GINAと共に

第236回(2026年2月) 性欲で身を滅ぼす男と女

 最近、アンドルー元英国王子の不祥事が世界のメディアを連日にぎわせています。少女買春や性虐待で有罪判決を受け獄中死(正確には「拘留されていた矯正施設」での死亡。自殺とされているが他殺を疑う声もある)したジェフリー・エプスタインとのつながりが指摘されています。英国の国費でエプスタインに会いに行くための費用をまかなっていたのだとすればそれは問題でしょうが、おそらく世間の関心が高いのは税金の不正使用ではなく、性スキャンダルの方でしょう。

 アンドルー元王子自身は現在も否定しているようですが、エプスタインが斡旋した未成年少女に対する性虐待疑惑が元王子の地位や名誉や尊厳を奈落の底に落としました。米国のVirginia GiuffreさんはBBCからの取材を受け、元王子から3回にわたり性行為を強要されたことを明かしました。さらに、エプスタインの関係者に性奴隷として扱われ死ぬかもしれない(die a sex slave)とコメントしました。アンドルー元王子は2022年にGiuffreさんに和解金を支払っています。

 アンドルー元王子がいくら否定しようが、Giuffreさんと共に映っている写真が世界中で拡散されているわけですから、元王子の言葉を信用する人はほとんどいないでしょう。アンドルー元王子は英国王室の尊厳に大きな傷をつけましたが、それ以上に自身のプライドや矜持はズタズタに引き裂かれ、もはや尊厳を取り戻すことは不可能です。

 エプスタインに関与し名誉をなくした有名人は他にもいます。少し例を挙げると、ビル・クリントン、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ、ケビン・スペイシー、クリス・タッカー、ウッディ・アレン、ハーヴェイ・ワインスタインなどが該当します。ウッディ・アレンは過去に養女への性的虐待でも告発されています。ハーヴェイ・ワインスタインは性暴力・性的虐待及びその隠蔽工作が発覚して逮捕され現在も収監されています。

 ビル・ゲイツについて少し詳しくみてみましょう。BBCによると、エプスタインが2013年7月に作成した電子メールで、ゲイツ氏が性感染症に感染し当時の妻メリンダ氏を含む関係者にそれを隠そうとしていたことが触れられています。ゲイツ氏の広報担当者は以前、この主張を「全く馬鹿げており、完全に虚偽だ」と述べていますが、メリンダ氏は「汚らわしい」と激怒し、財団からの離脱を決意するほどの事態となっています。尚、現在ゲイツ氏とメリンダ氏はすでに離婚していますが、ゲイツ氏は2019年にマイクロソフト社員と不倫関係にあったことを認めています。

 ビル・ゲイツはマイクロソフトを創業した人物として知られていますが、2000年にメリンダ氏と民間慈善財団「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を設立したことでも有名です。世界最大の民間慈善団体といわれ、数々の慈善事業を手掛けています。しかしながら、エプスタインとの交流が明らかにされ、本人は否定しているものの性感染症に罹患したことがエプスタインのメールで記されており、その真偽は別にしてメリンダしが激怒していることが世界に知られました。こうなるといくら立派な行動をしていようが、信頼をなくし尊厳は地に堕ちました。

 アンドルー元王子やビル・ゲイツとは注目度がまるで異なりますが、日本でも東大医学部の教授が業者のカネで性フーゾクに繰り返し通っていたことで世間から呆れられています。

 日本の大手メディア紙で「性風俗店での接待」という言葉が使われ、これだけでも恥ずかしいことこの上ない話だと思いますが、週刊誌の報道ではもっと深く切り込まれています。たとえば、この報道サイトでは、次のような言葉が並べられています。

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佐藤伸一教授は、吉崎歩特任准教授のラインによると、いつも「もも」というソープ嬢を指名しており、吉崎歩特任准教授は、いつも代わるがわる多種多様のソープ嬢とフリーで遊興している。

入店費用は、2時間で8万円の吉原有数の超高級店だ。

そして、待合室で、二人そろって、いつも常に着用しているマスクを外して、にんまり顔で、ソープ嬢との対面を待っている。

そして、15時過ぎに、佐藤伸一教授が店から、スッキリした表情で出てきた。

60才の還暦を過ぎた御仁が、4時間も超高級ソープランドで何をしているのであろうか?
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 まだまだ続くのですがこのあたりでやめておきましょう。「待合室でのにんまり顔」をネットに載せられ、さらにお相手の「もも」の写真も同じページに掲載されています。さらに、この記事によると、佐藤伸一教授は「殺すぞ」と佐藤教授らにお金を出したスポンサーの男性に発言しているようです。

 アンドルー元王子やビル・ゲイツと異なり、佐藤教授は性フーゾク通いを否定していません。もっとも、「待合室のにんまり顔」をネット上で晒されているわけですから否定しようがないわけですが。否定しないだけでなく、痴態が晒されてからその後一年近くも東大教授の地位にとどまり続けたことも理解に苦しみます。これだけ恥ずかしい姿を晒されて、よく他の医師や患者さんに顔を合わせられるなと思いますが、そのあたりの感覚が世間からかけ離れているようです。

 エプスタインにはいかがわしい噂が古くからあったことはよく知られています。にもかかわらず、アンドルー元王子やビル・ゲイツや他のエプスタインと交流のあった有名人はそのあたりをどのように考えていたのでしょう。たとえ、性暴力や買春に関与しなかったとしても、不名誉な噂を流されるとは思わなかったのでしょうか。「君子危うきに近寄らず」「李下に冠を整えず」などの諺は西洋にはないのでしょうか。もしも、実際に性暴力などに関与しているならば、なぜそのようなリスクある行為をとったのでしょう。バレれば生き恥を晒すことになる、とは考えなかったのでしょうか。

 佐藤教授の場合も、もしも性欲が抑えられなかったのだとすれば、わざわざ証拠の残るような業者の接待を受けたりせずに、自分の収入でフーゾク通いしようとは思わなかったのでしょうか。

 GINAを設立して約20年が経過しました。この20年間で実に様々な人たちから「性で後悔している」という話を聞いてきました。「HIVに感染してしまった」が最たる例ですが、「大切な人を失ってしまった」というエピソードも数多く聞いてきました。男性だけではありません。

 30代後半のある女性が性フーゾク店で働きだしたきっかけは「夫とセックスレスになったから」でしたが、そのうちに自身が性依存症であることに気付きセックスワークがやめられなくなりました。夫とはセックスレスを除けばいい関係を維持しており、離婚するつもりはないと言っていましたが、夫の方から離婚を言い渡されました。妻の行動の不審な点に気付いた夫が探偵を雇い、妻が性フーゾク店勤務のみならず、複数の男性とホテルで過ごしていたことが発覚したのです。

 この女性だけでなく、性フーゾク店勤務をパートナーや家族に知られてしまった、という話はときどき聞きます。浮気や不倫がバレたと言う話は履いて捨てるほどあり、なかには離婚に至るケースもあります。

 では、なぜ理性あり地位高き人々が後先考えずにいとも簡単にリスクをとるのか。それは「性欲は依存症だから」です。性欲は人間の自然な生理的欲求のひとつで食欲や睡眠欲と同じものと言われることがありますが、私にはそうは思えません。性欲は生理的欲求ではなく、薬物やギャンブルと同じカテゴリーに入る依存症の1つだということが過去20年のGINAの活動を通して分かるようになりました。いったん性欲のスイッチが入ると、理性を司る脳がハイジャックされ、そのパワーに抗うことができなくなるのです。そういう意味で、性依存症を患った人たちは常に人生を崩壊させるリスクにさらされていると言えるでしょう。