HIV/AIDS関連情報

2008年2月29日(金) タイの薬物対策が加速する見込み

 2月24日のBangkok Postによりますと、サマック首相は、薬物対策を徹底して実施することを繰り返し主張し、タイ政府は密売人を厳しく検挙する方針をとることを発表しました。

 密売人を検挙する方法のひとつとして、「裁判外の死刑(extrajudicial killing)」も辞さないとしています。これは、つまるところ、密売人を見つければ逮捕状をとらなくてもその場で死刑にすることができるという意味です。

 Bangkok Postはサマック首相の次のコメントを報道しています。

「政府の薬物対策を徹底するためには、裁判外の死刑が不可欠であり、この死刑に対しては警察が責任をとり合法であることを世論に理解してもらいたい」

 サマック首相はさらに続けます。

「裁判外の死刑で、事実関係を争うために警官が裁判所に出廷しなければならなかったのはわずか59件しかない」

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 我々日本人の感覚からすると少し理解に苦しみます。

 実際、タイは前政権(タクシン政権)の薬物対策で多くの冤罪を生み出していると言われており、冤罪者の人数は2,500人から5,000人になるとの指摘もあります。

 なかには宝くじで高額を手にした若い夫婦が、薬物売買で不当な金を手に入れたと警察に誤解されその場で射殺されたという事件も報道されています。

 現在、タイではありとあらゆる違法薬物が大量に流通しており、徹底した対策を取らなければならないのは事実ですが、「裁判外の死刑(extrajudicial killing)」と言われると、違和感を覚えます。

(谷口恭)