HIV/AIDS関連情報

2006年11月2日(木) 中国のメタドン療法と注射針無償供与

 中国では性感染とならんで麻薬の静脈注射によるHIV感染が問題となっています。中国のメタドン療法については最近このコーナーでお伝えしましたが(「中国でメタドン療法のクリニックが急増」2006年10月21日)、現在の中国は薬物中毒者に対する注射針の無償供与もおこなっています。その状況を10月23日のCHINA DAILYが伝えていますのでご紹介いたします。

 2004年に雲南省の箇旧(こきゅう、Gejiu)で中国初のメタドン療法クリニックが誕生し、現在では200以上になっています。7月1日までにメタドン療法を受けた麻薬中毒者は15,678人にのぼります。

 現在も10,754人の中毒者が麻薬を断ち切るためにメタドンを内服しています。

 中国の公式データでは、麻薬中毒者(*1)は100万人以上となっています。しかしながら、この数は正確な人数を反映しておらず、実際には1千万人にものぼるとみている専門家もいます。

 麻薬中毒者のHIV感染は中国全土にみられますが、特に多いのが雲南省(Yunnan Province)と広西自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)です。

 保健省副大臣のWang Longde氏は、現在中国で問題となっているのは薬物中毒者や売春婦から一般の人々への感染が広がっていることだと述べています。氏は、売春婦が薬物中毒者であることも多く、こうなればHIVに感染するリスクが跳ね上がることを指摘しています。

 中国ではメタドン療法のクリニックの他に、300もの注射針の無償供与センターを今年中に設立する計画を立てています。保健省によりますと、2005年末の時点では91の注射針無償供与センターがすでに設立されているそうです。

 メタドン療法を受けている者は定期的に(麻薬を摂取していないことを確認するための)尿検査を受けなければなりません。このデータは警察が収集し中国全土でデータベース化されています。

 「エイズ・性感染症管理予防センター(National Centre for AIDS/STD Control and Prevention)」の代表者Wu Zunyou氏によりますと、1年間メタドン療法を続けて再び麻薬に手を出すのはわずか8.8%だそうです。しかしながら、1年以内でやめてしまえばおよそ70%の中毒者は再び麻薬に手を染めるそうです。

*1 文脈から「麻薬中毒者」だと思われますが、原文は「drug addict」なので覚醒剤なども含めた違法薬物全般の「薬物中毒者」の人数かもしれません。

(谷口 恭)