、悪徳クリニックの被害に会った感染者からの問い合わせが今年の4月だけで100件以上もあったそうです。

 インドでは今後5年間で約28億ドル(約3,400億円)の予算がエイズ予防に費やされ、抗HIV薬を享受できる感染者を増やすことになっています。

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 "悪徳クリニック"の医者が本物の医者かニセ医者かは報道からは分かりませんが、本物の医者なら民間のネットワークではなく行政が対策をとるでしょうから、おそらく民間療法の類のクリニックだと思われます。

 いかがわしい民間療法のクリニックは日本も含めて世界のどこにいっても存在するでしょうが、貧困で教育を受けていないHIV陽性者をだましている、ということに強い憤りを感じます。

(谷口 恭)

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2007年5月22日(火) モンコル保健大臣がUNAIDS議長に就任

 5月20日のバンコクポストによりますと、タイのモンコル保健大臣がUNAIDS(国連エイズ計画)の議長に就任することが決定しました。就任式は6月25日におこなわれ、任期は1年間です。

 現在の同機関の議長はスゥエーデンのピオット議長で、同議長がモンコル保健大臣に議長を継承するよう申し入れをおこなったようです。

 タイでは、昨年、米国製の抗HIV薬に対して強制実施権を行使しましたが、この点がモンコル保健大臣が高く評価された理由であるようです。

(谷口 恭)

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2007年5月14日(月) 風邪薬から覚醒剤を製造し逮捕

 韓国の水原地検麻薬組織捜査部は5月4日までに、市販の風邪薬から覚醒剤を製造した疑いで在米韓国人ら2人を逮捕、起訴したと発表しました。(報道は5月7日の共同通信)

 検察当局は、覚醒剤製造過程を紹介したインターネット上のサイトを閉鎖するよう米当局に要請しています。

 韓国メディアによりますと、起訴された在米韓国人は米国でインターネットを通じて覚醒剤の製造方法を知り、今年初めにソウル市内の4カ所の薬局で100万ウォン(約13万円)相当の風邪薬を購入したそうです。

 容疑者らは、トラックに機材を積み込み、山間部などを移動しながら覚醒剤を製造していたようです。

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 覚醒剤(アンフェタミンやメタンフェタミン)は、実は、小さな研究室程度の設備があれば誰でも簡単に製造することができます。そのため、日本国内でも密造されているのではないかという噂が多々あります。

 これを防ぐには、実際に製造した者だけでなく、製造方法を教えた者に対しても重罪を課すのが現実的でしょう。

(谷口 恭)

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2007年5月9日(水) 米国、ゲイとバイセクシュアルの間で梅毒が急増

 米国では21世紀に入ってから梅毒がゲイとバイセクシュアルの間で急増していることがCDC(疾病予防管理局)の調査で明らかとなりました。現在のアメリカでは(ゲイを含む)男性の梅毒感染者は女性感染者の6倍近くになります。(報道は5月4日のロイター通信)

 1949年の調査以来、米国で梅毒がピークとなったのは1990年で、この年の罹患者は約5万人、人口10万人あたり20.3人です。その後徐々に罹患率が低下し、2000年には人口10万人あたり2.1人を記録しています。

 ところが、その後再び罹患率は上昇に転じ、2005年には人口10万人あたり3人、実数にして8,724人が梅毒に感染しています。

 ジョン・ホプキンス大学バルチモア校のカリル・ガネム(Khalil Ghanem)医師は次のように述べています。

 「梅毒の増加がHIVの新たな感染率の増加につながっている。梅毒はHIVと非常に近い関係にある」

 米国では、梅毒はHIV感染のリスクを2から5倍高くすると考えられています。

 梅毒はコンドームを使用していれば感染のリスクを大きく減少させることができ、たとえ感染しても初期の段階で抗生物質を投与すれば治癒する疾患です。ただ、治療せずに放置しておくと深刻な症状が出現し、そのまま無治療でいると死に至ることもあります。

 サンフランシスコを拠点とする「ゲイ・レズビアン医療委員会(Gay and Lesbian Medical Association)」のスタッフであるジョエル・ギンスバーグ(Joel Ginsberg)氏は次のようにコメントしています。

 「ゲイの間で梅毒の感染が増えているが、複数のパートナーがいるゲイは少なくない。梅毒の感染が判ったときに、HIVにも感染していることが初めて判った者があまりにも多いことは問題である」

 ギンスバーグ氏は続けます。

 「ゲイの間でコンドームの使用率が減少している。"すでにHIVに感染しているんだからいいだろ"というような態度をとる者も少なくない。この背景に、すぐれた抗HIV薬の登場でHIV感染がもはや死に至る病ではないという認識がある」

 この点については前出のガネム医師は次のように述べています。

 「HIV感染が"死に至る病"ではなく単なる慢性病と考える人が増えてきているが、医師の側にも問題がある。予防の重要性を話さない医師があまりにも多いのである」

 またガネム医師は覚醒剤との関連も指摘しています。

 「通称"アイス"と呼ばれているメタンフェタミンを吸入して摂取する(アブる)ケースが急増しているが、これがコンドームを用いない性交渉につながり、結果として梅毒感染も増えているのである」

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 "アイス"は日本を代表とするアジアの違法薬物として有名ですが、米国でも問題になっているようです。この記事にある、梅毒感染がゲイの間で多い、梅毒に感染している者は同時にHIVに感染している場合が少なくない、"アイス"の使用が性感染症に関連している、などは日本の状況とまったく同じであることはもっと注目されるべきでしょう。

(谷口 恭)

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