HIV/AIDS関連情報

2008年10月6日(月) HIVの起源は1908年?

 アフリカで最初のHIVが動物から人間に感染したのは1908年ではないか・・・

 米国アリゾナ大学などの国際研究チームがウイルスの遺伝子解析でこのような結果を導き出し、10月2日付けの科学誌「Nature」に発表しました。(報道は10月2日の共同通信)

 これまでは、HIVの起源は1930年ごろとされていましたからそれをくつがえす研究となります。

 世界初のエイズ患者が米国で報告されたのが1981年ですから、1908年説が正しいとすると、70年以上も人類に潜伏していたことになります。

 研究チームによりますと、最も古い感染例として知られる、ザイール(現在のコンゴ)の男性から1959年に採取血液から検出されたHIVと、同じくザイールの女性から1960年に採取したリンパ節から新たに検出されたHIVの遺伝子の配列を比較すると、予想外に変異が大きいことが判りました。

 他の100種類以上のHIVの遺伝子とあわせて、時間とともに変異した経過を系統樹にしたところ、前後20年程度の誤差はあるものの、1908年ごろに共通のウイルスから分岐したことが明らかとなりました。

 研究チームは「チンパンジーから最初に人に感染して20世紀初頭はあまり広がらなかったが、ザイール(コンゴ)周辺の都市化とともに一気に拡大したのだろう」と指摘しています。

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 上に紹介した研究チームのコメント以外にも、「遺伝子の変異によりエイズを発症する期間が短くなったこと」が考えられます。アフリカのような寿命の短い国では、エイズを発症するまでの期間が長ければ、エイズを発症するまでに他の病気で死亡することが考えられます。

 もうひとつは、「遺伝子の変異により感染力が強くなったこと」が考えられると思います。HIVは1本鎖のRNA型ウイルスで、同じウイルスでも2本鎖のDNA型のウイルスと比べると遺伝子の複製が"不安定"で容易に変異を起こします。

 ということは、今後10~20年くらいの間に、今よりももっと感染力の強いウイルスに変異することも予想されるというわけです。

(谷口恭)