HIV/AIDS関連情報

2006年11月16日(木) イギリス、なぜ若者はコンドームを避けるのか

 コンドームが性感染症(STI)の予防につながるということは、おそらく誰もが知っていることだと思います。それでは、実際コンドームが効果的に利用されているのかどうかについて、ロイター発11月3日付の記事は伝えています。昨日のニュース(「イギリス、世界規模のセックス行動調査 」11月15日)に引続き、メディカル・ジャーナル、ランセット誌(The Lancet)で発表されています。

 アメリカでは、性教育の一環として禁欲を勧めていますが、性感染症への感染率を下げる結果にはつながっていません。しかし、コンドームが手に入らないとか、気にしないとかいったことだけではなく、社会的や文化的な要因によっても若者はコンドームをつけたがらないのだという調査結果が出ています。

 ロンドン大学の公衆衛生・熱帯薬科(London School of Hygiene and Tropical Medicine)では1990年から2004年まで250以上の若者の性行動の調査を行い、異なる国々において若者の性行動に影響を与えている要因に驚くべき類似性があることが判明しました。

 「この調査は若者の性行動を理解でき、なぜ安全でないセックスをするのかという要因を集約している」と、Cicely Marston、Eleanor King博士らがランセット誌(The Lancet)で発表しています。

 同調査は、若者はコンドームの必要性をパートナーから病気をうつされる可能性よりも、相手の容姿やどれくらい顔見知りであるかによって判断するということがわかりました。

 例えば25歳以下の性交渉のある若者は、コンドームを持っていると信用がおけないと見られたり、男性はともかくとして女性は性経験が豊富だと思われたりするからつけるのがいやなのだと言う意見があります。

 イギリス、オーストラリア、メキシコ、南アメリカを含む国々からのデータによると、男性は性的に活力的であることが求められ、女性は貞操を守ることが求められています。世界的に見ても、男性と比べて女性の性的な自由は限られており、それを逸脱した女性に対するペナルティーは、言葉による批判から"名誉殺害"(イスラム社会の一部で、婚前交渉など適切でない性行動に出た女性は家族の名誉を傷つけた者として殺されたりすることもあるそうです)までさまざまですが、女性側からコンドームの着用を求めるということは抵抗があるようです。

 「この調査結果によってなぜ多くのHIVプログラムが効率的ではなかったのかがよくわかった」、と調査担当者が言っています。「社会的な要因を考慮することなく、単に情報やコンドームを与えるだけのプログラムはエイズ問題のほんの一部をかじっているだけ」なのだということです。

(大和さちよ・浅居雅彦)