HIV/AIDS関連情報

2006年10月25日(水) アフリカではエイズ孤児が1,800万人に

 タイでは、HIVの新規感染は減少しているがエイズ孤児(*1)はむしろ増え続けている、ということをレポートしましたが(「増え続ける北タイのエイズ孤児」2006年7月22日)、アフリカではタイよりもさらにエイズ孤児の増加が深刻化しています。

 「アフリカでは効果的な対策がとられなければ2010年までにエイズ孤児が1,800万人にもなる」、国連はそのような試算をしています。10月20日のロイター通信がアフリカの現状を報道していますのでお伝えいたします。

 「現在政府やその他組織がおこなっている対策では、数百万人のHIVに感染した子供たちのことが軽視されている。エイズ孤児の数は少なくとも今後10年間は上昇し続け、教育や保健の改善、地域の発展は当分の間期待できない」、と国連の関係者は述べています。

 たとえ、成人のHIV陽性者が今の時点でピークであると仮定したとしても、エイズ孤児は増え続けることになります。なぜなら、HIVに感染した人が亡くなるのは数年先のことであり、亡くなればその子供たちはエイズ孤児となるからです。孤児たちは社会から疎外され、健康上の問題はより深刻化し、学校崩壊につながることも予想されます。さらに正しい知識が普及しなければ、エイズで両親を失った子供たちは差別を受け、支援やケアを必要としていても孤立してしまうことも考えられます。

 西及び中央アフリカに住む3億5千万人の人口の半分以上が18歳以下であるというデータがあります。そして、彼らの性行動は早い年齢から始まっていることが指摘されています。

 しかしこのような青少年の性の乱れは、この地域の保守的な文化では口にすることができません。そしてこの保守的な文化が、多くの若者が、HIVがどのように感染するかについて誤解をしている原因でもあります。

 抗HIV薬が充分に普及していないということもこの地域の問題のひとつです。特に妊婦は母子感染を予防するために抗HIV薬が必要となりますが、この地域では2005年の時点で68万人の14歳以下の子供たちがエイズを発症してしまっています。

 西及び中央アフリカでは、HIV陽性の妊婦と子供たちで抗HIV薬を服用しているのはわずか1%しかないことをユニセフは指摘しています。2010年までの80%にするという目標には程遠い現実です。

 しかし、改善がまったく期待できないわけではありません。

 ユニセフによると、抗HIV薬の価格を下げるよう政府に働きかけている声は大きくなっていますし、子供と妊婦の支援に多くの予算をとるべきだ、という政府に対する圧力も小さくないそうです。

 象牙海岸では、HIV検査とカウンセリングが受けられるVCTセンター(*2)が設立され、両親がHIV陽性の子供たちの授業料はそのセンターが負担しているそうです。また、中央アフリカ共和国では2千人のエイズ孤児たちがカウンセリングも含めた保健サービスを受けていると言われています。

 最後に、セネガルのチャリティ団体のある関係者の言葉をご紹介しておきたいと思います。

 「エイズ対策が始まったとき、成人の感染とエイズが経済に与える影響に焦点があてられていた。一方で、子供たちのことは忘れられていたのだ」

注1 「エイズ孤児」とは通常両親がエイズで死亡した子供のことを言います。子供自身がHIV陽性であるか陰性であるかは問いません。

注2 VCTとは、Voluntary Counseling and Testingの略語で、直訳すれば、「自発的なカウンセリングと検査」ということになります。詳しい説明は、当ウェブサイト「HIV陽性者のひとつの生きがい-ピア・エデュケーション-」をご参照ください。

(谷口 恭)