HIV/AIDS関連情報

2008年3月23日(日) タイ、若年者のHIV感染が急増

 少なくとも1日40人が新たにHIVに感染している・・・

 タイのエイズ予防委員会がこのような発表をおこないました。(報道は3月20日のBangkok Post)

 同委員会は、新規感染者の大半が15歳から19歳の若年者であることを発表し、コンドームを使わずに複数のパートナーを持つ者が多いことを指摘しました。

 コンドームの使用に関するある調査では、大学生の13%、若いビジネスパーソンの9%しかコンドームを使っていないという結果がでています。


 かつては「100%コンドームキャンペーン」が成功しHIV感染を減少させたとされているタイでは、ここ数年、コンドームの使用率が急激に低下していることが問題になっています。

「100%コンドームキャンペーン」を立案し実施した「Mr.コンドーム」の異名をもつミーチャイ氏は、現在エイズ予防委員会の議長を務めており、「コンドームキャンペーンをやり直さなければ、タイの医療は崩壊するだろう」とコメントしています。

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 コンドームの使用ももちろん最優先課題ですが、タイの若年層では、複数のパートナー(タイ語で"ギグ"といいます)をもつことが一般的になってきています。もともと貞操観念の強いこの国でカジュアルセックスが普遍化していることも大きな問題だと思うのですが、なぜかそれを言う人は多くありません。

(谷口恭)

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2008年3月23日(日) 意外に少ないマカオのHIV

 船上カジノに高級売春婦・・・

 マカオに対してこのようなイメージを持っている人は少なくないでしょう。

 最近は経済も活発で好景気のマカオには、アジア諸国から多くの売春婦が集まってきています。当然、HIV感染も増えていることが予想されますが、実際はそうでもないようです。

 3月11日のCHINA Dailyによりますと、2007年のマカオでのHIV新規感染は21人でした。これは、2006年と比較すると25%の減少となります。人口52万人のこの島で1986年以来のHIV感染者は391人となっています。感染経路はほとんどが異性間性交渉とみられています。

 マカオのHIV感染が少ないのとは対照的に、お隣の香港では感染者が増加しています。2006年と比較して2007年は11%新規感染者が増えています。

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 香港では新規感染が増えて、マカオでは減っている・・・

 この事象をうまく説明できる理由が私には見当たりません。

 尚、参考までにUNAIDSの最新データでは、2007年のアジア全域でのHIV陽性者は約490万人、そのうち約44万人が2007年に感染した人、エイズで死亡したのは約30万人、感染経路の大半は薬物の静脈注射とコンドームを用いない性交渉です。

(谷口恭)

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2008年3月23日(日) 米国、梅毒が7年連続で増加

 3月13日のReuterによりますと、アメリカでは7年連続で梅毒の感染が増加していることが明らかとなりました。

 感染者のなかでゲイ(男性同性愛者)と黒人の占める割合が増加していることも注目されています。

 アメリカでは新たに梅毒に感染した人が2007年の一年間で11,181人となっています。このなかでおよそ6割がゲイです。1999年は、梅毒感染者のなかでゲイの占める割合が5%でしたから急激にゲイの間での感染が広がっていることになります。

 全体の感染者数をみると、2006年から2007年で約12%の増加、2007年は人口10万人あたり3.7人となります。2000年には人口10万人あたり2.1人でしたから、2000年から2007年では76%の増加となります。

 黒人だけでみてみると、男性では人口10万人あたり22人で25%の増加、女性では人口10万人あたり5人で12%の増加となっています。

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 たしかに梅毒の感染者は日本でもゲイに多いような印象がありますが、ここ数ヶ月は、少なくとも関西では、女性とストレートの男性にも広がってきています。

 梅毒の感染力は極めて強くコンドームを用いていても完全に防ぐことはできません。けれども早期発見であれば簡単に治すことができます。

 気になる人は早めに受診しましょう。

(谷口恭)

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2008年3月2日(日) ミャンマーとベネズエラが世界最悪のドラッグ元

 米国の国際麻薬管理戦略会議(International Narcotics Control Strategy Report for Congress)が、世界で最も違法薬物の供給元となっている国としてミャンマーとベネズエラを名指ししました。(報道は3月1日のBangkok Post)

 報告では、ベネズエラがヨーロッパと米国への薬物供給の最大の窓口となっていることを指摘しています。

 また、ミャンマーはアジア諸国への最大の供給国であり、なかでもメタンフェタミン(覚醒剤)の最大の産生国であることが指摘されています。

 ミャンマーでは近年ケシの栽培が減っているのは事実ですが、その代替品として(覚醒剤などの)合成薬物の製造が急増していることも報告されています。

 ベネズエラとミャンマー以外で、薬物の製造もしくは販売国として名指しされたのは、アフガニスタン、バハマ、ボリビア、ブラジル、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、ガテマラ、ハイチ、インド、ジャマイカ、ラオス、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、パナマ、パラグアイ、ペルーです。

 

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 今回の報告では北朝鮮が挙げられていませんが実際はどうなのでしょう。少し前までは日本に流通しているメタンフェタミンの大半が北朝鮮製だと言われていました。

 最近の覚醒剤は価格が上がって質が落ちているとの噂がありますが、これは質のいい北朝鮮製が入りにくくなってきて、ミャンマー製の高品質でないものが入ってきているからなのでしょうか。

 いずれにしても、産生国での取締りと同時に、港や空港での管理も徹底してもらいたいものです。

(谷口恭)

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2008年2月29日(金) 中国でHIV新規感染が急増

 2月22日のReuterによりますと、中国での2007年のHIV新規感染が前年に比べて45%も増加しています。これで2007年の中国のHIV陽性者総数は約70万人となります。

 また、梅毒は前年に比べて24%の増加だそうです。

 中国のHIV陽性者総数については、国連は次のような試算をしています。(報道は2月23日のThe Independent)

「もしも中国政府が抜本的な対策をとらなければ、中国でのHIV陽性者は2010年までに1千万人になるだろう」

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 中国では、これまで「HIVは外国人のもの」と誤った認識が世論に浸透していました。また、「HIVは箸の共用で感染する」「握手をすればHIVに感染する」などといったことを信じている人が少なくありません。

 現在の中国でのHIV感染ルートで最も多いのが、異性間の性交渉です。地方から建築業などで出稼ぎにきているおよそ2億人の男性がハイリスクグループとされていますが、これはコンドームを用いない性交渉(unprotected sex)が減らないからです。

 同時に地方から売春婦として出稼ぎにきている女性たちももちろんハイリスクグループです。

 HIVだけではありません。報告にもよりますが、中国のB型肝炎ウイルス陽性者は最大で1億2千万人になるとの試算もありますし、C型肝炎ウイルスに関してはデータそのものが存在しません(私はみたことがありません)。

 一方、日本人男性をみてみると、中国に出張し容易に現地女性と性交渉をもつ男性が急増している印象があります。

 今後、「中国で仕事をする日本人」がハイリスクグループと呼ばれるようになるかもしれません。

(谷口恭)

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