HIV/AIDS関連情報

2006年11月10日(金) エイズ対策、行政が困惑?

 11月4日の朝日新聞夕刊が、「エイズ対策 任されて困惑」というタイトルで、エイズ対策の自治体の遅れを指摘しています。

 朝日新聞によりますと、厚生労働省は今年の4月、自治体の役割を明確にする予防指針を新たに打ち出しましたが、自治体は「急に地方任せにされても・・・」と困惑しているそうです。

 以前このコーナーでお伝えしましたように(「厚生労働省がエイズ急増自治体を支援」2006年6月26日)、厚生省はエイズの状況悪化が著しい16の自治体と連絡を取り、対策強化を図ることを求めています。

 ところが16の自治体のほとんどで予算が大幅に減らされており(参考「都市部自治体は財政難のためエイズ対策予算を大幅に削減」2006年9月26日)、国の予算も減少しています。

 朝日新聞に掲載された予算削減に関する各自治体のコメントをみてみると、「予防や啓発事業は効果が見えにくく予算要望しづらい(愛知県)」、「財政が厳しく、国の補助があっても負担は大きい(大阪府)」、「知恵を絞るのも限界(千葉県)」、などとなっています。

 8月の時点で対策計画を作っていたのは16自治体のうち、わずか4つだそうです。5つの自治体は着手すらしていないといいます。エイズの中核拠点病院も8割の自治体で、設置時期すら決めていなかったそうです。

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 HIV/AIDSの蔓延を阻止するのに行政の役割は小さくはないでしょうが、行政だけに任せるべきではありません。この記事を報道した朝日新聞をはじめとするマスコミも、HIV/AIDSに関する正しい知識を社会に対し積極的に報道していれば、現在のようにHIV感染が増え続けたり、あるいは感染者がいわれのない差別に苦しめられたりといった事態を防ぐことがある程度はできたのではないかと私は考えています。

 マスコミだけではなくNPOにも責任はあります。GINAはようやく今月中旬に登記が完了し、NPO法人として承認される見込みです。これまで支援活動はタイのみでおこなっていましたが、今後少しずつ日本でも予防啓発事業を開始したいと考えています。

(谷口 恭)