HIV/AIDS関連情報

2006年10月19日(木) ミャンマーの新しい基金は成功するか

 ミャンマーで3つの病気を克服するための国連主導の基金が新たに設立されることになり、10月13日に国連が発表しました。これを同日のロイター通信が報道しています。

 3つの病気とは、HIV/AIDS、結核、マラリアで、基金の名称は「3つの疾病対策基金(3-Diseases Fund)」です。総額は1億ドル(約119億円)で、出資した主な国はオーストラリア、イギリス、他のEU諸国です。5年間の計画で、運営は国連が監督をおこない、他に国際NGOやチャリティ、地域の保健関連機関も協力するかたちになるそうです。

 この新しい基金に期待したいところですが、疑問視する声も少なくありません。その理由はミャンマーの軍事政権にあります。実は、ミャンマーでは、昨年まで「エイズ・結核・マラリア世界基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis, Malaria)」が同じような活動をおこなっていたのですが、軍事政権により同基金の活動に様々な制約がかけられたため成功したとは言い難い結果となってしまいました。

 ミャンマーでは1962年に軍事政権が誕生して以来、タイなど隣国と比べると、西洋諸国からの支援がほとんどありません。その最大の理由が、軍事政権が人権を軽視し、政治的反対勢力を抑圧してきたからです。

 しかし、軍事政権の良し悪しは別にして、これら3つの病に苦しんでいる人はかなりの数に上ります。

 マラリアは、同国の5歳以下の子供たちの最大の死因で、毎年3000人の命を奪っています。そして、薬剤耐性のマラリアは年々増えていると言われています。

 結核は、1年間に1万2千人以上の命を奪っていますが、それ以上に懸念されているのは薬剤耐性結核が急増しているということです。これは誤った結核治療がもたらした結果であるのです。(参考:2006年9月11日「「治療不能」の結核が急増」

 HIV/AIDSについては、ここ数年間でかなり予防啓発に力が入れられてきていると言われていますが、それでも現在36万人の人がHIV陽性です。(ミャンマーの人口は約5千万人、成人のHIV陽性率は1.3%、1人当たりのGDPは不明です)

 ミャンマーでは、いまだに国内でアウンサンスーチー氏の名前を出すことすらできませんし、北部のカレン族など少数民族に対する抑圧は相当ひどいものです。しかし、これら3つの病に苦しんでいる人は少なくなく、政治や軍事とは関係なく支援していくことが大切でしょう。医療の国際協力でミャンマー政権が軟化することに期待したいと思います。

(谷口 恭)