HIV/AIDS関連情報

2007年5月9日(水) 米国、ゲイとバイセクシュアルの間で梅毒が急増

 米国では21世紀に入ってから梅毒がゲイとバイセクシュアルの間で急増していることがCDC(疾病予防管理局)の調査で明らかとなりました。現在のアメリカでは(ゲイを含む)男性の梅毒感染者は女性感染者の6倍近くになります。(報道は5月4日のロイター通信)

 1949年の調査以来、米国で梅毒がピークとなったのは1990年で、この年の罹患者は約5万人、人口10万人あたり20.3人です。その後徐々に罹患率が低下し、2000年には人口10万人あたり2.1人を記録しています。

 ところが、その後再び罹患率は上昇に転じ、2005年には人口10万人あたり3人、実数にして8,724人が梅毒に感染しています。

 ジョン・ホプキンス大学バルチモア校のカリル・ガネム(Khalil Ghanem)医師は次のように述べています。

 「梅毒の増加がHIVの新たな感染率の増加につながっている。梅毒はHIVと非常に近い関係にある」

 米国では、梅毒はHIV感染のリスクを2から5倍高くすると考えられています。

 梅毒はコンドームを使用していれば感染のリスクを大きく減少させることができ、たとえ感染しても初期の段階で抗生物質を投与すれば治癒する疾患です。ただ、治療せずに放置しておくと深刻な症状が出現し、そのまま無治療でいると死に至ることもあります。

 サンフランシスコを拠点とする「ゲイ・レズビアン医療委員会(Gay and Lesbian Medical Association)」のスタッフであるジョエル・ギンスバーグ(Joel Ginsberg)氏は次のようにコメントしています。

 「ゲイの間で梅毒の感染が増えているが、複数のパートナーがいるゲイは少なくない。梅毒の感染が判ったときに、HIVにも感染していることが初めて判った者があまりにも多いことは問題である」

 ギンスバーグ氏は続けます。

 「ゲイの間でコンドームの使用率が減少している。"すでにHIVに感染しているんだからいいだろ"というような態度をとる者も少なくない。この背景に、すぐれた抗HIV薬の登場でHIV感染がもはや死に至る病ではないという認識がある」

 この点については前出のガネム医師は次のように述べています。

 「HIV感染が"死に至る病"ではなく単なる慢性病と考える人が増えてきているが、医師の側にも問題がある。予防の重要性を話さない医師があまりにも多いのである」

 またガネム医師は覚醒剤との関連も指摘しています。

 「通称"アイス"と呼ばれているメタンフェタミンを吸入して摂取する(アブる)ケースが急増しているが、これがコンドームを用いない性交渉につながり、結果として梅毒感染も増えているのである」

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 "アイス"は日本を代表とするアジアの違法薬物として有名ですが、米国でも問題になっているようです。この記事にある、梅毒感染がゲイの間で多い、梅毒に感染している者は同時にHIVに感染している場合が少なくない、"アイス"の使用が性感染症に関連している、などは日本の状況とまったく同じであることはもっと注目されるべきでしょう。

(谷口 恭)