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2006年11月15日(水) イギリス、世界規模のセックス行動調査

 CNN.comが11月2日に伝えた記事によりますと、イギリスのメディカル・ジャーナル、ランセット誌(The Lancet)で世界規模のセックスに関する行動調査の結果が発表されました。ロンドン大学の公衆衛生・熱帯薬科のKate Wellings教授らの、世界59カ国のデータを分析した結果によるものです。

 国々の多様性がセクシャルヘルスの啓発を難しくしていることも判明しましたが、他にも興味深い結果がでています。専門家は、調査から得たデータは性行為のまちがった情報を正すだけではなく、セクシャルヘルスを改善するのにも役立つと述べています。

 若者はそれほど早い時期に性行為を行っておらず、結婚したカップルがもっとも頻繁にセックスをしており、乱交と性感染症には決定的な関連はないということが分かりました。

 Wellings教授らは、性感染症の罹患率がもっとも高いアフリカ諸国で、乱交的な性行為が見受けられると思っていましたが、そうではありませんでした。多数のセックスパートナーを持っているのはむしろ性感染率の低い工業国でした。エイズがアフリカでひろまっているのは乱交行為があるからだという間違った考えがあったことが分かりました。

 Wellings教授は、調査結果によって性感染において乱交行為はあまり問題ではなく、貧困や教育的な要素のほうが重要な原因となることが分かったと述べています。

 アフリカ諸国の独身男女は、約3分の2がセックスの経験があります。これに対して工業国の独身男女は4分の3以上がセックスの経験があるとのことです。

 また、性行為はそれほど早い年齢で行われているのではなく、多数は10代の後半で行われるのだということがわかりました。そして、既婚者がもっとも頻繁にセックスをしており、発展途上国でさえも結婚する年齢が年々遅れていると述べています。

 とはいえ、これは国によって違いがあり、たとえばイギリスでは初体験の平均年齢が男女でそれぞれ16.5歳と17.5歳、インドネシアでは男女でそれぞれ24.5歳と18.5歳という結果が出ています。

 性感染症については、アフリカとアジアでは、場合によっては、既婚女性が独身女性よりも罹患するリスクが高いという結果がでました。これは、既婚女性は売春婦を買う不誠実な夫から感染する可能性が高いことを示唆しています。

 セックスパートナーの数に関しては、裕福な国の方が貧乏な国より男女差がないこともわかりました。例えば、オーストラリア、イギリス、フランスとアメリカの男女はほとんど同じ数のセックスパートナーを持っていますが、カメルーン、ハイチ、ケニアでは男性の方がたくさんのセックスパートナーを持っているのに対して、女性はたった一人でした。

 「これらの国々では、女性は社会的、経済的に男性に従属しているケースが多く、性行為でコンドームの使用を、相手の男性に交渉する力がなく、その男性が、他の女性たちと性行為をしていることを知らない」ということです。

 Wellings教授は最後に、セクシャルヘルスの啓発について多くの国々で、文化、経済、宗教、社会的にも、性行為に関連する規律や習慣が違っているため、たった一つのアプローチでは、なかなか対応できないという課題が浮かび上がったと述べています。

(大和さちよ・浅居雅彦)