GINAと共に

第155回(2019年5月) デンバーでマジックマッシュルームが合法化

 太融寺町谷口医院のウェブサイトの「はやりの病気」の今月(2019年5月)号で、米国のデンバーでマジックマッシュルームが合法化されたことに少し触れました。このニュースはかなりインパクトの強いものであり、世界各国のメディアは大きく取り上げていますが、なぜか日本のマスコミは"無視"しています。「有名人の〇〇が違法薬物で逮捕」という事件には飛びつくものの、国民のひとりひとりが根本から考えていかねばならない「薬物」の本質にはなぜか触れたがらないのが日本のマスコミの特徴です。

 当初の予定よりは遅れたものの、かねてから審議されていた大麻の完全合法化がカナダで実現したのは2018年10月で、国家としてはウルグアイについで2番目となります。合法化されたことで製品の質が急激に向上し、現地を訪れた人の話では、大麻ショップの一部は高級宝石店やブティックなどと見間違えるほどだそうです。医療面での応用はそれほど進んでいるという話は聞かないのですが、どういった大麻がその人に合うかを調べる遺伝子検査まで登場しているという噂もあります。まるでどの抗がん剤を使用すべきかを治療前におこなう遺伝子検査のようです。

 日本では現時点では大麻合法化をという声はさほど大きくなっていませんが、2019年5月15日、厚生労働省は難治性のてんかんに大麻から製造された「エピディオレックス(Epidiolex)」を治験(臨床試験)で使うことを認めると発表しました(エピディオレックスについては過去のコラム第143回(2018年5月)「これからの「大麻」の話をしよう~その3~」を参照ください)。

 なぜここで大麻の話をしたかというと、米国の大麻合法化について思い出す必要があるからです。米国は今も大麻が違法の州の方が多いのですが、今後ますます合法化する州が増えてくるのは間違いなさそうです。合法化が最も早く実現する州は最も自由なカリフォルニア州であろうと考えられていました。ところが、2010年11月2日の住民投票の結果は意外なことに反対派が賛成派を上回り合法化は実現化しませんでした。しかし、この時点では多くの人が米国で大麻合法化が実現化する最初の州はカリフォルニアを置いて他にはないと考えていたと思います。

 ところが、全米で最初の州となったのは意外にもコロラド州とワシントン州だったのです。シアトルのあるワシントン州は「自由な地域」というイメージがありますが、アメリカの中央やや西に存在するコロラド州に対して私にはほとんど印象がありません。

 そのコロラド州の州都デンバーで、2019年5月8日、マジックマッシュルームの合法化が実現しました。前日(5月7日)のロイターの報道では「住民投票では反対派が上回るだろう」とされていました。しかし蓋を開けてみると賛成派が勝利したのです。世界のメディアはこの決定を否定的にみているようです。例えばBBCはタイトルを「非常に僅差。デンバー住民投票でマジックマッシュルームが合法(Denver votes to decriminalise magic mushrooms by razor-thin margin)」とし、デンバーの市長が反対していることを紹介しています。

 ここで私自身のマジックマッシュルームの"思い出"の話をしたいと思います。といっても日本で合法化であった時代も含めて私自身がマジックマッシュルームを試したことはありません。"思い出"とは、私が知り合った「ジャンキー」たちとの思い出で、多くはタイでGINAの活動をしていたときに知り合った人たちです。このサイトで、麻薬、覚醒剤、大麻などについて書くときにはいつも彼(女)らのことを思い出します。

 マジックマッシュルームについて熱く語ってくれたT君は中部地方の出身で、高校卒業後は全国を旅していたそうです。90年代当時は違法ではなくマニアたちは全国(あるいは全世界)に「キノコ」を求めてさまよっていました。T君が気に入ったのは八重山諸島のある島で、その島の牛の糞に「キノコ」が生えていたそうです。T君がその島にこだわったのは単に「キノコ」が見つけやすいという理由だけではありません。「自然」が重要だというのです。

 マジックマッシュルームは(よく同列で語られるLSDと同様)、摂取するときの"環境"が非常に重要です。"環境"によって「グッド」にも「バッド」にもなります。例えば、気の合わない友達と汚い部屋で摂取すれば「バッド・トリップ」に入り頭痛や嘔気に苦しめられますが、自然のなかで気が置けない親友と楽しめば「いい状態」になります。T君は、夕方になるとその島のビーチに出かけ大自然に包まれ波の音を聞きながら「キノコ」を食べると「最高のトリップ」ができるんだと熱く語っていました。

 これを書くためにT君のことを思い出しているときにひとつ気になることがでてきました。T君はあるとき「ドラッグ仲間」からアシッドハウスを教えてもらって、これにハマったそうです。それまでクラブやディスコなどには縁のなかったT君はアシッドハウスを知らなかったそうですが、「キノコ」を摂取するときに聴くと「最高のトリップ」がさらに"最高"になることを知ってしまったというのです。

 この話をT君から聞いた2000年代初頭には気に留めなかったのですが、現在「3rd Summer of Love」の噂をチラホラと聞きます。「Summer of Love」とは1967年夏に当時の若者10万人がサンフランシスコに集まったイベントで、サイケデリックな音楽とドラッグを肯定するヒッピーの運動だったと聞きます。

 「2nd Summer of Love」は80年代後半から90年代初頭にかけておこったムーブメントでした。イビザ島でUKのDJがアシッドハウスを中心としたハウスサウンドを大音量でプレイし、そしてマジックマッシュルームを含む薬物が大量に出回りました(LSDやMDMAも大量に出回りましたがこれらは当時から違法でした)。

 それから30年近くが経過した現在、「3rd Summer of Love」を求める雰囲気が少しずつ膨らんでいるような気がします。デンバーのマジックマッシュルーム合法化はこの動きを加速することになるのではないか、と私は見ています。

 マジックマッシュルームを学術的に考えてみたいと思います。そもそもこういうキノコは日本にも昔から存在し、「ワライタケ」「シビレタケ」などと呼ばれるものがその仲間と考えられます。ときどき新聞の片隅に「毒キノコを誤食して中毒症状」という記事をみかけます。はじめから興奮や幻覚を求めて食したのでは?とついつい考えてしまいます。

 日本でマジックマッシュルームが非合法化されたのは2002年です。その前年(2001年)、俳優の伊藤英明さんが中毒症状で救急搬送されて話題になりました(このときは違法ではなかったため名前は伏せません)。今も世界のなかには違法でない国や地域があります。そもそもシャーマンはマジックマッシュルームを摂取して幻覚をみてそれで祈祷や予言をするわけですから宗教的に禁止するのは困難です。ですが、もちろん先進国では軒並み違法です。大麻と同様大きな罪に問われることは(まず)ありませんが、ものすごく簡単に入手できるわけでもありません。1970年代から「コーヒーショップ」なら嗜好用大麻が合法のオランダでさえマジックマッシュルームは違法です(実はキノコは禁止でも似たようなマジックトリュフは入手できますが)。

 シロシビン(サイロシビン)及びシロシン(サイロシン)がマジックマッシュルームに含まれる興奮や幻覚をもたらす成分です。大麻が医療で用いられるようになったのと同様、これらの成分も医療への応用が研究されています。先に紹介したBBCの報道では、群発頭痛、PTSD、強迫性障害(OCD)への効果が期待されているようです。

 私の知る限り、医師の間では医療用大麻に対しても慎重派の意見の方が多く、嗜好用(娯楽用)となると賛成派はほとんどいません。マジックマッシュルームのようにバッド・トリップしてしまうと衝動的に飛び降りたり自殺したりする可能性のある薬物を認めることには(医療者でなくても)反対するでしょう。しかし、大麻と同様、コロラドで始まった合法化の動きは全米に広がる可能性があります。そうなれば、「本当は身体に悪くない」という"情報"が広がり違法入手する人たちが増えるに違いありません。その次に起こることは、このサイトでさんざん述べてきたように、さらに強力な違法薬物の入手、そしてHIV感染を含む悲惨な顛末です。

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第154回(2019年4月) 性にまつわる"秘密"を告白された時

 私が院長を務める太融寺町谷口医院では、過去約12年の間におよそ100人の患者さんにHIV陽性であることを伝えてきました。そのなかの半数以上が「まさか自分がHIVだなんて夢にも思っていなかった」という人たちです(私はこれを「いきなりHIV」と呼んでいます)。

 感染していることを伝えるときは、たとえ他の患者さんの待ち時間が長くなったとしても充分な時間をとって伝えます。そしていくつかの重要な点を説明します。そのなかで最も重要であると私が考えているのは、「感染の事実をパートナー以外の他人に話すべきでない」ということです。

 HIVに感染していることは恥ずかしいことではありません。ですが現実には、感染を知られたが故に、仕事を失った、友達を失った、なかには家族との関係が絶たれた、という人すらいます。一度、他人に伝えてしまえばそれを取り消すことはできません。どうしても冷静さを欠いてしまう感染発覚間もない時期には判断を正確におこなうことが困難ですから、しばらくの間はパートナー以外には言わないのが賢明なのです。

 そして、これはHIV感染だけではありません。セクシャル・マイノリティであることを他人に伝えることにも充分に慎重になるべきです。LGBTという言葉が随分と人口に膾炙してきているのは事実ですが、だからといって彼(女)らに対する偏見がなくなったわけではありません。実際、自分の「性」を他人に知られることで不利益を被ったという人は枚挙に暇がありません。私が診ている患者さんのなかにも、これが理由で職を失ったという人もいます。

 他人の「性」(性指向や性自認)を、本人の許可なく曝露することは「アウティング」と呼ばれます。アウティングされた当事者は不利益を被ることがよくありますから、この行為が(少なくとも民事上は)「罪」であることは自明ですが、損害賠償が請求できたとしても、いったん失った社会的信用などを元に戻すことはできません。

 アウティングを防ぐには、余程のことがない限り他人に自身の「性」については話さないのが一番ということになります。ですが、実際には場合によってはそういうわけにもいかないでしょうし、特に「好きになった人」には話さざるを得ません。今回は、「他人から性についてカムアウトされたときにどうすればいいか」、つまり「自身がアウティングをしないようにするにはどうすればいいか」ということを考えたいと思います。というのは、この「他人の"秘密"を守ること」は世間一般で考えられているよりも遥かにむつかしいからです。

 ここでおそらくアウティング関連では最も有名な事件である「一橋大学法科大学院アウティング事件」を当時の報道などから振り返ってみたいと思います。被害者をA君とします。

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 2015年4月、一橋大学法科大学院の男子学生A君は、同級生の男子学生B君に対しLINEにて「好きだ。付き合いたい」というメッセージを送ったところ、B君は「付き合うことはできないが、これからも良い友達でいたい」と返信。その約3ヶ月後の6月24日、B君は他の同級生も見ているLINEグループに「お前がゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」と実名を入れて投稿、つまりアウティングをおこなった。その後A君はパニック障害を発症するようになり、アウティングからちょうど2カ月後の8月24日、大学構内の6階ベランダから飛び降り自殺を完遂。報道によれば、身を投げる直前にクラス全員のLINEに「(B君の実名)が弁護士になるような法曹界なら、もう自分の理想はこの世界にない。いままでよくしてくれてありがとう」というメッセージを残していた。

 A君の遺族はB君と大学を提訴。遺族とB君の間は2018年1月に和解が成立(内容は公表されず)。大学に対しては、遺族は大学が適切な措置を取らなかったと主張したが、2019年2月27日、東京地裁は「大学に落ち度はなかった」とし、遺族側の訴えを棄却(この原稿を書いている2019年4月時点では遺族側が控訴するという報道はないようです)。
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 A君の自殺に対しては多くのメディアがセンセーショナルな報道をおこないました。LGBTを擁護する団体はもちろん、そういったことに関心がないという人たちからも「B君はひどい」という声が上がっていました。

 ではB君のとった行動はどの程度"罪"と呼べるのでしょうか。ここからは当時の報道などからB君の立場になって考えてみたいと思います。

 B君がA君の告白を断り「良い友達で...」と返信した後も、A君は、食事に誘ったり、モーニングコールを頼んだり、(他の友人も交えて)ハイキングに行こうと誘ったり、とB君を"諦めて"いません。5月下旬、学校でB君はA君から話しかけられた時に曖昧な返事をすると、突然A君は頭を抱えて「うあー」と大声を出し、腕に触れてきました。B君はA君を避けるよう努めましたが、周囲の者はその理由が分かりません。しかたなくB君は他の友人とも距離を取ることになります。そして件のアウティングに踏み切りました。

 このようにB君の「言い分」を聞くと、一方的にB君を責められないのでは、と感じる人もいるでしょう。しかし別の報道では、件のLINEでのアウティングの前から、B君は3人の同級生にすでにアウティングをしていた、とするものもあります。

 実際のことはB君に聞いてみないとわかりませんが、私が言いたいことは「他人の秘密を守るのは決して簡単ではない」ということです。特に共通の知人がいる場合にはものすごく困難なのです。なぜ、私がこういうことを"偉そうに"言えるかというと、医師の守秘義務遵守が実は簡単ではないことを知っているからです。

 医師や看護師が診察で知り得たことを他人に言わない、とする「守秘義務」は当然であり異論はないでしょう。では、例えばこういうケースはどうでしょう。

 あなたには小学校から高校までずっと仲がよかった幼馴染のX君とYさんがいます。彼(女)らとはもう10年以上も会っておらず、あなたはある地方都市の病院で看護師をしています。ある日Yさんがその病院を受診し偶然再会することになりました。Yさんは東京で会社員をしていますが、この日は出張でこの地に来ていたのです。その1週間後、あなたが旅行で北海道にでかけたとき、偶然X君に空港で再会しました。思い出話に花が咲き、X君は「そういえばYさん、どうしているかな」と言いました。このときあなたは「先週10年ぶりにYさんと会った」ということを黙っていられるでしょうか。

 法律上守秘義務が課せられている医療職は、医師、看護師などだけで、例えば受付スタッフには(「プライバシー保護法」を守る義務はありますが)、医師(刑法)や看護師(保健師助産師看護師法)ほどの重みのある義務はありません。ですから、私が院長を務める太融寺町谷口医院では、受付スタッフにも守秘義務の"教育"をしています。「院内で知り得たことは退職してからも他言せず文字通り棺桶まで持って行くこと。たとえ家族やパートナーにも一切のことを話さないこと」を徹底しています。守秘義務を守らない受付なんているの?と思う人がいるかもしれませんが、例えば「有名人の〇〇がこの前うちの病院に来た」と話した(当院以外の)受付を私は何人か知っています。

 診察室以外で、つまりプライベートで知人からセクシャル・マイノリティであることをカムアウトされることが私にはしばしばあります。そんなときは「あなたが今話したことは死ぬまで誰にも言いません」と、少々大げさに"宣言"します。

 結論です。もしもあなたが他人から"秘密"を告白されたときは、私が実践しているようにその場で「守秘宣言」することを勧めます。

 2018年4月、一橋大学のある国立市は全国初の「アウティング禁止条例」を施行しました(注)。

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注:一般社団法人「社会的包摂サポートセンター」にアウティング被害の電話相談が2012年3月以降の6年間に少なくとも110件寄せられているそうです。2019年4月3日の日経新聞が報道しています。

参考:太融寺町谷口医院マンスリーレポート2012年8月号「簡単でない守秘義務の遵守」

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第153回(2019年3月) 知らない間に依存症~風邪薬と痛み止めの恐怖~

 日本でHIVに感染するのは性感染が多く、麻薬や覚醒剤の静脈注射での感染というのは諸外国と比べると少ないのは事実です。では、日本では違法薬物とHIVの関連性を論じるのはナンセンスかと言えばまったくそんなことはありません。

 なぜなら、実際に(私が日ごろ診ている患者さんも含めて)HIV陽性者のいくらかは薬物依存症となっているからです。典型的なのは、薬物を用いたセックスを"楽しんでいた"人たちです。性行為のときに覚醒剤を用いる「快楽」を知ってしまい(実際、患者さんは「知ってしまう」と表現します)、覚醒剤使用OKの相手を探すようになり、それが不特定多数との性交渉につながり、ついにはHIV感染というパターンです。

 他にも、例えば前回紹介したベンゾジアゼピン系(以下BZ)の薬物依存症になってしまい、生活に支障をきたしてしまう人がいます。BZを大量服用すると(使用者が言うには)"ハイ"になり(確かにイヤな気持ちがふっとびます)、また、ぐっすり眠れるという理由でどんどん使用量が増えていき、やがて生活が不規則になっていき社会生活からドロップアウトします。そして性的にも奔放になってしまう、あるいは生活費を稼ぐためにセックスワークを始めてHIVのリスクに晒される、といった事態になるのです。

 つまり、「針の使いまわし→HIV感染」、という海外でよくみられるパターンはさほど多くないものの、日本でも「薬物がきっかけとなったHIVの性感染」というのは決して珍しくないのです。

 これまでこのサイトでは、麻薬(オピオイド)、覚醒剤、大麻などについては繰り返し述べ、前回は合法的に入手しやすいBZを紹介しました。今回は、BZよりもさらに簡単に入手できる危険な薬剤の話をします。

 それは薬局やネットで簡単に入手できる風邪薬と鎮痛薬です。いわゆる総合感冒薬というのはテレビや雑誌で頻繁に宣伝されていますし、危険な薬というイメージからは程遠いでしょう。ですが、こういった薬で人生を狂わされてしまった人は決して少なくありません。違法薬物やBZの場合は、ある程度危険性を分かっていて始める人が大半ですから、ある意味では"確信犯的"ですが、風邪薬や鎮痛薬の場合は「宣伝の犠牲」とも呼べる例が少なからずあります。症例を紹介しましょう。

【症例1】20代女性

 風邪を引いて近所の薬局に。咳が強いため咳によく効くという薬(ブロン錠)を購入。使用説明書に眠気が起こるかもしれないと書いてあったので寝る前のみ飲むことにした。薬はよく効き、前日まで咳でほとんど眠れなかったのが昨日は嘘のようによく効きぐっすり眠れた。安眠できたことからその後も寝る前だけこの薬を飲むようになった。気づけば3か月が経過し、なぜか寝る前以外にも飲みたいという衝動がでてきた......。

【症例2】30代女性

 以前から頭痛がある。市販のものをいろいろと試したが結局「ナロンエース」が一番"合っている"ことが分かった。最初は週に2~3回しか飲んでいなかったが、最近は1日も欠かせなくなってきている。錠数がどんどん増えてきて1日に10錠以上飲むこともある。頭痛はますますひどくなり薬も増える一方となっている......。

 解説していきましょう。【症例1】はエフェドリン(正確には塩酸メチルエフェドリン)とコデイン(リン酸ジヒドロコデイン)の依存症になってしまっているのはほぼ間違いありません。エフェドリンとは覚醒剤の一種、コデインは麻薬(オピオイド)です。覚醒剤には気管支拡張作用があり、麻薬には脳の咳中枢を抑制する効果がありますから双方とも咳に効果があるのは事実です(ただし最近はこれらの咳止めには有効性を示したエビデンスがなく使用すべきでないという意見が増えてきています。参照:太融寺町谷口医院ウェブサイト「はやりの病気」第178回(2018年6月)「「咳止めが効かない」ならどうすればいいのか」)。 

 エフェドリンとコデインを双方摂取するとどうなるか。現在40代後半以上の人はエスエス製薬の咳止めシロップ「ブロン」が社会問題になったことを覚えているのではないでしょうか。ちょうど私がひとつめの大学(関西学院大学)の学生だった1980年代後半、この「ブロン」が大流行し、社会復帰できなくなり退学した奴がいる、という噂も何度か聞きました。真偽は定かではありませんが、当時「ブロン中毒専門の矯正施設がある」と(私の周囲では)言われていました。

 それだけ問題になったのですから、製薬会社は当然製品を販売中止するなり成分変更したりすべきです。そして、たしかにこのシロップは成分が変わりエフェドリンが含まれなくなりましたが、コデインはそのままです。そして、(私は、これは問題だと思うのですが)「ブロン錠」という錠剤が登場し、こちらはシロップと同様エフェドリンとコデインの双方が含まれているのです。【症例1】はそのブロン錠を飲み始めて知らぬまに依存症になってしまった例ですが、なかには初めから"トリップ"することを目的としてブロン錠を大量に(なかには一晩で数百錠も!)飲む人もいます。

 では販売元のエスエス製薬だけが問題なのかと言えば、そういうわけではなく、メジャーな風邪薬のいくらかはエフェドリンとコデインの双方が含まれています。例えば、パブロンゴールドA新ルルAカイゲン感冒錠ベンザブロックSエスタックイブなどです。

 私自身は、少なくとも医学部に入学してからは市販の感冒薬や咳止めを一度も飲んでいませんし、こういった薬を飲んでいる医師を見たことがありません。はっきり言えば、こういった感冒薬は一生飲むべきでないのです。

 【症例2】は2つの問題があります。ひとつはイブプロフェン中毒、もうひとつはブロムワレリル尿素(ブロムバレリル尿素とも呼ばれる)中毒です。前者は「薬物乱用頭痛」と呼ばれるやっかいな頭痛を引き起こすことがよくあり、そもそもすべての痛み止めには依存性・中毒性があると考えなければなりません。ですが、その何倍も問題なのが後者の「ブロムワレリル尿素」であり、これがどれくらい問題かというと、90年代に社会問題となった『完全自殺マニュアル』でも紹介されている危険な薬物なのです。そもそもこのような薬剤が薬局で買えること自体が問題です。

 ブロムワレリル尿素の致死量は15gと言われています。ナロンエース1錠に100mgのブロムワレリル尿素が含まれていますから150錠飲めば(体重にもよりますが)死んでしまうわけです。しかも『完全自殺マニュアル』には、他に「首吊り」「飛び降り」「ガス中毒」などの自殺方法が紹介されていますが、ブロムワレリル尿素を用いた「クスリ」による自殺は「安らかな眠りの延長上にある死、これが最も理想的な自殺手段だ」と書かれているのです。こんなもの、販売してもいいのでしょうか。ウルグアイやカナダに負けまいと、多くの州で娯楽用大麻が合法化されている米国でさえ、ブロムワレリル尿素を薬局で販売することは禁じられています。

 いったん、ブロムワレリル尿素依存症になってしまうと、これがないと眠れなくなり、切れると頭痛がひどくなってきます。服薬量がどんどん増えていき、こうなると自分自身の力ではもはや離脱することができません。尚、ナロンエース以外にブロムワレリル尿素を含む薬剤にウット奥田脳神経薬があります。

 私が院長を務める太融寺町谷口医院では、過去12年間の間に100人以上の「風邪薬・鎮痛薬依存症」になった(知らない間になってしまった)人たちに、危険性を伝え、止めることができるよう支援してきました。幸いなことに無事離脱できた人もいますが、止めるように言っても理解が得られず受診しなくなった人も少なくないのが実情です......。

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参考:厚労省の資料「濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量について」

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第152回(2019年2月) アダム・リッポンも飲むベンゾジアゼピンの恐怖

 タイのエイズ問題に私が初めて触れたのは2002年のタイです。そのときに接した患者さんのいくらかがセクシャルマイノリティであったこともあり、LGBTの人たちへの関心がますます深くなり、医師として接するときには"逆差別"をしないように気を付けることもあります。

 このサイトでも繰り返しお伝えしているように、LGBTの人たちには音楽やビジネス、政治の世界で世界的に有名な人たちも少なくありません。2018年の1年間を振り返って、私が個人的に最も注目したLGBTの人は、平昌オリンピックのフィギュアスケートで銅メダルを獲得した米国のアダム・リッポン(以下「アダム」)です。

 特にLGBTに興味がないという人も、アダムの話題は至るところで見聞きしたのではないでしょうか。しかし、2018年がスタートした時点では(少なくとも日本では)ほとんど無名だったと思います。

 そのアダムが一躍有名になったのが、ペンス副大統領が平昌オリンピック開会式の米国選手団の団長となることが決まったときに放った言葉です。アダムは、副大統領が同性愛矯正治療をおこなっている施設に資金提供したことを引き合いに出して糾弾し、そして副大統領との面談を拒否したのです(参考:The story behind Olympic figure skater Adam Rippon's feud with Vice President Pence)。

 このような発言をおこなったことで、プレッシャーがかかり競技に悪影響がでるのではないかと心配する声もありましたが、結果は見事団体で銅メダル。これで一躍スターとなりました。元々目立つキャラクターなのでしょう。メダル獲得後、派手な衣装を身にまとい次々とメディアに登場するアダムは正真正銘のスターと呼んでいいでしょう。2018年4月に発表された『TIME』の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれました。ところが、2018年11月、突然引退を表明し世界を驚かせました。

 さて、そのアダムを私が注目していたのはゲイだからという理由だけではありません。実は、ペンス副大統領との"事件"が報道されている頃、たまたま読んだ記事がひっかかりました。それは「USA TODAY SPORTS」が報じた「アダム・リッポン、気持ちを落ち着かせるためにザナックスと水を求めた(Adam Rippon wanted a 'Xanax and a quick drink' to calm nerves)」というタイトルの記事です。

 「ザナックス」というのはベンゾジアゼピン系(以下「BZ」)(注1)に分類される抗不安薬で、一般名は「アルプラゾラム」、日本の商品名は「ソラナックス」や「コンスタン」が有名です。BZは、日本で最も"乱用"されている薬物で、医療機関でしか処方されないということになっていますが、実際は「友達にわけてもらった」とか、なかには「ネットで買った」などという人もいます。

 飲めばすぐに効くのが最大の特徴でしょう。人によって言葉は変わりますが、飲んでいる人は「飲めばすーっとする」「心のモヤモヤが一気に消える」「すぐにリラックスできる」「眠れないときに飲めばすぐに熟睡できる」などと言います。こういった言葉だけを聞くと、いい薬のように思えなくもありませんが、これだけ「すぐによく効く薬」だからこそ「依存」を生みだすのです。

 「日本ほどBZが気軽に使われている国はない」、とよく言われます。実際、日本人の薬物依存は米国のような麻薬は現時点では大きな問題となっていません(しかし、今後変わる可能性がありそれを前回のコラム「本当に危険な麻薬(オピオイド)」で述べました)。

 日本では過去に合法だったことから覚醒剤依存症が大きな問題であり、このサイトでも何度か紹介しています(例えば「GINAと共に」第116回(2016年2月)「「盗聴」に苦しむ覚醒剤中毒者」)。大麻については、ウルグアイに次ぎカナダで嗜好用が合法化されたこともあり、今後日本で(違法のままでも)使用者が増えるだろうということも何度も述べました(例えば「GINAと共に」第143回(2018年5月)「これからの「大麻」の話をしよう~その3~」)。

 ですが、日本の薬物依存をきたす薬剤としては覚醒剤や大麻よりもBZの方がずっと多いのです。なにしろ覚醒剤・大麻と異なり、BZは一部の医療機関で"簡単に"処方されているようなのです。ちなみに、私が院長をつとめる太融寺町谷口医院でもBZを処方することはありますが頻度はかなり稀です。ですが、初診時に「前のクリニックでは出してもらった。だから出してほしい」と繰り返し言われ、対応に苦労することがしばしばあります。時には"暴言"を吐いて帰る人もいます。

 では、BZは日本でのみ問題なのかというと、どうもそういうわけではなさそうです。アダムのザナックスの件があってから、米国のBZの蔓延状況を調べていると論文がみつかりました。医学誌『Psychiatric Services』2018年12月号に掲載された論文「米国におけるBZ系の使用と誤用について(Benzodiazepine Use and Misuse Among Adults in the United States)」で報告されています。

 論文によると、米国の年間のBZ使用者はなんと12.6%に相当する3,060万人。そのうち医師から処方されているのが2,530万人、(違法に入手した)不適切使用者が530万人です。「乱用」が認められたのが使用者全体の17.2%にも相当します。乱用者を年齢ごとにみると、最も多いのが18~25歳、最も少ないのが65歳以上です。乱用者の最も多い入手方法は「友人や親族から」でした。そして、とても重要なことは「麻薬(オピオイド)や覚醒剤の乱用・依存と、BZ系の乱用との関連性が強い」ということです。

 つまり、きっかけはBZ、そしてその後覚醒剤や麻薬に移行していく可能性が強いわけです。このサイトで、「大麻はたとえそれ自体の有害性がなかったとしても覚醒剤や麻薬といったハードドラッグの入り口になるから危険」ということを繰り返し伝えてきました。どうやらBZも同じように考えた方がよさそうです。

 BZが恐ろしい理由は他にもあります。お酒と併用すると(あるいはしなくても)記憶がなくなりその間に恐ろしい行動に出ることがあるのです。「朝起きたら台所で大量の食事をした形跡があったが記憶にない」というのは比較的よく聞く言葉です。「記憶がないけど上司に暴言のメールを送っていた」という人もいます。記憶がないままわが子を殺めた母親もいます(参考:太融寺町谷口医院ウェブサイト「はやりの病気」第124回(2013年12月)「睡眠薬の恐怖」)。

 まだあります。反対意見もあるものの最近ではBZは認知症のリスクになるという意見が強くなってきています。BZを使用していると認知症のリスクがおよそ1.5倍となり、作用時間の長いBZの使用者(ちなみにアダムの服用しているアルプラゾラムの作用時間は「中くらい」です)、長期間BZを使用している者でリスクが上昇することがわかっています(参考:太融寺町谷口医院ウェブサイト「医療ニュース」(2019年2月23日)「やはりベンゾジアゼピンは認知症のリスク」)。

 では、どんな人がBZに手を出しやすいのでしょうか。興味深い報告があります。医学誌『 American Journal of Public Health』2018年8月18日号に掲載された論文「仕事のストレスがベンゾジアゼピン長期使用のリスクを増やす(Work-Related Stressors and Increased Risk of Benzodiazepine Long-Term Use: Findings From the CONSTANCES Population-Based Cohort )」によれば、タイトル通り仕事のストレスを感じている人はあまり感じない人に比べて、BZ長期使用のリスクが男性で2.2倍、女性で1.6倍に上昇します。

 有名人が堂々と使用している(しかも一応は"合法")と聞き、インタビューを受ける前に緊張をほぐすために気軽に飲んでいると言われれば、試したくなる人もいるかもしれません。ですが、決して安易に手を出すようなものではありません。仕事のストレスが多い人は特に注意を。

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注1:ベンゾジアゼピンの英語表記はbenzodiazepineです。私の感覚としては略すならBDにした方がいいと思うのですが、なぜか一般的にはBZとされています。

参考:
はやりの病気
第164回(2017年4月)「本当に危険なベンゾジアゼピン依存症」


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第151回(2019年1月) 本当に危険な麻薬(オピオイド)

 2018年に報道された違法薬物関連のニュースをみると、おそらく一般紙で最も取り上げられたのは「大麻」でしょう。以前から決まっていたこととはいえ、カナダで嗜好用(recreational)大麻が合法化されたことが世界中のメディアで大きく報道されました。カナダはウルグアイに次ぐ全面的に嗜好用大麻を認めた2番目の国となりました。

 米国は州によって法律が異なります。2016年11年に実施された住民投票で、多くの州で医療用のみならず嗜好用大麻が合法化されたことは過去のコラムで述べました。そして、大麻の成分CBD(カンナビジオール)でできた医薬品が重症のてんかんに有効であることをCDCが承認したことも過去のコラムで述べました。ある調査によると、米国成人の85%が医療大麻を、57%が嗜好大麻を支持しています。娯楽用どころか医療用大麻の検討すらおこなわれていない日本でも大麻の使用者(というより逮捕者)は増加傾向にあるようです。

 支持者の間では、依存性も副作用も少ないのだからタバコやアルコールが合法で大麻が違法なのはおかしい、とよく言われますが、私も含めて医療者の間には安易な使用に抵抗のある者も少なくありません。この理由はこのサイトで繰り返し述べているので今回は繰り返しませんが、大麻よりも遥かに危険な違法薬物の話を今回はおこないます。それは「麻薬」です。

 米国の医療情報提供サイト「HealthDay」が発表した「2018年の健康問題トップ9」のトップにくるのが麻薬汚染です。ちなみに、残りの8つのうち1つに「大麻使用者の増加」が挙げられています。残り7つは「電子タバコ利用者の増加」、「インフルエンザの脅威」「オバマケアが維持されたこと」「遺伝子をターゲットとした個別化がん治療」「レタスからの大腸菌感染」「がん検診の基準変更」「ポリオに似た原因不明の神経疾患」です。改めて9つを分類してみると、感染症が3つ、がん関連が2つ、制度が1つ、依存性薬物が3つ、ということになります。

 麻薬がどれくらい恐ろしい薬物なのかについては、実はこのサイトの過去のコラムでも述べたことがあります。そのコラムでは、なぜ麻薬汚染がHIV感染の増加につながるかについて述べました。今回は、麻薬そのものの危険性を新しいデータなどをみながら再確認したいと思います。

 その前に言葉を確認しておきましょう。「麻薬」とはケシ(opium)の実から抽出される天然のオピオイド及びオピオイドの合成化合物のことを指します。具体的にはモルヒネ、ヘロイン、コデイン、フェンタニルなどです。ただ、報道などではコカインやLSDが"麻薬"に分類されることもありますし、さらに文脈によっては覚醒剤や大麻まで含めて"麻薬"と呼ばれるようなこともあり混乱を招きやすいので、ここからは本来の麻薬のことを「オピオイド」で統一したいと思います。

 「HealthDay」はCDC(米疾病対策センター)が2018年11月に発表したデータを引き合いに出しています。CDCのこのページだけでは分かりにくいので、これを解説した薬物依存のリハビリの団体「Recovery Village」のサイトを参照し特徴をまとめてみます。

 CDCの報告によれば、2017年の一年間で薬物の過剰摂取で死亡した米国人は72,000人以上でこれは2016年から10%の上昇。そのうち68%(約48,000人)はオピオイドが原因です。2002年から比較するとオピオイドによる死亡者はおよそ4倍にもなっています。米国の平均寿命は3年連続で減少しており、その原因がオピオイドであることが指摘されています。オピオイドの中では、フェンタニルの過剰摂取による死亡が急増していることが問題視されています。

 フェンタニルは、ヘロインの50倍、モルヒネの100倍とも言われる強力なオピオイドで、依存性や中毒性も突出しています。前回は、フレディ・マーキュリーをはじめとするエイズで他界したミュージシャンについての話をしましたが、薬物で亡くなるミュージシャンが多いのもまた事実です。そして、2016年に急死したプリンスの死因がフェンタニルだったと言われています。

 薬物による死亡の危機は女性で深刻です。米国CDCの報告によれば、1999年から2017の間で、30~64歳の女性では薬物関連の死亡者が260%も増加しています(人口10万人あたり6.7人から24.3人への上昇、死亡者数でみれば4,314人から18,110人へと増加)。ここでいう薬物には、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(参照:太融寺町谷口医院「はやりの病気」第164回(2017年4月)「本当に危険なベンゾジアゼピン依存症」)、コカイン、ヘロインなども含まれますが、CDCはこの期間に合成オピオイドの医師による処方が大幅に増加したことを指摘しており、なかでも55~64歳への処方が急増していることを問題視しています。

 オピオイドを摂取している女性が妊娠することもあり、当然新生児に影響を与えます。neonatal abstinence syndrome(通称「NAS」、日本語ではあまり使わない言葉で、あえて日本語にすると「新生児禁断症候群」)と呼ばれる様々な症状が生じますし、頭囲が小さくなることが報告されています。

 女性→新生児だけではありません。小児から思春期の生徒の間でもオピオイド汚染が深刻となっています。1999年から2016の18年間に約9千人の小児または若年者(adolescents)が、薬物が原因で死亡していることが医学誌「JAMA」で報告されています。違法に入手した薬物もありますが、注目すべきは、(フェンタニルなどの)合成オピオイドの多さです。2014年から2016年の間、合計1,508人のオピオイドでの死亡があり、そのうち468人(31.0%)が合成オピオイドだというのです。

 オピオイドはネイティブアメリカンの命も奪っています。CDCの報告によれば、2013年から2015年の間、ネイティブアメリカン(American IndianとAlaska Natives)のオピオイド過剰摂取の死亡率は、白人の2.7~4.1倍となっています。

 ここでオピオイド依存症に陥る人はどうやってオピオイドを手に入れているのかを考えてみましょう。医師には職業上の倫理観がありますから、患者さんから頼まれても必要以上の処方はできません。オピオイド依存症になったきっかけが医師の最初の処方なのは事実ですが。オピオイドを求めて医療機関を渡り歩いて入手する人もいるでしょうが、これはすぐに発覚します。したがって、闇ルートで違法に入手することになるのですが、最近"裏の手"が流行している可能性が指摘されています。

 それは「獣医からの入手」です。医学誌『JAMA』に掲載された論文によると、ペンシルバニア大学獣医学部で処方されたオピオイドは2007年から2017年で41%も増加しているのに対し、受診した動物は13%しか増えておらず、この理由として飼い主がオピオイドを使用している疑いが指摘されています。

 さて、オピオイドが問題である理由のひとつは過去のコラムでも述べたようにHIV感染ですが、もちろんそれだけではありません。現在米国ではHIVだけではなく、オピオイド乱用に伴うC型肝炎ウイルス(以下HCV)も問題になっています。

 医学誌『JAMA』に掲載された論文によると、HCV陽性のアメリカ人の半数以上は9つの州(カリフォルニア、テキサス、フロリダ、ニューヨーク、ペンシルバニア、オアイオ、ミシガン、テネシー、ノースカロライナ)に住んでいて、そのなかの5つ(ニューヨーク、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルバニア、テネシー)でオピオイド乱用が問題になっています。ちなみに、これら5つの州はアパラチア(Appalachian)地域と呼ばれる米国東部の地域です。

 さて、過去のコラムで述べたように日本でもオピオイドが処方される機会が急増しており、しかも患者さん自身は危険性を充分に聞かされていないケースが目立ちます。米国に追随してはいけません...。


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