HIV/AIDS関連情報

2007年7月7日(土) タイ、HIV新規感染の4割が主婦

 夫からHIVを感染させられるケースが増加していることは深刻な問題である・・・

 タイ国内で開催された第11回エイズ学会で、モンコル保健大臣がこのような発言をおこないました。(報道は7月5日のバンコクポスト)

 タイでは、過去2年間で、若い夫婦の間で夫から妻にHIVが感染するケースが増加しています。実際、HIVに新たに感染した人の約4割が主婦です。夫たちが、他の女性と気軽に性関係を持つことが原因であるとみられています。

 他のハイリスクグループをみてみると、MSM(男性同性愛者)が28%、売春婦が10%ですから、タイでは主婦が最たるハイリスクグループということになります。

 この事態に対し、モンコル保健大臣は、ファミリー・コンドーム・キャンペーンを展開することを検討しています。これは夫婦間でもコンドームの使用を促すもので、同時に、浮気をしないよう(一夫一妻制を守るよう)奨励していくようです。

 「コンドームの使用は互いに相手を尊重する行為であり、夫婦間のHIV感染を予防することができる」、モンコル保健大臣はこのようにコメントしています。

 また、エイズ国民委員会は、ホテルの客室にコンドームの常備を義務付ける計画を立てています。これは、Mr.コンドームとして有名なミーチャイ・ウィラワタイヤ(Mechai Veravaidya)氏の意向によるものだそうです。ミーチャイ氏は、90年代初頭にコンドームの使用を訴えた「100%コンドーム・キャンペーン」を実施したことで有名です。

 最近のタイのエイズ関連の話題は、強制実施権(compulsory licenses)の発動(特許に従わず安価な抗HIV薬を製造・販売すること)についてのものが多いのですが、これに対して、ミーチャイ氏は次のようにコメントしています。

 「強制実施権の発動はエイズの根本的な解決方法ではない。強制実施権の発動は国のHIV予防対策が上手くいかなかったことを反映していると考えるべきである」

 タイでは、18歳から19歳の約6千人を対象とした最近の調査で、「コンドームを用いない」と答えた割合が67%にもなるとの結果が出ています。

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 夫が他の女性と性関係をもつことが原因でHIVに感染し、さらに自身の妻に感染させるということはたしかに大きな問題です。今後は日本でも同じことがおこると考えるべきでしょう。

 しかしながら、夫婦間の間でのコンドームの使用というのは限界があるのではないでしょうか。

 モンコル保健大臣は「コンドームの使用は相手を尊重する行為」と言いますが、本当に相手を尊重する行為は、絶対的な忠誠を誓うことであるはずです。これは現実的には理想論であったとしても、忘れてはならないことだと私は思います。

(谷口 恭)

参考:GINAニュース2006年9月11日 タイの主婦へのHIV対策