HIV/AIDS関連情報

2006年10月23日(月) 中国のNGOが強制解散させられた理由とは?

 中国北西部の新疆ウイグル(Xinjiang Uygur)自治区にあるエイズ関連のNGOが、当局により10月18日に強制的に解散させられ、これが物議を醸しています。

 「Slow Lotus」という名のこのNGOは、新疆ウイグル自治区の、主に大学生からなる200人以上の組織で、エイズ教育を中心に活動していたそうです。

 ロイター通信がこのNGOのスタッフを電話取材し、それが10月19日の同通信に掲載されています。

 電話インタビューに答えた21歳の大学生は次のように述べています。

 「我々の組織は、正式に登録されていないという理由で強制的に解散させられました。オフィス内の机と活動資料も封印されてしまいました。そして、この解散措置に従わなければ拘留するぞ、と脅されたのです」

 中国は1949年以来、共産党の一党独裁体制が続いており、直接支配できない組織に対しては警戒姿勢を見せていますが、最近は少なくともエイズ関連のNGOの活動には柔軟な対応をしていました。ところが、このNGOに対しては強制的な解散命令を発動したのです。

 新疆当局は、この件に対してはコメントを表明していませんが、このNGOを支持するある弁護士は次のようにコメントしています。

 「このNGOは、最近地域内の中学でB型肝炎ウイルスのキャリア19人が強制退学させられた事件を報じた数日後に解散させられた。当局はこのNGOが登録されていないということを解散措置の理由にしているが、真の理由はこの事件を報じたことに違いない」

 B型肝炎ウイルスのキャリアが強制退学などというのは、非科学的な理由による許しがたい措置です。(詳しくは、2006年10月14日「中国、B型肝炎ウイルスのキャリアが強制退学に」

 真実を報じた組織が強制解散・・・。いかにも中国らしい事件と言えるでしょう。

 ところで、新疆ウイグル自治区は、現在中国内で最もエイズ問題が深刻化している地域のひとつです。10月19日のCHINA DAILYにその様子が報告されていますのでここにご紹介しておきたいと思います。

 同地区では、今年の6月末の時点で16,035人のHIV陽性者が確認されており、昨年9月末の時点では11,303人でしたから、9ヶ月間で4,732人が増加していることになります。また、今年の6月までで105人の死亡者を含む563人のエイズ発症者が報告されています。2001年の初めから昨年6月まででは、54人の死亡者を含む213人のエイズ発症者の報告でしたから、急激にHIV/AIDSが蔓延していることになります。

 この地域の特徴は、売春婦などのハイリスクグループから一般の人々へ感染しているということです。このなかには妊婦も含まれ、ほとんどは夫からの感染で、夫たちのなかには薬物の静脈注射によってHIVに感染した者も少なくないそうです。

 ある調査によると、地域内のYili地区では妊婦の1%もがHIV陽性だそうです。(他の地区では0.3%程度)

 中国全体では昨年一年間に報告されたHIV陽性者は144,089人、内32,286人はすでにエイズを発症しており、そのうち8,404人は死亡したそうです。

(谷口 恭)