GINAと共に

第79回 間違いだらけのオーラルセックス(後編)(2013年1月)  

 オーラルセックスでの性感染症を防ぐためにコンドームを用いましょう・・・

 このようなことを耳にする機会が最近増えてきていますが、私自身はこの表現には少し抵抗があります。コンドームがオーラルセックスでの危険性を完全に回避できるわけではないからです。

 ここで、「オーラルセックス」とは何か、について考えてみましょう。オーラルセックスには3つのタイプがあります。1つは女性(もしくは男性)が男性のペニスを口で愛撫するフェラチオ(fellatio)、2つめは、男性(もしくは女性)が女性の外性器を口で愛撫するクンニリングス(cunnilingus)、3つめは、男性・女性が相手の肛門を口で愛撫するリミング(rimming)です。このうちコンドームは1つめのフェラチオにしか有効でないのは自明でしょう。

 しかも、では3種類のうちのひとつであるフェラチオに対してならばコンドームは完璧な予防法か、と問われればそういうわけでもありません。それについては後半に述べるとして、まずはクンニリングスとリミングについてみていきましょう。

 クンニリングスやリミングによる性感染症を防ぐには、「デンタルダム」と呼ばれるラテックス製のシートを用いるという方法があります。つまりこのシートを女性の外陰部や男女の肛門にかぶせた上で、愛撫をおこなうのです。ただ、日本ではこのデンタルダムがほとんど売れない、という話を聞いたことがあります。

 以前、このサイトにメールでオーラルセックスについての相談をしてきた人(男性)に、デンタルダムの紹介をしたことがあるのですが、その人の返信には、「クンニリングスの醍醐味は膣分泌液を味わうことにあるんだから、デンタルダムでは意味がない」と書かれていました。「醍醐味」などという言葉が使われるなどとは考えてもみなかった私には返す言葉がみつかりませんでした・・・。

 このような人は、特定の信頼できるパートナー以外とはクンニリングスという行為はやめるべきです。HIV感染のリスクを背負ってでもすべき行為、とは私には到底思えません。

 肛門を愛撫する行為、リミングについて考えてみましょう。この行為では、考えなければならない感染症の種類が大幅に増えます。まずは、A型肝炎のリスクを考えなければなりません。A型肝炎は不潔な水や、し尿(人糞)を肥料としてつくった野菜、生ガキなどが口から入って感染します。日本でも戦後までの不衛生な時代には当たり前のように存在していた感染症ですし、タイを含む東南アジアでは今でも珍しくありません。

 なぜそのA型肝炎が性行為で問題になるかというと、リミングにより感染するからです。よく教科書には「性感染症としてのA型肝炎は同性愛者に多い」と書かれていますが、私の実感ではそのようなことはなく、ストレートの男性にも女性にも起こります。ということは、リミングをおこなう人は医学の教科書を書く偉い先生が考えているよりもずっと多い、ということなのでしょう(注1)。

 リミングで感染する感染症としてはA型肝炎以外にはアメーバ赤痢が有名です。しかし、これらだけではありません。感染性胃腸炎を引き起こすすべての病原体が感染すると考えるべきです。つまり、ノロウイルスであろうが、大腸菌Oー157であろうが、コレラであろうがサルモネラであろうが、肛門に付着している病原体が口の中に入るわけですから、簡単に感染が起こることは容易に想像できると思います。

 こういった病原体が口腔内に入り感染が成立すると下痢を起こすことが多いのですが、ときに診断がつきにくいことがあり悩まされます。特に、東南アジアでの性交渉が原因の可能性があれば、日本には存在しない病原体も視野に入れなければなりません。例えば、ジアルジア症という疾患はランブル鞭毛虫という寄生虫が原因となるのですが、積極的に疑わない限りはこの診断をつけるのは大変です。

 デンタルダムを使わない直接のリミングではHIVのリスクも出てきます。肛門粘膜というのは意外にもろく、これまで痔になんかなったことがないという人でも、少しの刺激で小さな傷ができてそこからわずかな出血が起こることがあります。また、自身は気づいていなくても胃を含む消化管のどこかに炎症があって、そこからわずかな出血が起こっている、ということもあります。ということは、リミングをする方もされる方も気づいていないけれども血液を介した感染が起こっている可能性があるわけです。

 つまり、デンタルダムを用いない直接のリミングなどというのは危険極まりない行為であり、オーラルセックスでの性感染症を防ぐためにコンドームを用いましょう、という標語では何も解決しないのです。

 では、クンニリングスやリミングは一切しない、あるいはしてもデンタルダムを用いる、そしてフェラチオにはコンドームを使う、というケースでは完全に安心できるかというとそういうわけでもありません。

 まずコンドームには「破損する」というリスクがあります。薄いラテックスに歯牙が接触するわけですから、膣交渉のときよりも破損するリスクが増えるのは当然です。

 もうひとつはアレルギーのリスクです。ラテックスアレルギーは従来言われていたよりも実際の患者数が多いのではないかと私はみています。これは、ラテックス製品に触れる機会が増えているからではないかと思われます。ラテックスアレルギーというのは、体質で生まれたときから決まっているものではなく、ラテックスに何度も触れることによって発症します。

 代表的なものが医療者が用いるグローブで、ラテックスアレルギーの職業別罹患者第1位は医療従事者です。医療従事者というのは、医師や歯科医師だけでなく看護師も、さらには最近では介護士もラテックス製のグローブを用いることが増えてきています。工場勤務の人やケーキなどをつくる仕事をしている人もラテックス製グローブを用いています。変わったところでは、風船(ラテックス製です)を膨らます機会の多い人にも起こります(注2)。

 さらに最近増えているアレルギー疾患にラテックス・フルーツ症候群というものがあり、これは特定のフルーツとラテックスの分子レベルでのかたちが似ているために、フルーツでアレルギーが成立するとラテックスにも反応してしまう、というものです。この疾患を起こしやすいフルーツは、キウイ、アボガド、パパイヤなど従来日本人がそれほど食べていなかったものに多いという特徴があります。つまりこういった南洋のフルーツを摂取する機会が増えた結果、ラテックスアレルギーが増えている可能性があるのです。

 ラテックスアレルギーはある日突然現れてその日のうちに重症化して死亡した、というケースはありません。通常は、何度も繰り返しているうちに重症化していきます。海外では死亡例もあります。初期のうちに対処すれば問題ありませんから、例えば、コンドームを用いるとその後陰部が赤くなったり痒くなったりする、という人は早めに医療機関を受診した方がいいでしょう。また特定のフルーツや野菜を食べると口の中がかゆくなる、という人もこれからラテックスアレルギーが生じる可能性がありますからかかりつけ医に相談してみるべきでしょう(注3)。ただし、ラテックスアレルギーがある人はポリウレタン製のコンドームを用いれば対処できます。(ポリウレタン製のデンタルダムというのは聞いたことがありませんが・・・)

 コンドームはたしかに性感染症の予防になくてはならないものです。しかし、同時にその限界についても知っておかなければならない、というわけです(注4)。


注1:A型肝炎にはすぐれたワクチンがあり、それを接種しておくとまず間違いなく感染しませんし、ワクチンはかなり長期間に渡り有効です。ただし、現在需要が多く供給が追いついていない状態で入手困難となっています。

注2:「阪神ファンで甲子園に行くと口がかゆくなる」という人がときどきいます。こういう人はラテックスアレルギーを一度は疑うべきでしょう。甲子園名物のジェット風船もラテックス製です。

注3:下記コラム「ラテックスアレルギー」も参照ください。

注4:下記コラム「コンドームの限界」も参照ください。

参考:
GINAと共に第16回(2007年10月) 「コンドームの限界(前編)」 
GINAと共に第17回(2007年11月) 「コンドームの限界(後編)」
太融寺町谷口医院はやりの病気第35回(2006年7月) 「ラテックスアレルギー」

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第78回 間違いだらけのオーラルセックス(前編)(2012年12月)

 先月(2012年11月)から、オーラルセックスでの性感染症蔓延を防止するために厚生労働省は、「オーラルでも、うつります。性感染症。」という啓発用のポスターを作成し配布しています(注1)。

 一部の活動家からは、「何が言いたのかよくわからず不十分」という声もあるようですが、私自身は、厚労省がこのようなポスターをつくった、ということは評価されるべきであると思います。オーラルセックスでの性感染症がいかに蔓延しているか、ということは充分に検討されておらず、日本で性感染症がこれだけ多い理由のひとつは危険なオーラルセックスがはびこっているからです。厚生省がまずは最初の一歩をようやく踏み出したのではないかと私は感じています。

 日本人のオーラルセックスに対する危機意識は"恐ろしいほどに"低いと言えます。

 2012年12月9日に開催された日本性感染症学会第25回学術大会で、日本家族計画協会の北村邦夫医師が「口腔性交は日常化しているが性感染症予防に無関心な日本人の実態を明らかにする」というタイトルで、日本人のオーラルセックスに対する実情を発表されました。

 北村医師らがインターネットを使って8,700人から回答を得たアンケート調査によれば、「この1年間に口腔性交の経験があるか」という質問に対し、「している」が全体の49.5%(男性54.4%、女性42.7%)を占め、「口腔性交(オーラルセックス)の際、性感染症を予防するためにコンドームを使うか」という質問に対しては、なんと全体の82.8%(男性79.4%、女性87.9%)が「まったく使わない」と答えているというのです(注2)。

 この調査では、対象者が「セックス(性交渉)経験のある方」とされており、その性交渉の相手が、特定のパートナーなのか、不特定多数なのか、あるいは売買春や性風俗もが含まれているのかはわかりませんが、全体の82.8%が「オーラルセックスにコンドームをまったく用いていない」というのは、ちょっと想像するのが恐ろしい、というか、しかし裏を返せば、日本でこれだけ性感染症に罹患する人が多いことに頷ける数字でもあります。

 以前私は南タイのある地方都市で、タイ人の公衆衛生学者とその都市のHIVに関する共同研究をおこなったことがあります。その都市では保健師らが置屋を定期的に訪問し、コンドームを配布したり、セックスワーカーたちの健康状態を確認しにいったりしているのですが、その訪問に我々も一度同行しました。そのときある置屋で私が話を聞いた10代のセックスワーカーたちが、「コンドームなしでのオーラルセックス(フェラチオ)を求めてくるのは日本人だけ」と言っていたことに驚きました(注3)。

 日本はタイなどと比べればHIVの罹患率がはるかに低いですし、そもそもタイの地方都市でセックスワークをしなければならない少女たちからみて、日本とは憧れの国であり、日本人に対するイメージというのは勤勉で真面目なわけです。その日本人が性感染症に対するリスク意識があまりにも低いことに彼女たちが驚かされるそうです。

 もっとも、見方を変えれば、日本ではまだHIVが諸外国ほど蔓延していないからゆえに、性感染症に対する危機意識が低く、置屋でコンドームなしのフェラチオ、などという信じがたい行動をとる人がいるということなのかもしれません。

 HIVが国を上げて取り組まなければならないほど深刻になったタイでは、依然年間およそ15,000人が新たにHIVに感染している、という現実はありますが、それでもHIVが爆発的に流行した20年前と比べると性感染症に対する危機意識が随分変わってきています。

 2006年にGINAが実施した、フリーのセックスワーカー(independent sex worker、注4)200人を対象とした聞き取り調査では、オーラルセックスについても尋ねています。

 「オーラルセックスの際、コンドームを用いますか?」という質問に対し、「オーラルセックスはしません」が19%、「することもあるがコンドームは必ずつける」が38%です。一方、「オーラルセックスでコンドームをまったく用いない」と答えたのはわずか4%です。先に紹介した日本人を対象としたアンケート調査では82.8%ですから、日本人とタイ人の危機感の違いに唖然としてしまいます。

 もちろん、一般の日本人とタイのフリーのセックスワーカーでは単純な比較はできません。しかし、フリーのセックスワーカーというのは、置屋などで働くセックスワーカーや日本の性風俗店で働くセックスワーカーとは異なり、「気に入った男性としかセックスしない」のが普通です。つまり「セックスワーク」というよりは「擬似恋愛」と呼ぶべきようなものです(注5)。

 GINAがおこなったこの調査では、200人のフリーのセックスワーカーに対し「オーラルセックスでHIVに感染するか」という知識を問う質問もしています。結果は、全体の85%のセックスワーカーが「感染する」と答えています。これはもちろん正解で、ものすごく簡単に感染するわけではありませんが、オーラルセックスでもHIVに感染することはあります。

 私が院長をつとめる太融寺町谷口医院でも、まだノーマルセックスの経験がなく、一年前のただ一度のオーラルセックスでHIVに感染した患者さんがいます。しかもそのオーラルセックスの相手というのは元交際相手なのです。もしもこの患者さんに「オーラルセックスでもHIVに感染することがあるんですよ」ということを一年前に伝えることができていたならば、この患者さんの人生はまったく違ったものになったかもしれません・・・。

 日本人の多くは「オーラルセックス程度ではHIVに感染しない」と考えているように見受けられます。私の印象でいえば、日本人よりもタイのセックスワーカーの方がはるかに性感染症に関して正しい知識を持っているように思えます。

 GINAのフリーのセックスワーカーに対する調査から、もうひとつ興味深い設問を紹介したいと思います。それは、「コンドームなしの性交渉を強いられたことがありますか?」というものです。この設問に対しては、「膣交渉」と「オーラルセックス(フェラチオ)」の双方について訪ねています。有効回答数は191人、193人と少し異なりますが、結果はほとんど同じで、双方とも全体の68%が「強いられたことがある」と答えています。

 当時この調査に中心的にかかわっていたタイ人のスタッフによれば「強いられた」の解釈は人それぞれになるために、レイプに近いようなものを想像する人もいれば、単に軽く求められただけ、という人もいるようで、この調査はどれだけ彼女たちが「危険な目にあっているか」の参考にはならないそうです。興味深いのは、膣交渉とオーラルセックスでイエスと答えた率がほぼ同じということです。

 強いられるのは彼女たちですから、強いるのはその顧客となります。そしてその顧客には日本人もいますが、数で言えば圧倒的に西洋人が多いわけです。つまり、西洋人の男性もまた、オーラルセックスの危険性とノーマルセックス(膣交渉)のそれとを同じように認識している、ということを示しています。

 オーラルセックスというのは地域によって普及度がまったく異なるようで、イスラム圏ではそのような行為をおこなう人はほとんどいないそうです。西洋人やアジア人はその人によるそうですが、日本人ほどオーラルセックスが好きな民族はいない、そしてオーラルセックスでの性感染症のリスク意識が大幅に欠落しているのが日本人、というのがGINAの調査を通して得た私の実感です。

 では、オーラルセックス(フェラチオ)にコンドームを用いればそれで問題ないのか、というと、そう単純な話でもなく、正解を先に言えば「ノー」となります。次回はそのあたりについて述べていきたいと思います。


注1:このポスターは下記のURLで閲覧することができます。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/dl/poster_oral.pdf

注2:北村医師らのこの調査については下記のURLでも閲覧することができます。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=57677

注3:詳細は<ドクター谷口の「セイフティ・セックス講座」>の下記を参照ください。
「日本人はフェラチオ好き」

注4:「フリーのセックスワーカー」「independent sex worker」という単語について補足しておきます。いわゆるマッサージパーラー(ソープランド)や日本の風俗店のような組織(店舗)に所属しているセックスワーカーをdependent sex workerというのに対して、バーやカフェなどで"自由に"顧客を探すセックスワーカーをindependent sex workerと呼びます。日本語風に言えば、「フリーのセックスワーカー」と言えるでしょう。しかし、「freeのsex worker」という言い方は、性的サービスを無料でおこなうセックスワーカーという意味にも解釈できますので、このコラムでは便宜上「フリーのセックスワーカー」という表現をとっていますが、independent sex workerという表現の方が適切です。また、independent sex worker, dependent sex workerをそれぞれ、indirect sex worker, direct sex workerと表現することもあります。

注5:このあたりがタイのフリーのセックスワーカーの最も興味深いところであり、タイでHIVが減らない理由のひとつです。興味のある方は、下記を参照してみてください。
「タイのフリーの売春婦について」

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第77回 注目されない世界エイズデイ(2012年11月)

 前回のこのコラムでは、FDA(米国食品医薬品局)が、抗HIV薬のツルバダを世界初の「HIV予防薬」として承認したのにもかかわらず日本ではほとんど話題になっていない、ということを述べましたが、日本では、HIV予防薬が注目されないというよりも、HIVやエイズそのものに対する世間の関心が薄れてきています。

 12月1日は世界エイズデイです。毎年この日に向けて、各市町村や各種団体がイベントを開催したり無料検査をしたりするのですが、今年はその数が全国的に少なく盛り上がりにも欠けているようです。日本では秋から冬にかけてが学園祭のシーズンですから、数年前には多くの大学や短大でエイズ関連のイベントがおこなわれていましたが、現在はかなり下火になっているようです。

 保健所ではHIVの無料検査がおこなわれていますが、数年前なら世界エイズデイのことがマスコミで取り上げられる11月頃に検査を受ける人が増えてきていたのに、ここ数年はそのようなことがなく今年も検査数は増えていないそうです。

 私が院長をつとめる太融寺町谷口医院(以下、谷口医院)でも、HIVの検査目的で受診する人は年々減少しています。2008年には、HIVの検査目的の人が診療所にひっきりなしにやって来られ、一般の患者さんの待ち時間が大幅に長くなってしまったほどです。

 2008年には行政も予算をつぎ込んで検査を促しました。大阪市の地下鉄には「大阪では2日に1人が感染している」といったキャッチコピーが書かれたポスターが大量に掲示されました。これは前年の大阪府のHIVに新規に感染が発覚した人が190人近くいましたから、年間365日であることから、「2日に1人」という表現が生まれたのでしょう。しかし、これを見た一般の人のなかには「2人に1人」と見誤る人が続出したのです。当時この現象をみかねた私は、行政関係者に、このような誤解を招くようなポスターはつくらないでほしい、と苦情を呈したほどです。

 しかし、不安を煽り過ぎる行政の姿勢やマスコミの報道を心配する必要は翌年からまったくなくなりました。2009年から一気にHIVやエイズに関する世間の注目が薄れたのです。当初は新型インフルエンザの流行のせいで、インフルエンザが落ち着いたら再びHIVに関心が向かうのではないか、とも言われていましたが、そのようなことはありませんでした。そしてこの傾向は年々顕著になってきています。私が日本のHIVの検査に何らかのかたちで関わりだしたのは2004年頃からですが、今年(2012年)はこれまでで最も世間の関心が低いような印象があります。

 HIVへの関心が低下する理由が、HIV感染者が減っているから、ということであれば問題ないでしょう。しかし、実際はその逆です。谷口医院では、今年(2012年)にHIVが新たに発覚した人は2007年の開院以来過去最高レベルとなっています。しかも、以前にもお伝えしまたが(下記コラムも参照ください)「いきなりHIV」の割合が今年は、なんと9割にものぼるのです。

 「いきなりHIV」というのは私が勝手に考えた造語で正式な言い方ではありません。意味は、「発熱や皮疹、下痢などで受診して診療をすすめていくなかでHIVが発覚した。患者さんはまさかそれらの原因がHIVであるとは考えていなかった」というケースのことです。

 谷口医院の数字だけで日本全体の状況を推測するには無理がありますが、もう一度谷口医院の状況をみてみると、2007年の開院以来HIV感染が発覚する人が今年(2012年)は、11月中旬の数字でみると過去最多の勢いで、なおかつ「いきなりHIV」が約9割を占めているのです。これを額面どおりに読めば、HIVに感染していることに気づいていない人がたくさんいる、ということに他なりません。

 HIVやエイズに無関心になっているのは日本だけではありません。タイでもHIVに対する関心は急激に低下しています。この理由は、母子感染が減り、エイズ孤児が減り、薬がいきわたるようになったからであり、これらはもちろん歓迎すべきことですが、成人の新規感染が減っているわけではありません。ここ数年は新規に感染が発覚した人が12,000人から15,000人で推移しています。

 タイで特に問題になっているのが、男性同性愛者の感染率です。以前からタイの男性同性愛者の陽性率は2割もしくはそれ以上ではないか、と言われていましたが、最近の調査では、一部のマスコミによりますと、男性同性愛者の31.3%がHIV陽性、としているものもあります。いくらなんでも男性同性愛者の3人に1人がHIV陽性、というのはにわかには信じがたいのですが、ウボンラチャタニ県など一部の県では、こういった調査の結果を受けて、男性同性愛者を対象とした無料の検査と無料の治療の政策が実施されているようです。

 実は私は日本でも同じような状況に近づいているのではないかと感じています。日本では以前から、HIVが新規に発覚する人の多くは男性同性愛者でしたが、2008年頃からは異性愛者や女性の感染者の占める割合が増加してきていたのも事実です。それが、ここに来て再び男性同性愛者の比率が増えてきています。谷口医院の数字から日本全体の状況を推測するにはやはり無理がありますが、2012年に谷口医院でHIVが新規に発覚した人の8割以上は男性同性愛者なのです。

 「男性同性愛者がHIVのハイリスクグループ」という言い方は、私としては好きではありません。なぜなら男性同性愛者の中には、性感染症の予防に非常に詳しい人が少なくなく、HIVの啓蒙活動をされているような人も大勢いるからです。ストレートの人たちよりも男性同性愛者の方が性感染の予防をしっかりしているのではないか、とすら感じることもあります。実際、谷口医院に「僕たち付き合うことになったので初めてセックスをする前に性感染症の検査に来ました」と言ってやってこられるのは男性同性愛者の方が圧倒的に多いのです。男性と男性のカップルに次いで多いのが、男性は外国人(白人もしくは黒人でアジア人は稀)で女性は日本人というカップルです。残念ながら日本人どうしの男女のカップルの比率は非常に少ないというのが現実です。

 どこの国や地域でも、HIVの蔓延には、まず男性同性愛者間でのアウトブレイクがあり、一定数を超えるとストレートの人たちに広がり始めます。日本ではHIVの新規感染が増えているとはいえ、諸外国に比べればまだアウトブレイクしているという状況にはありません。この理由として、私は日本の男性同性愛者は海外の男性同性愛者に比べて、きちんとした知識を持っていて感染予防に努めているからではないか、と考えています。日本の同性愛者は(他国の状況にそれほど詳しいわけではありませんが)知的レベルが高く社会的階層が高い人が多いのが特徴ではないか、という印象が私にはあります。しかし、最近の谷口医院の傾向をみていると、男性同性愛者間の新規感染が最大の問題と考えざるを得ないのです。

 あらためて言うことではありませんが、HIVには感染しない方がいいにきまっています。偏見やスティグマは依然存在していますし、治療に要する費用も大変です。HIVの治療のガイドラインは高頻度に改訂されているのですが、改訂される度に抗HIV薬の開始の時期が早くなる傾向にあります。現在HIV感染者はその程度に応じて医療費の負担が変わってきます。抗HIV薬の投薬を受けるようになれば障害者医療の扱いとなりますが、程度によって認定される障害の級数に差があり、個人負担の割合が大きく変わってきます。早期発見され症状がでておらず検査値にも異状がない場合はそれなりの負担が強いられることになります。

 HIV感染は、一生薬を飲み続けなければならないのだから「難病」指定すべきだ、という声も一部にはありますが、今のところ「難病」に指定されるような流れにはありません。もしも「難病」(正確には「特定疾患治療研究事業対象疾患」といいます)に指定されれば、感染者の医療費の負担はほとんどゼロになりますから随分と検査や治療がおこないやすくなりますから、もちろん私としては大賛成なのですが、実現にはいくつもの壁があると思われます。

 世間の関心が低下し、検査を受ける人が減っている、しかし「いきなりHIV」が増えている、というこの現実を考えたとき、我々ひとりひとりは何をすべきでしょうか。

参考:GINAと共に第64回(2011年10月)「増加する「いきなりHIV」

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第76回 注目されないHIV予防薬(2012年10月)

 2012年7月16日、FDA(米国食品医薬品局)は、世界初のHIVの予防薬として「テムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル」(商品名はツルバダ(Truvada)、以下「ツルバダ」とします)を承認しました。ツルバダは現在もHIVの「治療薬」としては世界中で用いられていますが、「予防薬」としては承認されていませんでした。

 このニュースは瞬く間に世界中を駆け巡り、日本でも一般紙を含むメディアで報道されました。FDA長官のMargaret A. Hamburg氏は、ツルバダのHIV予防薬としての承認は「HIVとの戦いにおける記念すべきマイルストーン(an important milestone in our fight against HIV)」との声明を発表しました。

 マイルストーンというのは、元々は「道しるべ」のことですが、「画期的な出来事」とか「節目」といった意味です。しかし、FDA長官がマイルストーンという言葉を使った割には、その後の報道をほとんど聞きませんし、これに対するコメントを発表した日本人の識者も私の知る限りほとんどいません。特に、日本では、この発表の直後には確かに一般紙でも報じられましたが、その後週刊誌に取り上げられたり、エイズ関連のウェブサイトやメーリングリストで活発な討論が繰り広げられたり、といったこともありませんでした。

 私自身はこの報道を聞いたときに感じたことは、「予防薬として承認されたのはよかったけれど、コストを誰がどのように負担するかは論じられていない。高いコストが問題になるのは必然であり、コスト問題を解決しない限り、HIV予防薬などというのは<絵に描いた餅>である」、というものでした。

 いずれ、医師を含む識者や、HIV陽性の人のパートナーなどがコスト問題について何らかのコメントを発表していき世間の関心を呼ぶことになるだろう、と私はみていたのですが、意外なことに、私の知る限り、日本においてはほとんどこの件に関する意見を聞きません。

 さて、今後ツルバダがHIV予防薬として普及していくかどうかを論じる前に、まずは、どのような経緯でFDAがツルバダを予防薬として承認したか、についてみておきたいと思います。

 今回ツルバダが予防薬として承認されることになった、有効性と安全性に対する調査は2つあります。1つは「iPrEx試験」、もうひとつは「Partners PrEx試験」と命名されています。

 iPrEX試験は、不特定多数との相手との性交渉がある2,499人を対象とし、ツルバダとプラセボ(偽薬)を投与したそれぞれのグループでHIV感染の有無を比較しています。その結果、ツルバダを投与したグループは、プラセボを投与したグループに比べて42%の感染リスク低下が認められたそうです。

 Partners PrEx試験では、HIV陽性のパートナーをもつ4,758人を対象とし、ツルバダを投与したグループはプラセボを投与したグループに比べ、感染リスクが75%低下していたそうです。

 安全性については、両方の調査で、下痢、悪心、腹痛、頭痛、体重減少などの報告がありましたが、これらは従来から報告されている軽症の副作用であり、重篤な有害事象の発現はごくわずかだったそうです。

 これら2つの調査結果を検討した上で、FDAはツルバダの予防的投与を承認したわけですが、承認されたからといって、誰もがツルバダを予防的に服用できるわけではありません。予防内服ができるのは、(当たり前ですが)HIVに感染していないことが条件です。ですから使用開始前にはHIVに感染していないかどうかの検査をしなければならないことになっています。さらに、ツルバダの投薬が開始された後も、少なくとも3ヶ月に一度程度は感染していないかどうかを確認しなければならないことになっています。また、ツルバダの副作用がでていないかどうかを確認するための採血も定期的に必要になります。

 コストに関しては、2012年7月20日付けのReutersの記事を読むと、ツルバダの予防内服には年間14,000USドル(約1,100,000円)の費用が必要になるとされています。アメリカでこれだけの費用を負担してHIVの予防ができる人がどれだけいるのだろう・・、と感じます。

 日本では、他の多くの薬と同様、抗HIV薬も諸外国よりも高価であり、ツルバダの薬価(薬1錠あたりの公定価格)は3,756.30円です。日本ではツルバダが予防薬として承認されたとしても保険適用となることはまずありえないでしょうから、まるまる自己負担となります。さらに診察代、検査代も自費となり、自費診療では消費税などもかかってくるでしょうから、年間150万前後の費用がかかることが予想できます。果たして、HIV陽性のパートナーを持つ日本人でこの金額を負担できる人はどれだけいるのでしょうか。

 米国(FDA)がツルバダの予防投与を認めた理由は、「感染者を増やさないため」ですが、もう少し"泥臭く"考えてみたいと思います。どこの国でもそうですが、国は国のことを考えているのであって、個人のことを考えているわけではありません。おそらくFDAは次のように考えているはずです。

 米国ではHIV予防や教育をこれまでおこなってきたが、それでもなお毎年約5万人の成人や思春期の子どもが新たにHIVに感染している。毎年5万人がHIVに感染することで必要になる医療費は相当な額になる。ツルバダは高価な薬だが、HIVの治療をおこなうことを考えれば随分と安くつく。(ツルバダはHIVの治療としては単独で用いられることはなく他のHIV薬と組み合わせて用います) つまり、国全体でみたときには、ツルバダをリスクのある人たちに予防的に内服してもらうのが結果として医療費を削減することになる。と、このようにFDAは判断しているわけです。

 さらに、もう少し"きなくさい"観点から推論してみたいと思います。FDAの承認というのは世界中に影響を与えます。FDAが承認したなら、金銭的な問題がクリアできれば、例えばアフリカの貧しい国でも使うべき、ということに世論は納得します。しかし、当然アフリカの国々の政府には高価な薬を大量に購入する余裕はありませんし、ODAとして先進国から受ける支援も抗HIV薬のみに向けることもできません。では、金銭的な問題はどうしようもないのか、というとそういうわけでもありません。例えばゲイツ財団などは(私の知る限り「噂」の域を出ませんが)アフリカでのエイズ支援を積極的に考えており、ツルバダを大量購入することに前向きなのではないかと言われています。一方、ツルバダの製造元のGilead社としては、特許が切れて安い後発品(ジェネリック薬品)が登場する前に大量にさばいて在庫を処分してしまいたいと考えているのではないか、と指摘する声があります。

 しかし、たとえ製造元の在庫処分という目的があったとしても、結果としてアフリカの必要としている人々にツルバダが行き渡り、HIVの新規感染が減少すれば、先にアメリカの話で述べたようにトータルでみた医療費が安くつくのは事実なわけです。

 残念ながら日本では、HIV陽性者の(パートナーの)立場に立った議論も上がってこなければ、公衆衛生学的な観点からの議論も聞かれません。いったいこの国は、HIVの新規感染に対してどのように考えているのでしょうか。「だったらお前が立ち上がって世間の関心を高めるような努力をやれ!」と言われそうですが、私も実際そう思います。

 これから私はこの問題を多くの人に問いかけていきたいと考えています。これを読まれたあなたも、「もしも自分のパートナーがHIV陽性だったら予防薬を使うべきか」という観点で考えてもらえれば、と思います。

参考:GINAと共に第61回(2011年7月) 「緊急避妊と抗HIV薬予防投与」

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第75回 恥ずべき北タイのロングステイヤー達(2012年9月)

 退職後は海外でのんびり過ごしたい。タイはどうなんでしょう・・・。

 数年前からこのような質問をしばしば受けるようになりました。円高の影響もあってなのか、定年退職後に海外在住を希望する人は年々増えてきているようです。そのなかでも東南アジアは治安がいいことや食事が美味しいことなどに加え、物価が安いことから人気が高いそうで、その東南アジアのなかでも、タイはマレーシアと並ぶ人気国だそうです。

 タイで日本人のロングステイヤーが最も多いのはバンコクですが、バンコクは好きでない、という人もいます。あの空気の悪さと喧騒が、のんびりと老後を過ごしたい、という人達から不人気なのは頷けます。数年くらい前までは、ハジャイ(ハットヤイ)などの南タイもそこそこ人気があったようですが、イスラム系のテロが一向に収まらないことから治安の悪さを懸念する人が増えて日本人は減ってきているそうです。

 一方、北タイの最大都市であるチェンマイは、ここ数年間の発展で外国人が随分と過ごしやすくなっています。英語表記(日本語表記も珍しくありません)の看板が増え、レストランのメニューも英語版が用意され、タクシー、インターネットカフェなども増えて、生活に不便を感じることが次第になくなってきています。

 日本人が増えている北タイはチェンマイだけではありません。チェンライにもここ数年で日本人が増えて、日本人のコミュニティや日本人が経営する食堂などもあるそうです。

 チェンマイやチェンライを含む北タイの魅力として、まず気候がいいことがあげられます。真夏でもバンコクほど気温が上がりませんし、乾いた風が心地よいためにクーラーをそれほど必要としません。公害や空気汚染はほとんどありませんから空気がおいしく静かです。海が好き、という人には物足りないかもしれませんが、きれいな山がたくさんあるためにハイキングやトレッキングを楽しむこともできます。その上、物価がバンコクよりも安く、食べ物はバンコクよりも塩味がきいていて日本人好みの味付けと言えるでしょう。改めて考えてみても北タイはロングステイに理想的な地域といえます。

 北タイがロングステイに向いている理由はまだあります。それは「多くの現地のタイ人が日本人に対して好意的」ということです。タイに行ったことのある人なら体感されたことがあると思いますが、多くのタイ人は日本人に好感を持っています。1970年代には一時的に反日感情から日本製品不買運動などがおこった時代もありましたが、現在では多くのタイ人が親日なのは間違いありません。今でも北タイを含めタイの地方に日本人(の男性)が行くと「コボリ、コボリ」と言って歓迎されます。これは何度も映画化されているタイの国民的小説『クーカム』(日本語版は『メナムの残照』)の主人公が「コボリ」という名の日本人で、今でも「タイで最も有名な日本人は?」とタイ人に質問すると「コボリ」という答えが返ってくることもあります。

 さて、そろそろ本題に入りましょう。日本人にとって北タイが理想のロングステイ先であるのは間違いないのですが、実際のロングステイヤー達の評判が最近すこぶる悪いのです。

 現地の声をまとめてみると、日本人の評判が悪い理由はいくつもあります。「食堂などで大声をだして他人の迷惑を顧みない」「日本人どうしが仲が悪く諍いやけんかが絶えない」「日本人が日本人をだます詐欺が少なくない」「タイ語どころか英語もできない日本人がいて語学を勉強する気すらない」・・・、と同じ日本人として恥ずかしくなる声が後を絶ちません。

 しかし、日本人に対するクレームのなかで最も多いもの、そして最も悪質と思われるものは「恋愛」に絡んだものです。いえ、「恋愛」というよりは「性(セックス)」と言うべきでしょう。

 恋愛をする間もなく仕事一筋でやってきて、独り身のまま気がつけば定年退職、という人や、何らかの事情で離婚をしており現在は独り身、という人が北タイという新天地で新しいパートナーを見つける、ということにはまったく問題ないと思います。問題ないどころか、私は個人的に日本人とタイ人の仲むつまじきカップルを何組も知っていますから、日本で「恋人がいなくて・・」という中高年にタイ行きをすすめることすらあります。

 しかし、北タイで、タイ人やまともに生活している日本人から聞くのは、「カネでセックスを買う日本人のロングステイヤーに辟易している」というものです。例をあげましょう。

 北タイのある地域でエイズ患者のケアをおこなっている日本人の元には定期的にロングステイの日本人男性がやってくるそうです。彼らは、エイズという病やボランティア活動に興味があるわけではありません。「この地に長いことすんでいるなら現地女性と仲良くなる方法を知っているでしょ。若くて美人のタイ人を紹介してください」というものだそうです。もちろん彼らが真剣にパートナーを探しているならば問題はないでしょう。

 けれども、えてしてこうやって「女性を紹介してほしい」と訪ねてくる日本人男性というのは、傲慢で、カネさえ払えば何とでもなると思っているケースが多いそうです。タイ語もまったくできずに、そのことに対して質問すると「これからもタイ語を勉強するつもりはない」と答えるそうなのです。これでは、パートナーを探しているのではなく、「女性を買いに来ている」というべきでしょう。

 もっとひどい例もあります。ロングステイをしている日本人男性のなかには「買春」を繰り返している者もいるというのです。カネを払って買春するのに何か問題があるのか?、という意見もあるかもしれませんが、このようなことをする日本人が増えれば、日本人の好感度が下がるのは間違いありません。いえ、もうすでに日本人が好意的にみられていた時代は過去のものなのかもしれません。

 私は2012年8月にチェンマイに渡航し、複数のエイズ関係者と話をしましたが、日本人の好感度が以前に比べて随分と落ちている、という意見がありました。「買春」目的の日本人が増え、そのせいで、まともな理由で北タイにロングステイする人たちも住みにくくなっているというのです。

 買春を繰り返した結果、HIVに感染した日本人もいるそうです。しかも、その日本人は医療費が払えず治療を受けず、かといって日本に帰る気もないそうなのです。買春でHIVに感染しエイズを発症する、ここまでは他人に迷惑をかけていないかもしれませんが、エイズで身体が衰退してくれば他人のケアがどうしても必要になってきます。

 困っている人が身近にいた場合、タイ人は必ず助けてくれます。身の回りのことをしてくれて食事も分けてくれるのが普通のタイ人です。タイをよく知る人ならば、タイ人が困っている人を放っておかないことを示す例をいくつも知っているでしょう。

 しかしながら、カネに物をいわせ買春を繰り返した結果、HIVに感染した日本人に同情するタイ人がどれだけいるかは疑問です。また、このようなかたちでHIVに感染した日本人は、同胞の日本人からも相手にされないでしょう。

 このような悲劇を避けるためには、HIVを含む性感染症に対する正しい知識を持つということ、恋愛は問題ないがカネにものをいわせた「買春」が与える影響(日本人の評判を落とすのは必至!)をよく考えること、恋愛をするしないに関わらず異国の地に行くからには現地の言葉を勉強すること、などをよく考える必要があります。

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